2012誕生日プレゼント 桃くらむ様



あなたと一緒に過ごせる日々を ♀ナツガジ♀ナツ

「ガージールー!!」
いつものように騒がしいギルド。
この大声も慣れたものだ。
「朝からうるせぇよ火竜!あと抱きつくな!」
ガジルは必死で抱きついてくるナツを引き剥がそうとするのだが、さすが女とはいえ滅竜魔導士。
――相変わらず、すげぇ馬鹿力…!
しかし、いつも負けるわけにはいかない。
ガジルは力をこめてナツを引き剥がした。
「…ガジル?」
「あ……いや、その」
単純に力比べに勝ったような気になっていたガジルだったが、はっと我に返る。
ほんの一瞬、ナツが寂しそうな顔をしていた。
「…今日、ルーシィと仕事行ってくるな!」
「おい!」
引き止めようとしたガジルに構わず、走り去るナツ。
「………くそ」
一人取り残されたガジルは額に手を当てた。




「今日は二人で過ごす予定だー、とか言ってなかった?」
駅のホームのベンチに座り、列車を待ちながらルーシィが切り出した。
「…最近私といると、ガジル嫌そうだからさ」
「それ、勘違いよ」
うつむきながら言った言葉を即座に否定され、ナツはルーシィのほうを見た。
何か言おうとしたのかナツが口を開くと、
『まもなく、○番線より列車が発車いたします。ご乗車になるお客様はお急ぎください』
構内アナウンスに遮られた。
「――ほら、列車乗ったらどうせ酔っちゃうんだし、明後日にも帰って来られるかあやしいわよ。これ持って今回は帰りなさい」
「…これ……でも、ルーシィは」
手渡された包みを見ながらも、ナツはルーシィを一人残していくことにためらいがあるらしい。
「大丈夫だよ、ナツ。僕がついてるからね」
「あんたはまた勝手に……でもそうよ、ナツ。あたしは大丈夫だから行ってきなさい!」
二人にここまで背中を押されては、行かないわけにもいかない。
「……悪い。サンキュー、ルーシィ、ロキ!」
ナツは暗くなってきた道を走り出した。



「はぁ…」
数時間後、自宅に向かってとぼとぼと歩くナツの姿があった。
急いでギルドに戻ってみたものの、ちょうどミラが鍵をかけたところで、もう中には誰もいないと言う。
「ガっ…ガジル、知ら、ない?」
息をきらせながら尋ねるナツに対して、一拍後、ミラは笑顔で言った。
「…ごめんなさい、わからないわ」
「……そっか」
ありがとう、と言ってその場を去ろうとすると、ミラに引き止められた。
「ナツ、一旦家に帰りなさい」
「へ…?」
「そんな大荷物持って夜中に走り回って汗もかいて、そのままガジルに会っていいの?」
うっと言葉に詰まるナツ。
そういえば、特に何も考えず走り回っていた。
「まず自分の家に帰りなさい。…じゃあ、気をつけてね」
最後ににこりと微笑むとミラは鍵を持って歩き出した。
…"自分の"をやけに強調されたような?

というわけで、
「……我が家が見えてきたけども、」
――明かりがついてる…!
ハッピーはエクシード隊で仕事に行っているし、誰もいないはず。
もし泥棒だったらまた食費が、と少し焦りながら歩を早める。
けれど近づくにつれて、五感が感知したのは大好きなにおい。
また違う意味でどんどん歩調が早くなり、走り出していた。


「ガジルっ……!?」
自分の家に着き、ナツがリビングで見たもの。
それはテーブルの上に所狭しと並ぶ料理の数々と、ソファで眠るガジルだった。
ふと時計を見ればすでに日付は変わっていた。
ナツの目頭が熱くなる。
「ちゃんと覚えててくれてたんだな…」
荷物を放り投げ、眠るガジルに飛び乗った。
うぐっと変な声がしたが気にしない。
たくましい胸板にすりよっていると、急に視界が反転した。
要するにガジルがナツを押し倒している図である。
「えっ…ガジルがのってくれんの!?」
急な展開にも動じず、茶化すナツ。
きっと恥ずかしがってすぐ退くんだろうな、と思っていると、
「んー?今日ぐらいはな…」
首筋にすり寄られた。
さっきと逆だ。
冗談のつもりで聞いたのに、本気で返されるとこっちが恥ずかしい。
すると、ゆるゆるとガジルが顔を上げ、目が合った。
「……なんだこの状況!!」
寝ぼけてたのかよ!!とつっこみたい気持ちでいっぱいである。
開口一番叫んだガジルだったが、まじまじとナツの顔を見つめてきた。
「なっなんだよ」
「…珍しいな、お前の赤面は」
「…ガジルだって、真っ赤だけどな」
悔しくて言い返した言葉は聞こえたかどうかわからない。
くっくっと笑う様子からして聞こえたのだろう。
さらに上昇する体温をどうしようかと思っていると、そのまま抱きしめられた。耳元でささやかれる言葉。

「誕生日おめでとう、ナツ」

その言葉が嬉しくて。
今日を一緒に過ごせることもとても嬉しく思えたんだ。


END


「そういや、最近なんで私のこと避けるんだよ」
「……………胸」
「は?」
「…俺だって男だからな!そんなしょっちゅう抱きつかれてたら理性ってもんが「っガジルー!!」だから話聞けよ!!」



* * *

飛鳥様お誕生日おめでとうございます!!
♀ナツガジ♀ナツという、変わったカップリングを押し付けてしまって…。
愛だけは詰まってます!
ルーシィやミラは、自分たちも真っ先にナツの誕生日を祝いたいけれど、ガジルに譲ってくれたんです。
駄文ですが、私からもお祝いさせてください!


******


桃さん、ありがとうございます!!
♀ナツの衝撃わかります!!ガジルに押せ押せの♀ナツ可愛いです!!
やっぱりガジルは女の子にも攻められてこそですよねウフフフフ。
そして、ごちそうを作って、待ってるなんて…!!女子力!!凄まじい女子力!!
私のとこにもごちそうを作りにきてくださぁい!!!!

とても美味しいプレゼントをありがとうございました!!


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