骸M
目が覚めたのは昼頃だと、携帯のディスプレイを見る前に彼女の朝からハイテンションな声によって知った。ずしり、と腹の辺りが重い。そんなに胃にもたれる物を食べただろうか、と思案してこれは中からじゃなくて外からくる重みだと気づいた。
「おはよう、骸ちゃん。起きてよ。もうお昼よ」
「………」
「ちょっと!何また寝ようとしてんのよ!ダメよ!」
「っ………朝から、うるさいです。耳にきます…」
「だから朝じゃないって言ってるでしょ!」
僕の腹を跨いで座っているM・Mはキンキンと喋る。それは別に耳障りではないけど昼であろうと起きぬけの頭には少々厳しい。う、と眉を顰れば彼女はもう!と言っておとなしく腹から下りた。そうして僕が再び布団を被って惰眠を貪ろうとするとM・Mが微かに睨んできたから渋々暖かい布団を抜け出してベッドから足を下ろす。
「はい、おはよう骸ちゃん」
「…おはようございます。今何時ですか」
「11時ちょっと過ぎかしら」
なんだ、じゃあまだもう少しぐらい寝れたじゃないか。という不満は心の中に留めておく。口にしたらいったい何を言われるかわかったものじゃない。
「ねえ、骸ちゃん。新しくできたカフェに行かない?ランチが美味しいって開店早々から評判なのよ」
「起きたばっかりの僕に出掛けろと」
「あら、寝坊するのが悪いのよ。ね、いいじゃない。自家栽培の野菜たっぷりのスープとか、骸ちゃん好きでしょう」
「仕方ないですね。いいですよ、行きましょう」
「ありがとう、大好きよ」
ちゅ、と頬に唇を当ててM・Mは化粧をするためにドレッサーのある部屋へ向かった。彼女はすっぴんは見せるくせに化粧している姿は絶対に見せたがらない。変わった女だ。いや、寧ろ女というものはみんなそうなのだろうか。世の中にはすっぴんさえ見せない女もいると聞くし。
まだ気怠い体を引きずって顔を洗うために洗面所へ向かう。コップの中に僕の青い歯ブラシと彼女の赤い歯ブラシが並んでいて妙に擽ったかった日曜日。
日曜日の朝
20100529.