強い心



「ベルトルトってさ、なんか気味悪いよねー、1人でいるし」

「わかる!しかもライナーの金魚のフンだし!」

『…あ、はは』




やめてよ、こんなみんなが居る食堂でそんな大声で言わないで。
ベルトルト、聞こえてないフリしてるだけで本当は聞こえてるんだよ?悪口言うのやめて!

…なんて言えない。もし言ったとして1人になるのが怖い、ただの臆病者。
彼女なのに…ベルトルトの彼女なのに…!




「ナマエはさ!男子の中で誰がタイプ??」

『…えっと、』

「ナマエ!ちょっといいか?」




友達の質問に戸惑っていると、ライナーがタイミング良く私を呼んでくれた。
席を立って近づくと、ライナーは機嫌が悪いように見えた。ベルトルトも悲しんでいるようだった




『…やっぱり私には無理だよ』

「いい加減にしてくれないか?俺はもう我慢の限界だ。ベルトルトの悪口を言われて平気でいる奴はいないだろう」

『…うん』

「…ねぇ、ナマエはさ、僕の悪口言われても平気で笑ってるよね?どうして?僕の事好きじゃないの?」




友達がベルトルトの悪口を言い始めたのは少し前からで、いつもライナーに呼び出される。言い返せと言われるけど、臆病だから怖くて出来ない。
いつもベルトルトは悲しく笑って「僕がちゃんとしないからいけないんだ」って言ってくれてた。大好きな彼のそんな姿は見たくないはずなのに、いつも同じ事を繰り返してしまう。…けど今日の彼は少し違った




『ベルトルトの事、好きだよ』

「…じゃあ、なんで言い返したりしてくれないの?」

『…1人になるのが、怖いから』

「そんなの友達って言える?…少し自分に甘いんじゃないの?」

『…ごめんなさい』




ベルトルトが怒るのも無理はない。私が全部悪いのだから。
自然と顔が俯く。




「…はぁ、ごめん、僕もう部屋に戻るよ。しばらくナマエの顔見たくない」

『っ!?』




勢いよく顔を上げるが、ベルトルトは席を立ってスタスタと食堂を出て行った。
どうしよう、本気で怒ってる…




「少し日が経ったらベルトルトに謝った方がいいぞ」

『…うん』




…ここのところずっと思ってるんだけど、ベルトルトはきっと勇気のある素敵な彼女を望んでいる。臆病者の私じゃダメだ。
私じゃベルトルトを笑顔にさせることなんて一生出来ないかもしれない。これも自業自得だよね




『…やっぱ今行く』

「…へ?」

『待ってー!!!』




席を立ち、食堂を出て行った彼の名前を大声で呼ぶと、周りのみんなが一斉にこっちを見た。悪口をいう友達も。けど興味がなくなったのか、それぞれの話へと戻っていった。
肝心のベルトルトは少ししてから食堂の入り口から顔を出してくれた。

よし、ちゃんと話そう




「…何?」

『その、さっきはごめんなさい!私に勇気がなかったから…』

「…ごめん、しばらく顔見たくないってさっき言ったよね?」

『うん、だから、…別れよっか』

「…え?」




目の前に立ってるベルトルトは、唖然としていた。




『ベルトルトの事、ちゃんと好き…好きだけど、このままじゃ私は貴方を笑顔になんかすることは出来ない。…から、別れる』

「なっ!ぼ、僕はそういう返事を求めてるんじゃない!!」

『ダメだよ!私といるとベルトルトは傷つくの!一緒にいちゃダメ!私に勇気が出せないと一緒にいちゃダメなの!』




ベルトルトは周りをキョロキョロ見ながらオロオロしていて、でもハッキリ私に言った。




「勝手にして!」

と…
















あれから1週間。
リアルボッチになってしまった。悪口を言っていた友達を避けているから話す事もないし、恋人ももういないから寂しい…。
休憩中、外に出るといい天気だったので、木の根元で本を読むことにした。

1人のこの時間がずっと続くのだろうか…それは寂しいな




『……』

「…隣、いいかな?」

『どうぞ』

「ありがとう」




隣に腰掛けた人を横目でチラッと見ると、そこにいたのはアルミンだった。…ちょっと期待した私はバカだ。




『どうしたの?』

「え?」

『私の隣に座るなんてさ、何かなーって思っただけだよ』

「…最近ミカサが変なんだ」

『ミカサ…?』




彼によれば、今ミカサはベルトルトにベッタリらしい。そんなバカな、彼女はエレン一筋なのに?あり得ない




「なら来て確かめてよ」

『…うん』




読んでいた本を閉じて、アルミンと一緒に現場へ向かうと、確かに頬を染めながらオロオロしてるベルトルトに無表情で正面から抱きついているミカサを見つけた。
その時、チクリと胸が痛かった…




「…どう思う?」

『アルミンってば変な子、どう思う?って聞かれてもお似合いとしか言えないよ』

「……」

『いいんじゃないかな?すごくお似合いだし、仲良さそうだし、幸せそう』

「このままでいいの?」

『良いも悪いも決めるのは私じゃない』




私はアルミンに背を向けてその場から去った。酷いものを見せてくれたものだ。こんなにベッタリとは思ってなかった。これじゃ辛いじゃないか。結構お似合いだったよ。




『やばい、もう本当に1人じゃん…ペアとか作る時どうしよ』




まぁ、サボればいっか
私1人が死んだってどうでもいいんだから…












***



「どうだったアルミン?」

「…なんか余計面倒くさくなったかも」

「ミカサ、もう離れていいぞ」

「わかった」

「…ナマエ怒ってた?」

「…僕に対しては怒っていただろうね」




そう、さっきナマエに見せたのは演技。エレンとミカサとベルトルトとライナーの演出だ。僕はナマエを連れてくる係だった。
これは、ナマエがベルトルトの所に戻ってくるっていう作戦だったけど、上手くいったとは限らないね




「…僕、今でもナマエが好きなんだ」

「それはナマエも同じだと思うよ?」

「…僕は、どうしたらいい?」

「うーん、演技なんてまどろっこしい事しないで、真っ正面からぶつかるのみかな?…ナマエもちゃんと反省してるみたいだし、許してあげればいいと思う」

「うん、アルミンありがとう!」




ベルトルトに相談されるのはこれが初めてではない。ナマエに勇気を出させる方法を相談されて、実施したところ、別のところで勇気が出てしまった彼女。
まったく、全部僕の責任じゃないか…














「隣いいかな?」

『また来たの?もの好きだね、いいよアルミ……ン…』

「アルミンじゃないけどね」

『べ、ベルトルト…』




な、なんで彼がここに…!?さっきミカサと仲良くしてたじゃん…!
え、理解できてないんだけど…




「…1人はどう?」

『…何も考えなくていいから清々するよ!』

「そっか」

『……』




そう言えば、あの日からも会話してないんだよね?…長かったな。

ベルトルトはミカサといい関係みたいだけど、仕方ないよね!!
良かったじゃん!美女で強い彼女がいて!




『…あのエレン一筋のミカサをどうやって落としたの?』

「…え?」

『どんなテクニック使ったの?』

「そ、そんな事してな…」

『お似合いだったね、良かったじゃん!私と別れて。正解だったね、ベルトルト』

「……」




急に無言になるベルトルト。
な、なんだろう…




「なんで、そんな事言うの?」

『え?だ、だって…』

「僕は今だってナマエの事が好きなのに!そんな事言わないでよ!!」

『っ!』




そう言って強く抱き締められる。
ベルトルトってこんなに温かいんだ…。なんだか、安心して涙腺が緩んじゃう…
彼の服を掴んだ。




『だ、め…』

「…何がダメなの?」

『…な、みだが…でちゃうぅ…!』

「…泣いていいよ、僕の胸の中だけ」

『っく、ごめんねっ…!ベルト、ルト…!!』

「僕も、ごめんね…」




強い人間になりたい…。彼を守れるくらいになりたい…。傷ついても挫けない心が欲しい…!!

それからベルトルトとは、前より仲良くやっています!!




『ミカサ!弟子にして下さい!!』

「…え?」

「ナマエ!?」





20150709

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