Il eclate
ゴクリ
緊張感を飲み込んだ音が耳に嫌に響いて、ナルトは逆に緊迫感が増したような気がした。
張り詰めた皮膚から体温が流れ出し、感覚が消えていくような
緊張からか頭と目の前がじわりと痺れ歪むような
それでも
穏やかで温かな二人の空気を
サクラとでしか得ることのできないかけがえのないものを
なくしたく、ない
振り向くための勢いを、とナルトがギュッと目を瞑った時だった。
背中にドンとぶつかる衝撃。
驚いて開かれた視界には、白い手。
ナルトは、予想外の展開に声を出せぬまま、背中を覗き込むように小さく体を捻った。
* * *
サクラの耳にはドキドキしているはずの心臓の音さえ聞こえてこない。
緊張しすぎて体温も消えてしまったようなおかしな感覚。
それでも、思い切って飛び込んだ大きな背中に触れる場所からはじわじわと温かさが染み込んでくるようだった。
ナルトが小さく体を捻るのを感じた。
思わずナルトのシャツをギュッと握りしめると、大きな手に優しく覆われた。
温かな手が温度をなくした白い手を引きながら、ゆっくりと体の向きを変えて行く。
背中に押し当てていたはずの体は、ナルトに正面から抱き締められる形になってしまった。
上からナルトの視線を感じるけど、サクラには顔をあげるなんて無理だった。
望んだ事とはいえ、自分の唐突な行動を思うと恥ずかし過ぎた。
「サクラちゃん」
優しく呼ばれて、包みこまれるように抱きしめられる。
ナルトの腕の中は幸せで満ちている。
いつか、もうちょっとしたら
自然に触れられるようになるから
もっと素直に愛してるって伝えられるようになるから
サクラは想いを込めて幸せを抱き締め返した。
(2013.3.3)
[ 3/3 ][*prev] [next#]
* Novel *
* Angel's Ladder *