2012バレンタインフリー トロ様
きつい
何がきついかって、匂い。 ギルドでは、バレンタインデーだということで女たちがチョコを大量に配っている。 おかげで匂いが充満している。 人の倍は鼻がきくため、気分が悪くなる。 だが、こういう日は必ずと言っていいほど厄介事が起こる。 厄介事は毎日だが、こういう日はさらに輪をかけてひどい。
「ガジルー!!」
ああ、来た。 噂をすればなんとやら。 明るい声に振り返ると、見慣れたピンク頭が抱きついて来た。
「離れろ!!」
「チョコくれ!!」
「聞けよ!!」
抱きついたまま満面の笑みで言われるが、さっきから尻を撫でまわす手から、まったくときめかない。 むしろ危険しか感じない。 なんとか剥がそうとするが、相変わらずの馬鹿力。
「お前、男からチョコなんて貰って嬉しいか!?」
「できればガジルにチョコぶっかけて頂きたい」
「キモい!!!ただキモい!!!」
「ごふっ!」
腹に思いっきり蹴りを入れてやるが、やっぱり話してくれない。 しかも、痛みで身を縮めてさらに密着してくる。
「は な れ ろ」
「なんでだよ、昨日何回もヤったからか?気持ち良さそうだったじゃん」
「黙れええええええええ!!!!」
「痛い!!!」
思いっきり頭突きを食らわす。 こいつは堂々と何を言っているんだ。
「訳わかんねえ!!何言ってんだよ!!」
「何って昨日の夜のこと」
「そうじゃねえよ!!!」
「じゃあ、中で出したこと?」
「うわあああああああ!!!!!!!!」
もう聞きたくないという風に、耳をふさぐ。 ただでさえ昨日のことで腰が痛くて、嫌でも意識してしまうのに。
「バレンタインだから、恋人たちの日だろ。いいじゃんイチャついて。いつもツンデレなんだし」
「も、マジ黙れお前・・・ここどこだと」
「え、ギルド」
もう嫌だこいつ。
ギルドメンバーは、またかという顔でスルーしている。 慣れって怖いな、と切実に思う。
「なー、くれってば」
「ね、ねえよ・・あるわけないだろ」
「え、じゃあ家か?俺と二人きりでイチャつきたいから?可愛いなー」
「お前、ホント病院行けよ」
こいつのこの妄想はどこからくるんだ。 本気で医者に見せなければと、何度も思った。
「で、チョコは?」
「だから、ねえよ!!」
「えー、なんで!!?」
「お、おま・・昨日あんだけ好き勝手やってまだ足りねえのか!?」
「あれはあれ。今日は今日だ!!」
「知るか!!ちょっとは自重を覚えろ!!お前いつも好き勝手してんだから、今日は逆に我慢する日にしろバカマンダー!!!」
「なにそれひどい!!!」
「ひどくねえよ!!俺の体考えろ!!」
「え、まさか妊娠して・・・」
「病院へ行けえええええええ!!!!!」
力いっぱい右ストレートを食らわしてやった。 自分でいうのもなんだが、かなり綺麗な右ストレートだと思う。
「しばらく伸びてろ変態桜頭!!!」
勢いよく壁にめり込んだサラマンダーに悪態をつきながらギルドを出て行く。
なんで俺は、あいつが好きなんだ 本気で疑問に思う。
街を早足で歩きながら、ちらりと店頭に並んだチョコに目をやる。 用意していなかった訳ではない。 ただ、作ろうと思っていた矢先にサラマンダーがきてそのまま事に移ったから作れなかったのだ。 正直に言うのは、プライドが邪魔して言えない。
家につき、昨日買ったままのチョコを取り出す。 これ、どうするか 今更作るのもどうかと思うし、かといってこの板のまま渡すのも恋人としてどうだろうか。
「もったいないし、作るか」
自分やリリーと食べればいいのだし。 そう思い、板チョコを溶かし始める。 サラマンダーに渡さないことに、少し罪悪感を感じるが。
「万年発情期が、ちょっとは態度考えろよ」
デレろと言われても、デレるタイミングが分からない。 始終あいつがデレデレとしているから。
「でも、好きだからしょうがないんだよなー」
「だからって、いっつもデレデレと。俺はいつデレればいいんだよ」
「好きなときでいいぜ?今もデレてるし」
「馬鹿か。誰・・・・・が?」
ちょっと待て、俺は今誰と話してる。 家には今、俺一人のはずだが。
ゆっくり横を向くと、じっとこちらを覗きこんでいるナツの顔がすぐそこにあった。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
「ちょ、危ねえ!!チョコこぼれる!!!」
「な、なん・・・!!?」
「あ、さっき追いかけて来たんだ。そしたらガジルぶつぶつ言いながらチョコ作ってたから、すんげー可愛いなと思って見てた」
「み、見てんじゃねえ!!こ、この・・・!!」
何かを言う前に、ずいっとナツが近付く。 驚いた表紙に床に座ってしまったため、ナツに馬乗りされている状態だ。 そんなナツの手には、さっき落としそうになった溶けたチョコの入ったボウル。
「なあ、デレるタイミングが分んねえならさ、今デレようぜ」
「は、今?」
「そうそう、今」
にこにこと人懐っこい顔で見下ろしてくるナツは、ガジルの目の前にチョコの入ったボウルを持ってくる。
「チョコプレイさせてくれ」
「やっぱそれかああああああ!!!」
「だってデレようと思ってくれてんだろ?だったら意地なんか張らずに、今デレよう!せっかくのバレンタインデーなんだし!!」
「だ、だからって・・・き、昨日もあんなに」
「どれだけやっても足りねえよ」
不覚にも、その顔にどきっとしてしまった。 戸惑っているうちに、ズボンに手をかけられる。
「な、いいだろ」
こいつ、俺が拒否してもやるんじゃないか 色々考えたが、今日が恋人たちの日だと、だから仕方ないと無理やり自分を納得させた。
「す・・・」
「す?巣?」
「好きにして・・・くれ」
恥ずかしい、かなり恥ずかしい。 真っ赤な顔でナツを見つめ、そういうとナツの理性はガラガラと音を立てて崩れ去った。
(体中、チョコくせえ・・・)
(よし、じゃあ今度は風呂場でな!!!)生き生き
(絶倫野郎)
おいしくいただかれました!!! はっはっは、なんだこれ!? なんか毎回言ってる気が・・・
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ナツそこ変われ!!!!!! デレデレガジたん可愛いですはぁは。相変わらずナツがいいとこどりで羨ましいです!! そうですよね、ナツは絶倫ですよね(殴) でもまんざらでもなさそうなガジたんに鼻血大噴出です← 素敵なバレンタインをありがとうございました!!
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