本命は特別 1/2
やっぱりラクサスはモテるな…。 ギルドのカウンターで鉄をほおばっているガジルの感想だ。 先程から街の女性たちがギルドに来てはラクサスにチョコを渡し、頬を赤らめて帰っていく。 実は自分もラクサスにあげようとチョコを用意していたのだが…。 (あんだけあったらいらねえよなぁ…) あのチョコの山を見た後で自分からあげる気にはなれない。 心の中でがっかりしている自分がいる。
「…ガ、ガジル!」 振り向くとそこにはもじもじしながらレビィが立っていた。 「…レビィか」 隣座れよ、とすすめるとレビィは少し驚いたようだったが、おとなしく腰を下ろした。 「で、なんだよ」 「あ、あのね、これ、バレンタインだから!」 ずいっ、と渡される綺麗にラッピングされた箱。 「お、おぅ。…サンキュ」 その勢いに驚いたが、レビィの顔は真っ赤だ。ガジルは素直に受け取った。 ――俺もこんな風に渡せたらな。 ちらっとそんな考えが頭をよぎる。
「そ、それでね…。ガジル、私、」
レビィの言葉を聞きながら、ガジルは何気なくラクサスの座っていた方を見た。
「ガ、ガジルのこと――」
ガタッ! ガジルがおもむろに席を立った。 横では顔を真っ赤にしたレビィが固まっているが、気にしていられない。 チョコの山はあるのに、ラクサスがいない。 あわてて視線を巡らせば、どこかへ行こうとするラクサスの姿があった。 「…」 そんなガジルの動きを、レビィはじっと見つめていた。 「…追いかけなよ、ガジル」 ガジルははっとしたようにレビィを見る。 「渡したいもの、あるんじゃない?」 「…悪い」 そう言って駆け出したガジルをレビィは見送った。
「いいの? レビィ」 「ミラ…」 カウンターの内側からミラジェーンが問いかける。 「…うん、チョコは渡せたし」 レビィは寂しそうに笑った。 「それに、ガジルが見てるのは私じゃないから」
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