桜の木の下で 3/3



二人と一匹は近くにあったベンチに腰をおろした。
男がクッキーの袋を開けた。
クッキーは二枚入り。
「食べる?」
「えっ」
「はい」
メルディの返事も聞かず、男はクッキーをメルディに渡した。
それからもう一枚のクッキーを砕いて手のひらにのせると、黒猫に話しかけた。
「ほら、こっちがお前のだって」
「にゃ」
黒猫がぱくっとクッキーにかじりついた。

メルディがそれを見ながら、どうしたものか戸惑っている。
せっかくもらったものだから、食べたほうがいいのかな。
でも、ちょっとはずかしい。
「ここのクッキー、けっこううまいんだ」
「は、はい」
よく買うから知っていた。
「あ、食ったことある?」
「はい」
メルディはなぜか真っ赤になった。
赤くなった顔を見られたくなくて、メルディはぱくっとクッキーにかじりついた。

メルディがクッキーを食べたのを、嬉しそうに横目で見ていた男が自己紹介した。
「オレっち、ザンクロウっての」
「わ、私はメルディといいます・・・」
「メルディ?名前もかっわいいなぁ〜って、やベぇっ」
言ってしまってから、ザンクロウは赤くなった。
クッキーをもらって、満腹になった黒猫が鳴いた。
「ひと目惚れなのにゃ」
「なっ」
「似合ってるにゃ」
「おまっ」
「よかったにゃ」
黒猫はザンクロウの手に頭をこすりつけ、メルディの手に前足をそっとのせた。
「また、にゃ」
それから、鳴き声を一つ残して、さっさとどこかへ行ってしまった。


残された二人。
黒猫が残した言葉に、ドキドキさせられたまま。
話したいことはまだある。
あの猫は言葉が話せたのだろうか。
それとも、あの猫の言ったことがわかったのは、もしかしたら自分たちだけだったのだろうか。
もしかしたら。
このまま別れたくなかった。
出会えたことが嬉しかった。
ひと目で、何かを感じた。
同じお菓子が好きな人。


何から話せばいいのだろう。


「何歳?」
「じゅ、14歳です・・・」
「へぇ〜中学生かぁ」
「お兄さんはいくつなんですか?」
「オレっち、いくつに見える?」
「う〜ん」


出会いは桜の木の下。
早咲きの桜がひとひら、メルディの桃色の前髪にかかる。
埋もれてしまいそうだ。
「あ」
ためらいながら、ザンクロウが花びらをはらう。
笑った緑の瞳に、胸がいっぱいになる。



「ひと目惚れなのにゃ」
黒猫は正解。



このあと春が巡るたびに、二人はこのときのことを思い出し、話題にした。



ずっと。




ずっと・・・





END



あんさん、相互記念ありがとうございます!!
本当に無理を…無理を言ったのに、素敵なガジにゃを交えたザンメルをありがとうございます!!
鳶職ザンクロウもすぐに姿が目に浮かんでもんどりうっております。かっこいい、ザンクロウかっこいい!!!!ありがとうございます!!
無事桜の木の上から下りれたガジにゃは、無事ナツの元に帰れたのでしょうか。
「お前のせいにゃ!!」って言いながら顔面を引っ掻いていそうです。ナツドンマイ!!
今度はカップルになったザンメルの元に遊びに行ってほしいです!!

あんさんこれからもよろしくお願いします!!

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