『電車が参ります。線の内側より下がってお待ちください』

喧騒がひしめく朝のホーム。通勤通学ラッシュのこの時間はバトルとは違った殺気が立ち込めていて正直好きじゃない。アナウンスがあったって線の外側を歩くサラリーマン、駆け込み乗車する学生、列に割り込む女性。『ルールを守って安全運転』の標語は彼らには見えていないらしい。
二番線に入ってきた急行の扉が開いて人の雪崩が起こる。みんなそのまま階段へ流れるのに何故か6両目の扉付近に人が留まっていた。トラブルかな、人混みを掻き分けながら急いで駆け寄れば他の乗客や駅員に支えられた女子学生がぐったりとした様子でうなだれていた。

「なまえちゃん?!」

最近よくバトルトレインに来てくれるなまえちゃんは僕の呼びかけに力なく顔を上げた。その顔は青白くいかにも具合が悪そうで、急ぎ近くのベンチを空けてもらい彼女を休ませる。その間野次馬を散らして止まっていた電車を出発させ、やっと人通りが少なくなった時駅員の一人がこっそり耳打ちをしてきた。

「さっきの電車で痴漢にあったらしく、ショックで具合が悪くなってしまったそうです」

口に当てているハンカチを持つ手が震えている。急行の満員電車内で青い顔して震えている彼女に気づいた乗客が声をかけ発覚したらしい。痴漢は既に身を潜めていたみたいで捕まえることも出来ず、停止駅だったここで降りたということだった。

「とりあえず救護室に行こうか?」

生憎今日は女性駅員もいないし、多分ここは顔見知りの僕が付き添って行った方が彼女も安心できるだろう。なんにせよここじゃ人が多すぎて落ち着かない。小さく頷く彼女の手を取って、その場にいた駅員に簡単な指示出しと、中央監視室にいる兄さんにインカムで報告し救護室へ向かった。

「すみませんクダリさん、忙しい時に…」

救護室のベッドに腰掛けた彼女はさっきよりも顔色は良くなっていたが微かにまだ手が震えていた。当たり前だ、痴漢にあって平然としていられる子の方が少ないだろう。来る途中で買ったおいしい水を手渡す。

「いや、気にしないで。それより大丈夫だったかい?」

長いコートを備え付けの机に置いて、はい…、と力なく頷く彼女の横に腰掛ける。長身の僕と並んだら大抵の女の子は小さく見えて当たり前なんだけど、今日の彼女はことさら小さく見えた。

「すみません。痴漢なんて、初めて遭ったから動揺して…」
「なまえちゃんが謝ることないよ。悪いのは全面的に痴漢した奴じゃないか」

僕の慰めに弱々しい笑みを向ける彼女はなんていじらしいんだろう。本当に、許せないよ痴漢した奴が。
やり場のない憤りを感じていると、不意にベッドが軋んだ。

「クダリさんが触ってくれたら治ります」

言葉の意味を捉える間もなく開き気味でいた太ももに体重が乗せられる。呆気にとられた僕に跨って肩に手をかけているなまえちゃんの顔は、いつの間にか赤みがかかっていて熱に浮かされていた。見たことがない彼女の表情に喉が上下する。
駄目だよ、なまえちゃん。そう言いながらも僕の手はしっかりと彼女の腰に回っていた。彼女は僕の静止に答えない代わりに制服のリボンを解いて、シャツのボタンを三つ開ける。覗いた水色のレースが僕の自制心を擽った。

「ねぇなまえちゃん、駄目だよ、本当に」

口から漏れた言葉は思いの外うわずっていた。こんなこと駄目なのに、視線を彼女から逸らすことが出来ない。さっきまで震えていたはずの細い指がしっかりと意思を持ってスカートの中に隠れ、代わりになまえちゃんの色づいた吐息が露わになる。

「ここ、触られたんです」

再び見えた指の先は少し濡れていた。

「今度はクダリさんが触って?」

瞳を揺らして懇願してくる姿に全身がぶわっと熱くなる。思わず彼女の頬に指を添えてしまった。手袋越しに柔らかい頬の感触が伝わる。
一回り近い女の子に手を出すなんて、これじゃあ痴漢と変わらない。きっとショックで思考回路が少しおかしくなってしまっただけなんだ。一時の感情のぶれに任せた彼女を静止するのが大人である、僕の、役目。…でも、触ってくれと頼んでいるのは他でもない彼女で。見るからに辛そうにしているし、気持ち悪い記憶を払拭したいという理由も痛いほどわかる。そうだ、これは、彼女を介抱するためだから、仕方のないことだから。

手袋を外した手はスカートの中へと吸い込まれる。つるつるとしたサテン生地はしっとりと湿っていた。指を引っ掛けながら横へずらし、中指を押し込む。膣内はたっぷり濡れていたから続けて薬指も押し込んだ。彼女から小さい嬌声が漏れる度に僕の劣情が増していく。ここをあの満員電車で触られたんだ。多分後ろから、最初はスカートの上から撫でつけて、そのうちにパンツ越し、それから今みたいにずらして指を入れて彼女が羞恥の色で染まるのを楽しんでいたのか。同じことをやっているという背徳感と同意の上という優越感が全身を包む。あ、やばい、このままじゃ。

「…あっ、 クダリさん?」

情けないことにイってしまいそうになったから慌てて指を抜いた。まずい、完全に妄想に飲まれていた。そんな僕の事情を知ってか知らずか、肩に添えられていた手が胸を伝って下半身まで降りる。

「…いいですよ?」

スラックス越しでも分かるくらい勃ってしまったそれを優しく撫でられてしまえば僕の中の色んなものが吹っ切れた。自分が案外流されやすい性格をしていたんだと驚きながらもベルトを外しチャックを下げ、取り出した自身は腰を落としたなまえちゃんの中へと入っていく。快感が腰から駆け上ってきて思わず目を閉じた。そしてゆっくりと、余韻に浸るように開けると今日初めて見る満面の笑みのなまえちゃんが口を開く。

「やっぱりちょろいですね、クダリさんって」

舌舐めずりをした彼女にめちゃくちゃにされたいだなんて思った僕は大人失格でいいよ、もう。



*Thanks rquest
年下学生と葛藤するアニクダ
140904
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