Trust me./序









――あれから三日経った。

グループマッチの翌日は土日だったから、今日は月曜日であれから三日目。ついでに言うと、静雄と会うのも三日ぶり。後者の方が、臨也にとっては重要だけれど。

早朝、どうしても落ち着かなくて、部活熱心な奴と同じくらいの時刻に学校に来てしまった臨也は、まだ開いていない職員室のドアを暫く見つめたあと、ぶらぶらと校舎内をうろつき始めた。

冬なので、朝が遅い。

携帯を開くと、既に何人かからおはようメールが届いていた。

「……」

それは、臨也の信者たちからのメールだ。前まではちゃんと返事をしていたのだが、最近になってそんな気が全く起こらない自分に気が付いた。
パチリと携帯を閉じ、ガラス張りの廊下から街を見渡す。

心の中には、一人の姿しか浮かばない。

――抱きしめてしまった。我慢出来なかった。毎回、ちゃんと段階を踏もう、計画通りに事を進めようと思うのに、その一人の前ではそれらは全くと言って良い程に無意味だった。
思い起こされるのは、三日前のやり取りだけで。

「……シズちゃん…」

会いたい。
君に、今すぐ会いたい。そう思ってしまう自分は、やっぱり只の人間でしか無いのだと思った。

神様になりたい。
そうすればきっと、君の心もこの硝子の様に透明に透過して見えるだろうに。―――その奥の奥の奥を、俺は知りたい。

純粋な君は澄んでいる。
それに比べて、自分はどれだけ薄汚れているだろう?
澱んだこの想いを、そこに流し込む許可を、どうか神様…





  ・・・・・


しゃこしゃこしゃこ…

歯磨きのリズミカルな音だけが、洗面所に響いている。まだ誰も起きていない。ただ、静雄一人、鏡に向かって歯を磨いているだけだ。それから口をすすぎ、タオルで拭く。決まった動作。毎日毎日、繰り返し繰り返し。

「…………」

ふと、臨也に抱き締められた記憶が甦ってきて、静雄はその場にしゃがみ込んだ。はぁ、と額に手を当てて、火照る顔を冷やす。

「……なんなんだよ」

臨也に触れられた手が
身体が

熱くて熱くて堪らない。

自分は一体どうしてしまったと言うのだろう?分からない…分からない……。


――全知全能の神とやらが居るのなら、教えて欲しい。どうしてこんなに、一人の事を考えるだけで胸が苦しくなるのでしょうか

こんなにこんなに――会いたいと思うのでしょうか…



20110320







取り敢えずわんくっしょん。


20110321
加筆修正
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