ERROR



※来神(過去編とは別)
※静雄が可哀想
※○イプ





排水溝に流れていくのは、水。

それと共に流れていくのは、まるで乳液のような、白いモノ。


認めたく無かった。

まさか自分が、









「ERROR」





「見ーつけた…シズちゃん?」
「…臨也」

俺は、その黒いのを見ていつも安心する。ふざけたノミ蟲野郎だって、ムカつくノミ蟲野郎だって、いつも思うのに。
初めこそソリが合わなくてよく喧嘩をしていた。毎日毎日、不毛な殺し合いを、臨也と繰り返していた。だけど、……あれはいつ頃だったろう。

確か、高1の終わり頃。
アイツがいきなりキスをしてきた。俺は訳が解らなくて、思わず投げ飛ばしたけれど。

『好きだよシズちゃん』

なんて、
目の前で何の飾り気もない台詞を落とされて。俺はそれが単純に嬉しくて。他人から好きだ、なんて言われたのが初めてだったから。
気づけば、その辺りから俺たちは「恋人」と呼ばれる関係に収まってしまったのでは無いだろうか。


……だけど、臨也も俺も、お互いに甘い言葉だとか、とにかくそんな、「普通の恋人」みたいな真似はしない質で。
結局、臨也はあれ以来「好き」という言葉は口にしていない。
その代わりに…


「……やめろよ」
「ふ、嬉しい癖に。シズちゃんは、俺に触られるのだぁーいすきだもんね?」
「っ、ゃ…!んぅ…」
「ん…っ、もう。ふいに可愛い声出さないでくれる?……あー、もうこんなにして…いつからシズちゃんはこんな淫乱になっちゃったのかなぁ?」
「っふ……い…ざやぁ…っ」


“インラン”


臨也からそう言われる度、俺はどきりと心臓が跳ねる。もしかしたら、もしかしたら正体がバレてしまっているのではないかと、不安になる。
そして、そんな不安を掻き消す為に、俺は更にコイツを求める。なのに、あとからあとから不安は湧き出てくるから――






「……ん…」
「あ、シズちゃん、起きたの?」

目を開けると、臨也がそばにいた。いつも、コイツは俺を一人にしないようにしてくれる。…こう言うところ、無駄に優しい、とか…思わなくも…。

「なに?そんなに見つめて……俺に惚れ直した?」
「……っねえよ!馬鹿!」

ノミ蟲はノミ蟲だ、クソっ
前言撤回!!


……でも

俺の髪を撫でる手付きも、今は全部…全部、好きだ。


「……」

俺がせめて、コイツにしてあげられる事と言えば、こういう生産性の無い行為くらいで。しかも週に一度きり。一体臨也は俺のどこが好きなんだろうといつも不思議に思う。

俺は自分の良いところが解らない。“あの日”を迎えたときから、何度死のうと思っただろうか。

身体中を這う汚い無数の手の感触や、それに快感を拾っていた自分の身体が浅ましくて穢らわしくて。たまに、臨也の手が忌々しい“あの日”の記憶と重なって、怯えてしまう。

でも、何も知らない臨也は優しく耳許で囁いてくれる。

『――大丈夫だよ』

と。


「大丈夫だよ、シズちゃん。」
「え…?」

――何がだ?

臨也との会話の前後に繋がらなくて、俺は思わず聞き返した。だけど、臨也は何も言わずに、ただ寝ている俺の頭を抱き締めたまま、頬をすり寄せてくる。

むにゅっとした感覚が、何だか気恥ずかしい。

「……ぁんだよ、やめろ」
「かーわい…シズちゃんは可愛いね。…可愛くて…綺麗だ」
「…頭沸いてんじゃねぇか?」

“綺麗”

俺の実際は、そんな言葉とは遠い所にある気がする。だって汚いから、俺は。

でも、臨也に言われると、なんだかあの忌々しい記憶が少しだけ薄れていくような気がして。

俺は、密かに次の言葉に期待した。


「――実は、さ。言ってなかったんだけど、



中学生のとき、君を襲うようにあいつらをけしかけたのは俺なんだよ。






「――……え………?…」


その瞬間、俺の中の何かが、がらがらと音を立てて崩れ落ちた。

「―……“あの日”、俺は後ろからずーっと様子を見てたよ…。っくく…、思えば…あの時から君はとんでもない淫乱だったよねぇ?」
「……めろ」
「抗えない快感に喘ぐ君の姿は本当に綺麗だったよ…ああ、あれが無かったらどうして今こうして君なんかと」
「――臨也っ!!」

嘘だ。
嘘だ嘘だ、嘘嘘嘘嘘嘘嘘――――


「――…あれぇ?シズちゃん泣いてるの?っはは、ウケるー!そりゃそうだよね?だって信じてた俺に裏切られたんだもんね?……でも残念無念。だとすれば、君は最初から俺に騙されて裏切られていた事になるよ?あーあ、シズちゃん…どうする?それでも君を愛してくれる奴なんて、俺しかいないだろう?」
「……っ!」

吐きそうだ。

信じていた臨也。
好きだった。本当に。

なのに


「ほら…こっちにおいで?」



結局、愛と云う甘美で残酷な飴の味を、俺は忘れられない。



「…え、ここじゃ吐かないでよ。汚いから。」




それでも俺は……







20110213





小ネタが書きたくなりました。
すみません…。しずお可哀想なのは向かないです…。反動で愛されしずおはお受けしたリクエストで書きますので。





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