なに、サイケ? 奥から出てきた小さな影。 それは、白地に青の模様が入っている着物を着た、サイケと同じ位の背格好の津軽だった。 「みて」 あまり抑揚の無い大人しい声で、でもどこかわくわくしているような感情を滲ませた表情で津軽が何かを突き出してくる。 「んー?どれどれ…」 「ちゅがる!」 半紙のようだ。 何か書かれている。 受け取っている傍らで、サイケが津軽に抱き着いていた。 津軽は、見た目は平和島静雄そっくりに作られた、サイケデリックと同じ種類の子供アンドロイドだ。ただ、中身はサイケと同じ子供のはずなのに妙に大人しい。おっとりしている、とでも言うのだろうか。 ――全然違うようで、でもどっかシズちゃんらしいんだよねえ。 全体的に無表情なのに、綺麗な青色の瞳をキラキラと輝かせながらこちらを見上げる津軽の頭を撫でてやる。 「津軽海峡冬景色、って…随分と渋いんだねぇ、上手上手!」 拙い字で、一生懸命に筆で書いた跡が見てとれる。よくみたら津軽も着物の裾が墨で汚れていて、それでもシズちゃんにそっくりな顔でそんなに嬉しそうな顔をされると、何だか叱れなかった。 津軽は感情の起伏が少なくて大人しい天然。 シズちゃんというより、弟の幽君に似ているのかも知れない。 反対に、サイケは本当にやんちゃで手が付けられない。呂律の余り回ってない拙い日本語で「あれは何」「これは何」を連発してくる。だけどこっちも天然さん。 そして二人は、お互いを家族以上に想い合ってる節がある。 ――だって、俺がそうプログラムしたんだから。 この子たちは、俺たちの理想像なんだ。ストレートに気持ちを伝え合って、素直にそれを受け入れて生きてる。 しかしそれとはかけ離れているのが原状で。 臨也はそれが少しだけ悔しかった。「ちゅがるだいすきっ」 「…いたいよサイケ」 はーあ…、やんなっちゃうなぁ全く……。 一緒に暮らしていても、どうしても距離を置かれているようで、それが臨也には不服だった。 目の前で、自分達そっくりの子供が抱き合って楽しそうに遊んでいる。 ――遠くの方で、ドアの開く音がした。 「まま!」 「ママおかえりぃー!」 パタパタと、 嬉しそうな足音が二つ駆けていった。遅れて臨也も玄関に向かった。 ――今日くらいは、素直になってみよう。 いつも酷い事言ってごめん 愛してるよ って、言ったら君は どんな顔をするのかな 2010/12/16 2011/02/22 拍手文から移動 |