髑ユニ
拝啓、日本ではたおやかな桜が見られるこの季節、いかがお過ごしでしょうか。
先日の訃音、γから聞きました。
ミルフィオーレブラックスペル、いえ、ジェッソファミリー一同、お悔やみ申し上げます。
彼はとても素晴らしい方だったと聞いていました。
一目もお会いすることなく今生の別れとなってしまったこと、大変残念に思います。
この度手紙を書いたのはただただ謝りたかった私の我が儘です。
本当ならばこのようなことは許されませんが、無理を言って、勇気を持って志願してくれた人にこれを渡すよう伝えました。
ホワイトスペルの一人ですが、私の目と心はまだ狂っていないはずですから安心してください。
まず、ミルフィオーレのNO.2として白蘭を止めることが出来なかったこと。
次にNO.2であったのに彼の最期に立ち会えなかったこと。
そして、NO.2であるがために葬儀に参列出来なかったこと。
この三つが私の考える中での最も大きな後悔です。
許してほしい、とそんな甘い考えではありません。
ただ、私は、ジェッソのユニは、このように思っていたと知っていただきたいだけなのです。
間もなく私は遠くへ行かなくてはならなくなります。
ここからずっとずっと遠くへ行きます。
どうかお願いです。
あなただけは、私のことを覚えていてください。
ありがとう。
私に出会ってくださって、ありがとうございました。
…なによ、アンタひどい顔ね。
いいわ、入んなさいな。
紅茶がいい?珈琲?
あらそう。
飲む飲まないはアンタの勝手だけど、そう青白い顔されちゃあこっちの気が滅入るのよ。
熱いものでも飲んで見た目だけでいいからマシにして頂戴。
話はそれからよ。
それで?何があったの?
まあ、あらかた見当はつくわ。
…誰か死んだでしょう。
やっぱりね、アンタ昔っから人が死んだって話を聞くとそんな顔してたもの。
ただでさえ白い顔を余計に白くして、アンタが死人みたいだわ。
ほら、飲みなさい、落ち着くから。
そう…手紙が送られてきたの。
話聞く限りは、ていうかほぼ確実に、遺書みたいなものかしら。
ねぇ、アンタまさか自分のせいだなんて思ってないでしょうね。
それはちょっと自意識過剰ってものよ。
いい?彼女が死んだのはアンタのせいじゃないの。
彼女が自分で選んだんでしょう。
そこの責任問題に首突っ込もうだなんて図々しいにも程があるわ。
…泣いてばかりいないで何か言いなさいよ。
アンタはどうしたいの。
じゃあ早く準備して、ほら、早く。
もっとしゃきっとしたらどうなの!
そんなんで墓参りなんて失礼甚だしいわよ!
アンタ彼女のこと嫌いなの?違うでしょう?
だったらもっと胸張んなさい。
情けない顔見せて心配かけたいんなら別だけど。
ありがとうって言われたんだから、もっと堂々としたらいいの。
…車出すから、早くして。
「M、ごめん」
「謝るなら最初っから来ないで頂戴」
「…わかった。次からは行かないようにする」
「嘘よ。めんどくさいアンタの相手出来るのなんかアタシぐらいしかいないんだから」
「……ありがと」
私の死を聞いたら、あなたはきっと泣くと思います。
ごめんなさい、悲しませたいわけではないんです。
ありがとう。
出会ってくださって、ありがとうございました。
お別れです。
さようなら。
20100720.