後日談





――キュイキュイ

何処か上機嫌な調子でバニラシェーキを飲んでいる静雄を見詰めながら、トムは自然に疑問を口に出した。

「どうした?機嫌いいなあ今日。」

すると、静雄はおもむろにシェーキを机に置き、少しだけ頬を綻ばせた。

「…まあ、色々あって…」

貴重な笑顔を見せる静雄に疑問符を浮かべながらも、原因は何だか少しだけ分かるような気がして。

「そーいやお前ん家、親戚の子供預かってるんだっけか?」
「えっ、あ……はい。まぁ、そうっすけど…」

前に街でバッタリ子連れの静雄と会ったときに、そう説明されたのだった。しかし、トムは何となくそれが嘘だと言うことに気付いていた。その時静雄が連れていたのは、まるで生き写したかのように静雄そっくりの子供だったからだ。

…何故か着物を着ていたが。
そして、その時実は臨也の姿も近くにあったことも解っていた。つまり、トムは、静雄と臨也の関係をぼんやりとだが勘づきつつあるのである。――しかし、それについては深く言及しない。

「……実はこの前、そいつら連れて出掛けたんすよ。」
「へぇ」

いつになく自分から話し出す静雄に、本当に機嫌が良いんだなとトムは自然に微笑んだ。

「子供って、可愛いすよね…本当に。はしゃいで大変っすけど…」
「いいなぁ、まさか俺よりお前のが先に子持ちになるとはなぁ。」
「ちょ、トムさんっ」

――あ、照れてる?

子持ちと言う単語に反応したのか頬を赤らめる静雄。トムは肘を突いて外へと視線を逸らしながら溜め息混じりに呟いた。

「俺もガキ欲しいわー…最近ホントそう思う。」
「…トムさんなら良い父親になれますよ。」
「そーかぁ?」

ハンバーガーにもふりと食い付きながらそう言う静雄に、気だるげな視線を向ける。

「少なくともアイツよりはいい父親になります。」
「……アイツって誰。」
「あーすんません…。そもそも比べる事が間違ってました。」
「……。」

いや…だからアイツって誰よ。と心中でトムは溜め息を吐いたが、それを口に出せば静雄の怒りに触れること請け合いなので、胸中に留めておく事にして、トムはポテトをかじる。
静雄は時々こんな風に、自己完結してしまう事が多々あるのでトムには慣れっこだった。

――しっかし…
コイツも丸くなったよなぁ

残り少なくなったハンバーガーを、包みから出してぱくりと頬張る静雄を見ながら、トムは微笑んだ。





20110331


屍蝶さまリクエスト小説です!
長らくお待たせ致しました……すみません、拍手パロの続きとして書きたかったので、あっちで日々也くんを登場させるまでに手間取ってしまいました…。

ちょっと長くなるかと思われますが、頑張ります。

テルル

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