骸髑




















膝の上に頭を乗せて、見た目に反して意外と柔らかな髪を撫でる。呼吸に合わせて滑らかに動く肩を感じて、暖かい体温に浸る。所謂、膝枕。
クロームは骸を甘やかすのが大好きだった。出会ったばかりの頃から見れば考えもつかない心境だけれど、骸を見るとどうしてか甘やかして可愛がってやらねばならない気持ちになってしまうのだ。
拾ってきた段ボールの猫を見るのに似ているかもしれないと思った。可哀相で可哀相で、だから今までの欠落した部分を自分が埋めてあげたくなってしまうような、そういう偽善ぶった感情なのかもしれない。もしかしたらこういうのを世の中では愛っていうのかもしれない。そこまで考えて背筋が痒いような感じになった。

こんなくだらないことを考えてしまうのも、この骸が黙ってしまったことにあった。さっきまであんなにお喋りだったのに、骸様、どうしたんだろう。そっと髪を払って顔を見た。見事に眠っていた。いつも朝起こす時に見つける眉間の皺は一つもなくて、薄く唇が開いているから普段の寝顔よりずっとずっと幼く見える。これが骸様に抜けてる部分かな。そう考えてさっきの思考が帰ってきてまたクロームは背筋がぞわぞわする感覚に襲われた。
眠るならベッドの方がいいと思う。栄養不足の硬い膝枕よりふかふかの枕に頭を埋める方がいい夢を見れるに決まっている。自分一人では力が無くて運べないから誰か呼んでこようと、クロームは骸の頭を起こさないようにそっと膝から下ろした。ん、と声がして起こしてしまったかと驚いたけど見ればやっぱりまだ眠っていた。安心して立ち上がる。
少し、足が痺れていた。犬か千種か、いなかったらボンゴレの誰か、そう考えながら歩きだそうとして、足にひやりと冷たいものが触れたので思わず立ち止まってしまう。


「骸様…?」


病気なんじゃないかと思うくらい真っ白い腕が骸から真っ直ぐに伸びている。ひやりとしたものの正体は骸の指先だった。女の自分より、冷たい。クロームはそう思った。今度体が温まるようなご飯を作ってあげよう。辛いものはあんまり得意じゃないみたいだから、生姜とか葱とか、みんなでお鍋にしようかな。昔ボス達とやったの楽しかったし。
中身は、とあれこれ考えを巡らす前に骸が小さな声で「ここにいて」と言った。もしかしたら語尾に「ください」なんて丁寧語がついたかもしれない。クロームには前半部分しか聞こえなかった。そのお陰で骸の寝顔は更に幼いものに見えた。
思わず小さな笑いが零れる。自分より二つ三つ年上の骸がどうしようもなく可愛い。クロームは骸を甘やかすのが大好きだった。出会ったばかりの頃から見れば考えもつかない心境だけれど、骸を見るとどうしてか甘やかして可愛がってやらねばならない気持ちになってしまうのだ。
だから立ち上がって中途半端な血流に痺れる足を庇いながらもう一度腰を下ろした。骸の頭を撫でながら夕食の献立を考えることにした。




















由吉様へ

20110116.
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