2013バレンタインフリー 桃くらむ様



チリリン、と時間通りになった呼び鈴に、ルーシィは玄関へ向かった。
「いらっしゃい!上がって上がって!」
「お邪魔します」
そこに立っていたのはジュビアとガジル。
「わざわざごめんなさい、ルーシィ」
「気にしなくていいって!」
少し申し訳なさそうにしているジュビアに、ルーシィは笑って手を振る。

「…おい」
「え、何?」
仏頂面のガジルに渡された袋には、紅茶が入っていた。
「リリーが一番気に入ってるやつだけどな」
袋を受け取ったまま動かないルーシィに、ガジルが補足する。
「ジュビアは材料しか持ってきてないけど…これでよければルーシィの分もありますよ」
ジュビアも笑顔で持っていた袋をかかげる。
ルーシィは頭の中で状況を整理する。

「って、何泣き出してんだ!?」
「どうしたの!?」

ルーシィは自分でも驚いていた。
「ひ、久しぶりに、まともなお客さんが…!」
――玄関からきちんと来てくれるだけでこんなに嬉しいなんて…!
非常識な行動に振り回され、慣れてきていた自分に泣けてくる。
「はぁ?」
気味悪そうに後ずさるガジルにジュビアが言う。

「そういえば、ナツさんたちは窓から入ってきたりするんだって、ガジルくん」
「は?不法侵入じゃねぇか」
「今日はフリードさんに術式かけてもらってるから大丈夫よ、ルーシィ」
「そこまでするのか!?」

目の前で行われる常識的な会話に、ルーシィはさらに感動していた。



「…ガジルって本当に料理上手いのね」
「なんだよその目は…あ、おいジュビア、湯せんの温度気をつけろよ」
「はーい」

今日ルーシィの家に集まった目的は、バレンタインのチョコレート作り。
女子寮ではガジルが入れないし、家にチョコの匂いが染みつくのは鼻がいいガジルにはきついから、とジュビアがルーシィに頼んだのだった。
――ガジルが料理、というかチョコレート作り!?
ルーシィは内心かなり驚いたのだが、実際見ると全く違和感がない。

「普段から料理してるの?」
「…まぁな。飯は基本的にリリーと作ってる」
材料を無駄なく使うのはもちろん、段取りが頭に入っている動きだ。
「女としての私の立場がないわ…」
「おい、お前も早くしねぇと固まっちまうぞ」
「わ、わかってるわよー!」


それにしても。
「おい、味見」
「…うん、美味しい!」
「じゃあ仕上げやれ」
(ナチュラルに あーん とか…)
これが普通なんだろうか。
「!!」
「…少し甘すぎねぇか?」
ジュビアの口の端についていたチョコを指で取り、なめるガジルに、ルーシィはびっくりして声が出ない。
しかも、ジュビアは全く気にしていないようだ。
――絶対普通じゃないわよね!?


「…邪魔したな」
「今日はありがとう、ルーシィ」
「どういたしまして」
ラッピングまでし終えると、外はもう暗かった。
女子寮まで送ってく、という小さな声がルーシィにも聞こえて、二人だけの距離感が少し羨ましく思えた。




バレンタイン当日。
ガジルのチョコをもらうあいつに、少し嫉妬したのはガジルには内緒。


END


桃さん宅より素敵なバレンタイン小説を頂いてまいりました!!
仲良しな幽鬼コンビに悶えつつ、きっとルーシィもガジルから友チョコを貰えたと思っております!!
そしてナツに嫉妬される←
理想的すぎる幽鬼コンビでとても幸せです。ありがとうございました!!

飛鳥


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