シズちゃんは今注目の的ですから! 「……ねえ、新羅はどう思う?」 「は?」 岸谷新羅は、昼休み、唐突に口を開いた友人の言葉に首を傾げた。 「…何のこと?」 「シズちゃんだよシズちゃん。ねえ、どう思う?」 「………」 今更何を言っているんだと言わんばかりの口調に、新羅は暫し目をぱちくりさせた。 「どう思う、って……どうもしないけど…そうだね…敢えて言うなr――」 「そうだよね!何とも思ってないよね!?そうかそうか…うんうん…」 「僕、話してる途中だったんだけど?」 のろのろとした思考が言葉を紡ぎ出した途端、臨也がいきなり横槍を入れて勝手に自己完結してしまった。それに若干イラッとしながらも、新羅は面倒臭そうに飲みかけだった缶コーヒーに口を付ける。 最近こいつ――もとい折原臨也の様子が変だ。事ある事に口を開けばシズちゃんシズちゃん言っている。シズちゃんとは、臨也の宿敵“だった”人物である。ちなみに、かなり凶暴である。色々と理不尽である。解剖したいのである。 ……それはさておき、最近臨也の様子が可笑しいと言うのも、その平和島静雄に関することであって。ほんの数日前まで「シズちゃんと同じ空気を吸ってると思うだけで死にたくなる」などとぼやいていたのに、今では、 「シズちゃんと同じ空気を吸ってると思うだけで死んでもいい…」 「………君、気持ち悪いよ」 という感じなのである。微妙なニュアンスの違いだけれど、明らかに悪意や敵意だったものが、好意に変わっているのだ。 一体何が起きたのか、新羅には全く解らない。だが、自分の数少ない友人にホモっ気があろうと無かろうと、新羅は友人が友人であることに変わりはないと思っている。 例えその友人が、もう一人の友人を盗撮していたとしても――― 「臨也、」 「ちょっと邪魔しないで、今ちょうどシズちゃんが……」 「…それは犯罪だと思う。」 ・・・・・ 「なあ、新羅……」 「ん、どうしたの静雄?」 「最近よぉ…ずーっと誰かに見られてるような……いや、んなモンじゃねぇ。監視されてるみてェな悪寒がすんだけど。」 「……。」 放課後。 校門を出たところで静雄を発見し、成り行きで一緒に帰っていたときだった。 新羅は頭が痛くなった。 (それはきっと臨也のせいだよ!……なんて言ったら、俺の命が危ないよ…。) 昼休みのやり取りを思い出しながら、新羅は、にへらと自分でもよく解らない笑顔を浮かべた。それを見た静雄は一瞬不思議そうな表情になったが、直ぐに前を向いて新羅の一歩前を行く。 「……ま、いーけどよ。……臨也に相談してみっか。」 「――ぇえッ?!」 しかし唐突に放たれたその言葉に、新羅は絶句して立ち止まった。 「何で?!」 そして、率直に浮かんだ疑問をぶつける。まさか、あり得ない。臨也の様子が可笑しいのは解っていたしどうでも良かったけれど、静雄まで爆弾を投下する事態になれば、それこそそのどちらも友人とする新羅に於いては相当なダメージを喰らうのだ。 そして――新羅はその数秒後… 真顔で投下された爆弾に、アイデンティティを喪失しかけた。 「?俺とアイツ、付き合ってんだろうが。」 「―――……、」 「……」 「――――……、」 「………あ?言ってなかったっけ?」 「……っか、」 「か?」 「核兵器…っ」 ・・・・・ 「ホモなんか嫌いだ。」 『し、新羅?一体どうし―――ッ!?』 「……ホモなんか…嫌いだぁぁああ―――!!」 数時間後、自宅で、愛する女性(?)の太ももに抱き着いた挙句投げ飛ばされながらそう叫ぶ新羅の姿があったとか。 ――同時刻。 別の場所でも、折原臨也が自販機と共に宙を舞う怪奇現象が目撃されたのだとか。 「―――手前の仕業かぁあああぁああ――――ッ!!!!」 「ぎゃああああっ!!」 20110526 久々の更新は、AHOな臨也とシズちゃんと、二人に振り回されっぱなしの新羅のお話でした(笑) 本当は過去編のアフターストーリーにする筈だったのですが、あまりにも臨也がAHOというか親馬鹿ならぬシズ馬鹿になりすぎましたので止めました。 当サイトにお越し頂きありがとうございます。 テルル |