さよならをもう一度
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 流れる景色をぼんやりと目で追いながら思考を巡らせた。そんな俺をどう思っているのか、耕平は何も言っては来ない。
 車は街の雑踏を抜ける。向かうは一路、耕平が一人暮らしているアパートだ。
 地元で家業を継いでいた耕平が上京してきたのは驚いたが、何かと気の置けない友人がそばにいることはとても心強い。
 俺が同性にしか恋愛感情を持てないことを打ち明けた時も、耕平は茶化さず真剣に聞いてくれた。思えば地元の幼稚園で出会ってからこちら、耕平はずっと俺の一番の理解者だ。

 見慣れた町並みを抜け、そのまま走ること十数分、耕平のアパートに着く。耕平のアパートは佐川と暮らしたアパートよりも通勤に時間が掛かるが、仕方がなかった。
 もともと耕平が一人暮らし用に借りている部屋はワンルームタイプの部屋で、六畳ほどの広さの部屋の隅に備え付けのキッチンがあり、男には少々狭すぎるがユニットバスも一応は完備されている。
 しかし、このスペースで男二人で暮らすのはどう考えても無理があるだろう。早急に部屋を探して……その時、部屋の隅にいつも畳んである布団が二組になっていることに気がついた。
「耕平、ごめん。すぐ部屋探すからさ」
 それにしてもいつか潮時が来ると思っていたけど、こんなに早く来るとは思わなかった。
「いや、構わんよ。ゆっくり探しな。ついでに新しいパートナーも」
 耕平は部屋に戻ると直ぐにキッチンに立ち、何やらごそごそやっている。
「耕平、料理出来んの?」
「一応な。極貧だから自炊のが食費が浮くし」
 テレビ画面の隅の数字が示す時刻は午後三時すぎ。そろそろ校長が『あとは若い二人で……』なんてやってる頃か。
「拓海は?」
「ん?」
「料理」
「……あいつがやってくれるように見える?」
「見えんな。あ……もしかして掃除や洗濯もお前が?」
「まあな」
 実は今日が例のお見合いの日らしく、佐川は朝からおそらくはお見合い会場であるどっかに出掛けている。
「拓海ってそこらの女子より美人だしさ。お前、いい嫁さんになれるよ」
「そりゃどうも」
 なりたかった相手は絶賛お見合い中だがなと心の中で苦々しく毒づきながら、俺は食卓がわりの掛け布団を取っ払っただけの火燵のテーブルの前に座った。

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