大好きな






「………おい、臨也」
「なぁに?シズちゃん」

ベッドの上でノートパソコンを弄りながら仕事をしていた俺は、待ちに待ったシズちゃんの登場に胸を躍らせて振り返った。
すると、ドアを半開きにしたまま立ちすくむシズちゃんの姿が。

「………どしたの?入りなよ」
「お前……俺の…俺のプリン食っただろ…?」


―――げ。





――
話は昨晩に遡る。
仕事帰りに、ふと寄ってみた有名菓子店。そこの有名なプリンを、シズちゃんへの手土産に買って帰った。

……シズちゃんはプリン好きだから。

文字通り、シズちゃんは大喜びしてくれたんだけど…その、まあ。

だってシズちゃんが一晩経っても食べてないんだよ?!今日中に食べろって書いてあるのにさ?だからシズちゃんがお腹壊したら可哀想だと思って食べてあげたの俺偉い!!

――でも…


「――…いや、いい…」
「…あ、」


ぱたん、と虚しく閉められたドアを俺は暫く見詰めて――いつになくしゅんとした様子のシズちゃんに事の重大さをやっと理解した。

「…ごめんね、シズちゃん。」


――
リビングに出ると、ソファでふて寝してるシズちゃんが居た。電気も付けっぱなしで、節約家のシズちゃんにしては珍しい。……そんな分析より早く謝らなきゃ。

肩をつつく。

「……シズちゃん」
「…………何だよ。」
「プリン、食べちゃってごめんね?」
「………もういい。」

あ、割りとご立腹みたい。
そこで、俺は最後にもう一押しを入れることにした。

「明日、また買ってくるよ」
「えっ」

ソファに寝ていたシズちゃんが起き上がった。単純だけど可愛いです。

実は、あのプリンは一日限定10個の超超幻のプリンで、手に入れるのにシズちゃんには言えないやり方を使ったりしてたんだけど…。まぁそれはさておき。

「食べたことに関しては謝るよ、シズちゃんごめん。でも、賞味期限は守らなきゃ。」
「……楽しみは後に取っとく派なんだよ、俺。」

ソファの上で体育座りになって、膝の上に顎をのせて唇を尖らせて不服そうなシズちゃん。でも、取り敢えず許してくれたみたい。

「…ね、ベッドいこ?」


  ・・・・・




「シズちゃん、おいで」
「……嫌だ」
「おいで!シズちゃん!」
「るっせぇな…」

仕方なくだからな!とでも言いたげな、ふぐみたいな表情で、シズちゃんが近寄ってきた。
それが愛しくて愛しくて、思わず背伸びをして唇を食む。

「っんぅ、ちょ…!」
「……反則。だよ?」

ちぅ、と音を立てて下唇を吸うと、ボンとシズちゃんの顔が赤くなった。つーか、未だにこんな可愛い反応返してくれる奥さんとか、シズちゃんくらいなんじゃないの?

……あー、ちょっと待った。

「…?」

急に何もしなくなった俺を、シズちゃんがきょとんとした目で見てくる。

「どう…した?」

躊躇いがちに訊いてくるシズちゃん。その表情も止めて欲しい。折角我慢してるのに…。


内股で、足の間に手を突いて床にぺたんと前のめりに座り込んでいたシズちゃんが、顔を背ける俺の表情を見ようと更に前に屈んだ。

我慢していたけれど、ちょっとだけ…と視線をそちらへ向ける。
すると、

「ッ!!」

丁度こちらに手を伸ばしていたシズちゃんの視線とぶつかって、恥ずかしかったのかシズちゃんがまた真っ赤になった。

「ばっ…か、いきなりこっち向くなよッ!」

――これ何てエロゲ?

エプロンの紐が、シズちゃんの片方の肩からするりと落ちた。真っ赤になったままそっぽを向いてそんな事を言うシズちゃんに、何だか俺まで恥ずかしくなってしまう。

「…シズちゃんて、本当に可愛いよね。」
「っ、はぁ?!」

そして、その頬に手を当てて囁いた。

「……俺さ、シズちゃんでホントに良かったよ。」

シズちゃんは暫く黙っていて、それからあと、小さく「そうかよ」と言った。




――そしてそのまま、白いシーツにシズちゃんを縫い付けて、いつもよりしつこく痕を残しながら愛撫をした。

後でシズちゃんには怒られたけど、いつもより機嫌は良かった。さり気無く俺があげたエプロンちゃっかり着ちゃってるとか、堪らないよね。



――


次の日の朝、俺が起きるとシズちゃんは洗濯物を干しにベランダにいた。
こっそり後ろから忍び寄って、さっきから目がいってしまうお尻をむにゅりと掴んだ。



「――っひゃう!!」
「おっはよー愛しのシズちゃんっ」
「し、しね馬鹿っ!馬鹿!!」

真っ赤になってタオルを振り回すシズちゃんに、俺は冗談じゃなく殺されかけながらも、幸せを感じていた。…あ、Mじゃないから。そっちじゃないからね?!

―――あ。

忘れかけていたある事を思い出して、俺はシズちゃんの肩をつんつんとつついた。

「シーズちゃーんおはよ……ん。」
「ん、っ」
「っは……やっぱシズちゃんさ、キス好きでしょ?」
「……何でだよ、別に好きじゃねえよ。」
「じゃあもう朝のちゅーだけでいい?寝る前とかご飯食べる前とか……もう結婚してから大分経ってるしさ…」

そう俺が言うと、目の前のシズちゃんの表情がみるみる暗くなっていった。

「――…冗談だよ?」
「っころす!」

ひゃー…今何処からかフライパン飛んできたよ?!


と、言うわけで…今日も俺の奥さんはこんな感じにバイオレンス…。

だけど、きっと世界中探しても、シズちゃんみたいに男前で、強くて、格好良くて、それでいて可愛いお嫁さんなんか居ないでしょ!




「シズちゃん、今朝は朝マックなんかどう?」
「…俺は良いけど、お前はああいうの嫌いじゃ無かったか?」
「バニラシェーキ飲むシズちゃんが見たい!!」
「………お前最近ホントきもちわるいな」









20110323





いちゃらぶ!
9876HIT匿名希望様キリリク、夫婦パロの臨静で、ちょっとした喧嘩をした二人(甘)でした(*^o^*)素敵なリクエストありがとうございました!


テルル
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