PSYCHEDELIC DREAM



※R15
※デリ×静雄です
※凄い設定











「――…静雄」
「ん、どうした?デリック。」

夜中。
静雄が一人で寝ていると、寝室の襖が開いてデリックが入ってきた。眠気でうとうととしていた静雄は目を擦りながら、デリックに向かって手を伸ばす。

「…どうした?」
「…別に…何でもない」
「……こっち来いよデリック」

そう言ってやれば、静雄のすぐ傍までデリックが近付いてくる。しゃがむように促し、その柔らかな頭をわしゃわしゃと撫でた。デリックは仏頂面のまま、静雄の行為を受け続けている。

「…ひねくれてんな、お前。」
「静雄に言われたくねぇよ。」
「ん…っ」

撫でていた手を取られ、顎を掴まれて次の瞬間ふわりと唇が触れ合った。――やっぱり、いつまで経っても慣れないもので、耳が自然と熱くなる。
後頭部を掴まれて、更に口の中をデリックの熱い舌に貪られていく。

「――んぅっ、ふ…ん」

息が苦しくなり、デリックの胸元を掴む。口端から溢れた唾液が伝い落ちるのを感じながら、静雄は、自分の身体が徐々に熱を帯び始めている事に気付いた。

デリックもそれに気付いているのか否か、優しく押し倒してくる。一旦唇が離れ、布団脇の窓から差し込む月光が二人の顔を照らす。それをお互い静かに見詰めたあと、どちらからともなく、再びキスをした。


まるで、磁石のように。
相反するようで、決して離れない。それ自体が一つ一つの個体で無く、片方が存在しなければ、もう片方も存在しないような。そんな、固い固い絆で結ばれた二人の奇妙な共同生活が始まったのは2ヶ月前の事だ。

ある日静雄が仕事から帰ると、家の中に見知らぬもう一人の自分が居た。

『お前にとっては分身――正確にはなんつーか、まぁ、妖精みたいなモンだと思ってくれ。』

しかも、静雄にしか見えないらしい。これはもう、いよいよ自分も主にノミ蟲によるストレスで可笑しくなっちまったかと、その日はデリックの存在を無視して早めに床に着いた。――だが、次の日の朝も、デリックはまだ部屋のすみに座っていた。

『――おはよう』
『…お、は…よう』

まるでそれが当たり前だと言わんばかりの、ありふれた挨拶。静雄はそれが夢ではない、現実なのだと確信を抱くことはまだ出来てはいなかったが、元々セルティなどの存在がある以上、世の中には自分には到底理解できない事がありふれているのだと悟っていた事もあって、割りと一般人以上に順応能力には長けていたらしく、その日のうちにデリックの存在が気にならなくなった。

何故今急に現れたのか。
そんな事はまず静雄にはどうでもいいことで、別に食費が余分に掛かるわけでもないのでいいかとデリックの存在をあっさりと認めてしまう。

そしてそのうち――こんな関係になってしまっていた。



「――あっ、でり…っ!」
「静雄、痛いか?」

ふるふると頭を振ると、鎖骨に口付けられて、そのまま更に足を抱え上げられる。

自分の口から、抑えようとしても漏れ出る高い声が恥ずかしくて、顔の横のシーツを握り締めながら羞恥に必死で耐える。



――きもちいいから

初め、デリックがそう言った。静雄は流されるままだったが、デリックの言った通りだった。
――デリックは人間ではない。静雄が居るから存在する、静雄の分身のようなものだ。だからなのか、身体を繋げるときにはとてつもない快感が生じる。


「…静雄、」
「んっ…うぁ、ッ」
「…すっげ…うねうねしてる」
「いう、なぁっ!」

自分と同じ体格の背中に抱き着きながら静雄は恥ずかしくなり、せめて顔だけでも隠そうと手を離した。すると、

「―…駄目だ」

という言葉と共に両手をシーツに縫い付けられる。

「…俺は知りてぇんだ。ずっとずっと昔から、静雄だけを見てたから……やっとこうして触れるようになったんだ。静雄の全部を知りたい。」
「デリック……」

ぎゅう、と重なる手を握られて、そこからデリックの感情が流れ込んできた。

「…ぴりぴり、する」

素直に思ったことを口にすれば、デリックがこちらを見詰めて微笑んでいた。何処か気恥ずかしくなり、思わず顔を反らしてしまう。

「……それって、気持ちいいって事?」
「っ!ちが――うぁっ…あ…――」

意識は白い世界に霧散した。





  ・・・・・



「……おはよう」
「ん、…」

ぺちぺちと、頬を軽く叩かれて目が覚めた。瞼を上げると、目の前にデリックの顔が間近に接近していた。

「……近ぇよ。」
「静雄って、やっぱイケメンだよな。ノミ蟲野郎のお陰で静雄がモテなくて良かった。」
「……離れろ。」

ぴく、と眉根を上げながら、静雄は上に乗っかっていたデリックを押し退けて上半身を起こした。

――朝から不快だ。
思い出したくもない奴の名前を、思い出してしまった。


「……でも静雄、本当の本当はアイツを」
「――顔洗ってくる。」

デリックの言葉を遮って、静雄は服を着ながら部屋を出ていった。

部屋に残されたデリックは、布団の上に一人体育座りをして、不貞腐れた様に膝の上に顎を乗せる。

「――分かるんだぜ、静雄……言ったろ?俺はずっとずっと昔からお前の中に居たんだ…って。」

窓の外を見上げると、何処か遠くの方で顔を洗う水の音が聴こえてくる。

デリックは、差し込む日の光に向かって微笑んだ。



「……でも、もし静雄がアイツを選ぶって言うんなら…俺は――」

手を見ると、指先が光に透過して半透明になっていた。それを見詰めて、目を細める。



「……そろそろ限界、か…」


歯を磨く音がする。
目を閉じてそれを聴きながら、デリックは呟いた。



「――出来ることなら、
  消えたくねぇな……」








20110326





つづく…の……?



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