甘えさせて 1



※ガジル8才ぐらい
※竜達がS級魔導師設定



 今日のナツはいつもより上機嫌だった。それもこれも、夕方からガジルが自分の家に泊まりに来るからだ。
泊まることになったきっかけは、メタリカーナとリリーが同じ日に家を開けたため。イグニールが朝方血相を変えて出ていった事が、どうも気掛かりだが…。
その事以外、ナツからしてみれば至極幸せだろう。だが、如何せん…

「ナツー、ガジルに変なことしたらリリーにバラすからね」
「うぐぅ…っわ、分かってるって…」
「本当に?」
「モチロン」

…ハッピーのガードが堅い。
昨日の夜リリーから好物の魚を貰っていたところをたまたま目撃したナツは、その時疑問を抱いただけだったが…こういうことだったとは。
まぁ、ガジルに変なことをすれば彼の父親であるメタリカーナにタコ殴りにされることは簡単に想像できるため、肝には命じていた。

しかしハッピーの視線があっては抱き締めただけで変態行為と見なされチクられるだろう。
うーんと唸ってると、トントンとドアをノックした音が聞こえた。

「おっガジル来たかな?」
「オイラが出るよ。ナツは大人しくしてて」
「酷ぇ!」

ぴゅー、とハッピーは玄関へ飛んでいった。
どうせ家に一晩泊まるのに…。ハッピーの警戒心を解く方法をナツはいまだに頭の中で巡らす。
 そんなことをしていたら、ガジルがトコトコとやってきて、可愛さに抱きつきたくなった。

「よぉーガジル!一晩よろしく!」
「顔と言い方が気持ち悪いよナツ。」
「…うん。」

 ハッピーの棘のある言葉に反論しようとしたが、ガジルはどこか元気がないようだ。

「?なんか元気ねーな?」
「…別に。ハッピー今日は世話になるぞ。」
「あいさー!安心して!オイラが変態ナツから守ってあげるからね!」
「俺はスルーかガジル。そしてハッピー容赦ねぇ!」

 冷たい一人と一匹にただ耐えるナツだった。





夕食を食べ終わり、ソファーの上で寛いでいるナツとガジル。珍しくガジルからナツの膝の上に座り、端から見れば微笑ましいのだがナツは理性が切れそうだ。
ちなみに今ハッピーは風呂の湯加減を見にこの部屋にはいない。

「あ〜、ガジル可愛いー。」
「…うっさい。」
「照れるなよ。今ハッピーいないしチューぐらいしても…。」
「『ナツ、ガジルにセクハラ一回』…と。」
 甘い雰囲気の中、別の声がしたと思えばハッピーがメモ帳に何か記している。
「…ハッピーさんなにしてらっしゃるの。」
「ナツがしでかしたこと全部教えろってリリーに言われたから。」
「相棒をそんなに殺してーの!?」
「違うよ〜、ただ細かく報告した分いっぱい魚貰えるから…」
「どっちみち俺死ぬじゃん!!」

第一座ってきたのガジルだからな!?
反論しようとしたら、ガジルに小さく「うるさい…」と言われ、口を閉じた。

「あ、そうそうお風呂湧いたよ〜、ガジル先に入る?」
「…入る。」
「おっじゃあ俺も――」
「ナツはダメ。」
「何故!?」
「『ナツ、ガジルの入浴中にらんにゅ…」
「すみませんでした。」

今日中にそのメモ帳燃やそう…とナツは決心する。
ガジルはバックの中から着替えを取り出し、浴室に向かう。
う〜、と唸るナツに、ガジルが言った。

「……べつに…。」
「ん?」
「べつに…一緒に、入ってもいい…。」
「!!ガジ…ッ」
「その代わりハッピーも一緒。」

ズコーッとナツはこけた。
「あいさー!」とハッピーはガジルと一緒に浴室へ。
まあハッピーも一緒とはいえ入れないよりいいかと、ナツも着替えを用意して向かった。





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