綱髑














こんばんは!
今夜も始まりました、沢田綱吉のツナ缶27時
パーソナリティは沢田綱吉と

三浦ハルでお送りしまーす!

12月5日27時の今、皆様いかがお過ごしでしょうか?









夜中、午前3時にラジオをつけてこのチャンネルに合わせるのが私の日課になっていた。
午前3時なんて変な時間にやっているわりにリスナーの多いこの番組は私のお気に入りで、実を言うと初恋の人がパーソナリティを務めていると知って聞きはじめたものだった。











えー、それでは本日最初のお便りいってみましょう!

ラジオネーム南の島からこんにちはさんからのお便りです
いいですねぇ、南の島

ハル、沖縄に行きたいです!

あー、沖縄
高校の修学旅行で行ったなあ

そうなんですか?

ハルさんは修学旅行でどこ行ったの?

高校ではオーストラリアでしたねー

オーストラリア……………はい、じゃあお便りお願いします!

ではいきますよー
『ツナさん、ハルさん、こんばんは!』

はい、こんばんはー

『もうすぐクリスマスですが何か予定は入っていますか?』

うーん、これは痛い質問だなぁ…
ハルさんは?

ハルですか?
ハルはお友達と一緒にホテルのケーキバイキングです!

女の子だねぇ

ツナさんは何かないんですか?

んー、今のところはフリーかな








別にどうってことはないんだけど、クリスマスはフリーっていうのを聞いて安心する。
恋人、いないんだ。
そりゃあラジオで話してることだから本当だかわからないけど。











続いてのお便り、ラジオネームツナ缶大好きさんからです

お、なんだか嬉しいラジオネームですね

『ツナさん、ハルさんこんばんは』

こんばんはー

『突然ですが、お二人の好みのタイプを教えてください!』だそうですよ

ホントに突然ですね

そうですねー
ハルのタイプは頼りがいがあって優しくて男らしくて背が高い人です!

結構あるんだね

女の子じゃこれぐらい普通です!
ツナさんはどうなんですか?

んー…黒髪の人かなあ

そんなのいっぱいいます!
もっとこう、具体的に

ええー?
えーっと………あ!髪が長い方が好き!

髪ばっかりですねぇ
性格的な話では?

優しい人がいいよね

やっぱり男の人も優しさを求めますか?

そりゃあ、優しくない人より優しい人のがよくない?

それもそうですね

あとは料理が上手い人がいいなー
俺の好物作ってくれたら惚れるかも

ツナさんの好物って何でしたっけ

ん?ツナ缶かな?

もう!そんなの誰でも用意出来るじゃないですか!

はははっ











黒髪で、ロングの人。
優しくて料理が上手い人。
髪は昔っから染めたりなんかしてないし、随分伸びたし、優しい、かはわからないけど料理だって練習して………………………………って何考えてるんだろう、自分。
もう彼に会うことなんてないし、向こうも私を覚えているわけないのに。

初めて会ったのは中学生の時で、私の従姉妹の彼氏の友達、とかそういう繋がりだったと思う。
従姉妹の彼氏は賢そうな人で、でもその友達はみんな一本ネジが熔けたような変わった人ばっかりだった。

そんな中で一番まともそうだったのが彼だったのだ。
年上ばっかりで怯えている私に「ごめんね、変なテンションの奴ばっかりで」と苦笑いしながら話し掛けてくれた時からきっと恋をしていた。

あれから高校に上がって、卒業するまで楽しかったな。
一つ上の彼は先に卒業してしまって私は誰よりも泣いたのだった。
第二ボタンは別の女の子が貰ってしまっていて、私は校章を貰った。
それから卒業するまでの一年間、自分の校章の代わりにもらったそれをつけていたのを思い出して胸がくすぐったくなる。













それでは、今夜最後のお便りに行きたいと思います













はっとした。
自分のつまらない思い出に浸っている内に放送は残すところあと僅かになっていた。
今回は初めて投稿してみたのに。
もしかしたらもう読まれてしまったかもしれない、選んでもらえてさえないかもしれないけど。

仕方ない、今度ネットで調べよう。
そう思って彼の声に耳を傾ける。













今夜最後はお葉書でしめたいと思います!

最近すっかりメールばっかりになってきましたからねぇ
時代が進むのは速いですね

なあにお爺さんみたいなこと言ってるんですか!
では行きますよー

はいはーい

ペンネームクローム・髑髏さんからのお便り!
クローム・髑髏、かっこいい名前ですね

え、でも女の人じゃない?

どうしてですか?

だってほら、私、とか、字綺麗だし

どうですかねー?
じゃあ読みます!
『こんばんは、ツナさん、ハルさん』

はーい、こんばんはー

『今日12月5日は私の誕生日です』















はひっ、本当ですか!?おめでとうございます!と可愛い声で祝ってくれるハルさんの声なんか耳に入らなかった。
私の投稿が採用されてる!
彼に字が綺麗と言われただけで幸せだった。
ああ、投稿してよかった。

さあ、彼はおめでとうって言ってくれるんだろうか。
わくわくしながら一層ラジオに耳を近づけた時チャイムが鳴った。

誰だろう、こんな時間に。
非常識にも程がある。






「はい?」





インターフォンのモニター越しに見えた人が彼に似ている気がしてなんだか末期だなあ、と思ったりした。







「こんばんは。出張放送、ツナ缶27時です」

「…は?」

「今夜のパーソナリティは沢田綱吉のソロです」

「っ、」






彼、だった。
何年経っても変わらないふにゃりとした笑顔。
私は部屋着なのも気にしないで玄関を飛び出した。

やっぱりそこには彼が、いた。






「久しぶり」

「え、あ、なん、で……?」

「葉書」

「?」

「ダメだよ、馬鹿正直に住所も名前も書いたら。悪用されちゃうよ」

「………それ、沢田さんが言っても、説得力、ないよ」

「ははっ、それもそうだ」







会いに来たんだ、誕生日おめでとうって言いたくて。
彼は言った。
放送、聞いてくれてたんだね。
そう言ってあの日私が恋をした苦笑いを見せた。








「今、ラジオ、は?」

「ん?ああ、あれはね、録音したやつを流してるんだ。今日は明後日の分を録音したよ」

「……そうなんだ、知らなかった」

「さて、本日の放送はこれでおしまいです」








口調がまたラジオのような物に戻った。
おしまいです、ってことは帰ってしまうんだろうか。








「お別れはこの曲でいきましょう」








「Happy birthday to you」










部屋のラジオから全く同じ台詞の後、今流行りのガールズバンドが聴こえてきた。
目の前では彼が私のために歌っていた。
夜中だから、静かに、とかそんな常識も浮かばない程私は感動していた。









「Happy birthday to you」

「Happy birthday to you」

「Happy birthday………」


「………And I love you」


「Happy birthday to you」












おめでとう!
彼が顔を真っ赤にして笑った。
私は今日その笑顔に二回目の恋をした。




































クローム誕生日おめでとう^^
番組名とかは笑う所です。
もっと広がれ綱髑の輪……!










20101205.
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