山京
























みんなが幸せにな国に住みたい、と人はよく言うし勿論それは俺も考えたことがある。みんなが幸せな国ならば俺もきっと幸せだろうと、そうなればきっと今よりもっと楽しいだろうと、ありもしない空想を膨らませていた。



笹川がぽつりと「みんなが不幸な国に行きたい」と言ったので俺はそんなことを思い出したのだった。みんなが幸せな国ならよく聞くが、果たしてみんなが不幸な国とはいったいどんな所だろう。


笹川は言った。
だってみんなが不幸なら、誰かの幸せを嫉まなくていいし、誰かの不幸を笑わなくていいし、みんな幸せになるために頑張るから誰かを不幸にしようなんて気は回らなくなるでしょう?きっと今はみんなが幸せだから、誰かを不幸にしようとしたり、自分の不幸に傷ついたり、他人の幸せが羨ましくなったりするんだよ。そんなの苦しいよ。

だから私、みんなが不幸な国に行きたい。そこで不幸のまま死んでしまいたい。一生幸せなんてものに触らないまま生きたい。
ねえ、山本君。私おかしい?変なの?教えてよ。



正直言うならなんだよこの電波少女って思った。きちがいなんじゃねーの、って。不幸な国に行きたいとかそういうのが言えるのは今が幸せなやつだ。不幸の中にいたら不幸になりたいなんて言わない。プールに入ってる真っ最中にプールに行きたいなんて言わないだろ。それと一緒だ。

でも流石の俺も女子に、お前おかしいよ頭変だよ、なんて言うのは憚られたので、笹川って斬新なアイデア思い付くよな、いいと思うぜそれ、なんて上っ面だけの偽善を口にした。


すると笹川は満足したようで幸せで堪らないというような笑みを顔いっぱいに広げて、でもやっぱりみんな不幸だと嫌だよね、と言った。かわいこぶりっこで偽善者な笹川が俺は大嫌いだった。俺も、みんな幸せなのがいいよな、と笑った。いい顔ばっかりする俺が俺は大嫌いだった。



さっきまでぺちゃぺちゃうるさかったのに急に黙ったのを不思議に思って笹川を見たら、笹川はそこら辺で毟ったであろう花の白い花弁を何か呟きながらぶちぶち千切っていた。命を無駄にするなよ。笹川のくせに。


全て千切り終えた笹川はぱっとこちらを向いて、やっぱり幸せな国に行きたいな、と言った。花占いで幸せが出たらしい。随分単純な頭なのでやっぱりこいつはきちがいだと思った。


























20101101.
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