桜の木の下で 1/3



設定:メルディは中学生。
   ザンクロウは新人の鳶職人。
   黒猫は…


学校からの帰り道。
「にゃ〜にゃ〜」
と、どこからか猫の鳴き声がした。
メルディがふと見上げると、つぼみをつけはじめた桜の木の枝に黒い小さな猫が一匹。
「どうしたの?」
言葉など通じるはずはないと思いながら、メルディが独り言のように、猫に話しかけた。
「・・・おりられないにゃ」
「え!?」
言葉をしゃべった!?
「登ったら、おりられなくなったにゃ。おろして欲しいのにゃ」
「ほんとに?」
赤い瞳の黒い猫。
毛並みもふさふさしていて、すっごくかわいい。
誰かの飼い猫なのかな?
そんなことより、猫がしゃべるって・・・。
私、夢を見てるのかな。
ううん。
もしかして、私が猫がしゃべってるって思い込んでいるだけなのかな?
「ちがうにゃ」
メルディの心の中を見透かしたように、猫のほうから話しかけてきた。
「あ・・・」
メルディが猫のいる木の枝に手を伸ばすけれど、届かない。
登ろうにも、幹がまっすぐすぎて登りづらそうだ。
どうしよう。
「ごめんね・・・届かないの」「・・・にゃあ」
メルディの言葉に返事をするかのように、猫がひとつ鳴いた。


その光景を少し前から、釘付けになって見つめていた男が一人。
背中にかかる長いふわふわのくせっ毛は金髪。
瞳は猫と同じ赤い色。
職人ふうのバルーンパンツを履いて、首には青いタオルを巻いていた。
コンビニの袋を下げ、片手にはストローのささったカフェオレ。
飲むのも忘れて、見つめていたらしい。


なに?この子?
めっっっっっっちゃくちゃかわいいいいいい!!
超オレっち好みなんですけど!!





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