やらないか 「……」 「………」 「……………」 「………………ねえ、シズちゃん」 「……………」 「シズちゃんだよね…?髪染めた幽くんじゃないよね!?」 「うるっせぇぇぇぇええ!!」 ダブルベッドの中。 ミチリ、と嫌な音が響き、一人がベッドから転がり落ちた。 先週に結婚したばかりの折原臨也と平和島静雄は、アッツアツの新婚夫婦(夫)である。 結婚式を挙げる前から同棲まがいのことはしていたが、結婚してからは、こうして寝食を必ず共にするようになっていた。 二人は新婚。 それ位は普通だろう。 しかし、臨也には一つ大きな悩みがあった。それは… 「―――ねぇ、俺たちまだ結婚してからベッドでシてないよね。」 彼らは結婚してから一度も……まともにダブルベッドを活用していなかったのである。 臨也はそれを嘆いた。 ――折角特注したダブルベッドなのに……!! 何故特注かという理由については、敢えて伏せておく。……静雄の力は尋常じゃない、とだけ言っておこう。 まあ、とにかく、何だかんだで静雄が臨也のそれとない誘いを、完璧にスルーし続けていたのであった。 その無言の応酬に耐えきれなくなった臨也が、うとうとしていた静雄の身体を容赦なく揺すぶった結果――彼は呆気なく地に堕とされたのである。 寸分違わず鳩尾にめり込まれたエルボーに、臨也は気絶してしまっていた。 やがてそこですうすうと寝息を立て始めた臨也を見兼ねた静雄が、やれやれとその身体を抱き起こしてベッドに戻す。 ……別に嫌な訳じゃない。 静雄は溜め息を吐いて、穏やかに眠りこけている旦那の端整な顔を見詰めた。 「だったら他の場所では止めてくれ……」 そう、それだった。 静雄が頑なに生産性の無い夜の営みを断り続けるのには理由がある。 その理由とは、 ―――夜、このベッドに入るまでに既に事を済ませてしまっているからなのだ。 臨也が帰宅すればせがまれる。「食後の運動」と称してせがまれる。「風呂上がりのストレッチ」と称してせがまれる。何にもなくてもせがまれるせがまr ベッドに辿り着くまでに、それはもう、静雄にとっては壮絶な闘いが繰り広げられているのである。 にもかかわらず、臨也は毎晩涼しい顔でベッドの中でも迫ってくるのだ。 せめて寝る時位は休ませろ……! というのが静雄の言い分だ。 しかし、もう一つ、静雄にとって重要な理由がある。 それは…… ・・・・・ 「―……寝る時間くらい、ちゃんと作れよ」 静かに寝息を立てている臨也の頬を、指でさする。 静雄は目を細めてその穏やかな表情を見詰め、やがて顔を寄せたかと思うと―――軽く口唇を触れ合わせた。 そしてそのまま身体を反対に向けて、目を閉じる。 ――まぁ…今度の土日くらいなら…… 臨也の願いを叶えてやってもいいかなあ、と思いながら。 「……ずるい」 実は寝た振りをしていただけだった臨也が、隣から穏やかな寝息が聞こえ始めたのを合図にぱちりと目をあける。 「……あーやっぱり……シズちゃん大好き…」 後ろから愛しいその背中を抱き込み、臨也は直ぐに眠りに落ちてしまった。 二人の新婚生活は、まだまだ続く――― 2010/12/04 下品ですみません(笑) ですが、新婚パロの二人はこんな感じです! 他がシリアス臭いので、こっちで爆発します。 |