メモ | ナノ

10000

Memo!


▼08/07 お久しぶりです^^※小ネタ付き

気が付けばサイトの更新が停滞して早一ヶ月が経とうとしておりました。更新を楽しみにされておられる方には大変もどかしい思いをさせてしまいましたね><すみません

これからの方針ですが、最低でも一週間に一度は更新していこうと思います!

私生活の多忙でなかなか更新ができずにいたのですが、これからはそろそろ落ち着いてくるので・・・。

ううっ!早く探偵パロを書いてしまいたいっ!!(゚Д゚)



それでは、、、
ここまで読んでくださった方に少しでも楽しんで頂ければ…と少し小ネタを落としてみます。亀更新でお待たせしてしまってすみません><拍手ありがとうございます。励みになります!

スクロールでどうぞ↓















手を、握ると

少しだけ、




「…シズちゃんさあ、」

やや苛立った声で俺がそう話し掛けると、少しだけくっついた相手の肩がびくりと震えるのが分かった。…あー、そんなに耳真っ赤にしてさあ。
返事も無しにそっぽを向くシズちゃん。
付き合い始めて半月が経つというのに、未だにこの反応。俺にとっては少し寂しかったりもする。…まあ、目が合うたび無重力空間が発生して俺に向かって色々なモノが飛んできたりしてたあの頃よりは全然マシなのだけれど。

本当はこの夏休み、
高校生活最後の夏休み、
恋人であるシズちゃんと一緒に色々な所へ出掛ける予定は沢山立てていたんだ。

でも、結局今俺たちが居るのは学校の教室で。
…ある程度は俺にも責任があることなのだけれど、つまり、“俺が見誤ったせいで”出席日数が微妙に足りなくなったシズちゃんは、この夏休みに補習を受けることになってしまったのだ。
全員参加の補習が終わったあと、シズちゃんを遊びに誘ったら「俺だけ補習があるんだ」って、これらの事情を全部聞いた。
それで、生徒の殆どが夏休みを満喫しているであろう8月のこのクソ暑い空気の中、シズちゃんは律儀に学校へ通い、用意されたプリントを律儀に全部自力で解こうとして、結局昼過ぎまでこうして教室に残っているというわけだ。
――俺が教えようとしても頑なに拒むんだから始末に負えない。

俺はそれで、こうして一人で頑張るシズちゃんと夏休みに入っても一緒に学校に登校している。

必死にプリントと格闘しているシズちゃんと無理やり同じ椅子に一緒に座って、じわりと汗がにじむうなじをずっと見つめ続けている俺なのだけれど…。

 正直

そんなどーでもいいプリントなんて
テキトーに終わらせときゃいいんじゃないの?

そんで早く俺と一緒にどっか行こうよ


(――…って…俺はどんなうざい女だよ…)
さっきはそう言いかけた。でも
やめた。

「……悪い」
「…え?」

パタ、と。
シズちゃんの握っていたシャーペンが、プリントの海に沈んだ。

「おれ、頭悪ぃし…要領も悪ぃから…本当はもっと、
こんなんササッとやっつけて…それで、」

俺は何となく、シズちゃんを見る気にはならなくて、その向こうにある、窓枠越しの空を眺めていた。セミが鳴いている。
セミが

――ないて、 

「お前とい」

「プール」

「……は?」


何故だか、泣きそうになった。
涙が溢れるのを必死で抑えて、
こぼれ落ちないように沢山瞬きをして、

「…ッ、とにかく早く解けばか!!」
「え、…え?」

ガツンと思い切り真横から脇腹をエルボーしてやった。
でもシズちゃんはまるで何も感じなかったのか、ただ俺の顔を見て困ったような顔をしている。

「臨也?」
「ほら!シャーペン握って!そこは二項定理使わないと解けない問題なの!!」
「え、あ、う、ちょ…」

がばりとシズちゃんの手を掴み、プリントに乗ったシャーペンを握りこませる。
丁度シズちゃんが頭を悩ませていたであろう問題を指さして、俺はずっと言いたくて言いたくて仕方なかった事を次々とまくし立てていった。

もう自暴自棄になっていたのかもしれない。

こんなみっともない顔を
恋人であるシズちゃんに見られたくなくて、

そう言えば初めて手を握ったな…とか
初めてまともに勉強教えてるな…とか

そんなことは全く考えていなかった。



「ちょっと…君数学壊滅的過ぎるんだけど。」
「べっ、別に生きてくのに必要ねえだろ!」
「そうは言うけどねえ……でも数学っていう学問は人間の論理的思考力を養う上で――」
「うっぜぇな…大体手前文系だろ?」
「文系でも数Bまではやるよ普通に…それにさあ、数学なんて教科書読めばわか」
「どこぞの眼鏡みてーな事言うな。俺は至って普通のアタマの作りしてんだよ。」
「はいはい……あ、そこ違うよ」
「あ、どこ?」
「こーこ…っていうか普通に計算間違いじゃない。64の平方根はー??」
「……」
「素因数分解…しなくても解るでしょ…小学生でも解るよ」
「うるっせーな…あ、8!」
「そうそう、そこからねーここを…こうして、こうやって…」
「……すげー…」
「…そう素直に感心されると…」
「……」
「ん、どしたの?」
「…、いや別に…」
「ふふ、惚れ直した?」
「……、…だーかーらー…」
「今の間は何ですか静雄くん?」



  

そんな感じで、シズちゃんの補習は今日で完全に終了した。
課題として出されていたプリントを
今日一日で終わらせてしまったから。

帰り道、俺はご褒美にシズちゃんにアイスを奢ってあげた。

「はい、シズちゃんのぶん」
「…さんきゅ」
「……」

暑さで火照っているシズちゃんの表情を見たら、何だかムラっとして思わず顔を反らした。それでおまけにアイスにちろちろと赤い舌を伸ばしているのだから。

「……生殺し…ッ」
「あんだ?」
「…なんでも」

白いベンチに二人で腰掛ける。
間には微妙な、詰められない距離がある。

暫く無言で、噴水を背にそうやって二人で過ごしていたのだけれど――

「プール」

と、
シズちゃんが唐突に言葉を発した。

「そ、の……明日にでも。行くか?プール…」
「あ……」

次の瞬間には、もうシズちゃんの手にアイスは無かった。
だから俺は、

シズちゃんにぴったりと身体を寄せて、
その手をぎゅっと握った。


「……行こうね、プール」
「…おう」




その手を握ると、

少しだけ。


伝わる気持ち。









…………………………… 
2011/08/07 01:48

[] []


prev top