綱ツナ


















「今日の体育プールだよね。やだなぁ…」

「暑いしいいだろ」

「えー…だって泳げないし焼けるし最近太ったから水着着たくないし男子とプール半分ことかまじありえないし。あーあ、今すぐプールが爆発しないかな」

「…無理だろうな」



あーあ、やだやだ。綱吉は手に持ったプールバッグを軽く振り回しながらぼやく。ツナは「別に太くないしスタイルいいんだから気にしなくていいのに」と思った。そして男子は多分ばしばし泳げる女の子よりちょっとカナヅチ気味のが好きだろうから嫌がる必要はないと思った。なんせ本当は泳げる女子が男子の目を気にして「きゃあ、あたし泳げないのぉ」なんてわざとらしくやってるぐらいなのだから。

プール脇にある女子更衣室は既になかなかの混み具合を見せていた。きゃあきゃあと安くて古いコンクリートに声が反響する。ツナは外に比べて熱気が五割増しされているような気がした。綱吉もそう感じたらしい。ぽつりと「すごいね」と呟いた。

隅っこの空いている所に二人はプールバッグを置く。コンタクトもしていないし、幸いなことに日焼け止めを塗ってくれる相手もお互いにいたのでそんなに準備に時間はかからないだろう。ぱちん、と綱吉がブラのホックを外す。自分と同じ遺伝子を継いだはずなのに自分より何ランクも大きい胸にツナは何とも言えない空しさを味わう。残念ながらツナの胸はすかすかだ。

いや、気にしてはいけない、いつかはきっと自分も成長するはずだ、とツナは首を横に振った。不審に思った綱吉が「どうかした?」と訊く。ツナはなんでもないと曖昧に笑った。



「肩紐、捩れてる」

「え?嘘」

「ほら、」

「あ、ホントだ。ありがとう」



右肩の紐の捩れを直して日焼け止めを塗ってもらおうと渡した。SPF50のウォータープルーフ。本人達は、少なくともツナは肌が焼けることにそんなに関心がないのだが母親が毎年これを買ってくるから使わないわけにはいかなかった。

キシキシするから嫌なんだけどなあ。綱吉は自分の肩や腕の触り心地に溜息を吐く。それはツナも同じだった。



「ツナさあ、」

「ん?」

「また痩せたよね」

「そんなことない、と思う」

「嘘だ、だってほら腰とかまた細くなってまったくこの子ったらもう!」

「なっ、ちょ、やめろって!」



綱吉がツナの腰をぎゅうと掴んでそれからさわさわと撫でる。ひゅ、と息を飲んだ後、ツナは顔を真っ赤にして怒る。それが楽しくて綱吉はよくスキンシップに乗じてからかって遊んでいた。



「お、前だって」

「へ?って、うわあぁぁあっ!」

「お返しだ、この…!」

「ちょっと、ちょっと、ちょっと!ツナ!」



背中を向けていたツナは突如振り返り目の前にあった自分より何ランクも大きい胸をガッと掴んだ。ずるい。同じ遺伝子のくせに。片方は相手の腰を掴み、片方は相手の胸を掴む。そんな異様な光景が女子更衣室の隅っこで繰り広げられていたけれど、みんな自分のお喋りに夢中で気づかない。



「おーい、そこのレズレズ姉妹ー、出来たなら行くわよー」

「あ、うん、待って!今行く!」



黒川がプールに近い方の出口から声を張り上げていた。二人はじゃれあいをストップしてバスタオルを巻いてゴーグルとキャップを肩紐に挟む。「行こ」と綱吉がツナの手を引いた。更衣室を出る前にチラリと泳げないフリをする子がマスカラで睫毛を整えているのが見えた。きっとあれはウォータープルーフに違いない。そう思った。























20100601.

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