「ナマエ」 『うーん?』 「お前、近すぎじゃね?歩きにくいんだけど」 これは近い、いや近すぎるな。 今日の対人格闘(ペアではなかった)以来からずっと俺の腕に絡み付いている。コイツ、ナマエとは昔からの幼なじみだから家族的な愛情だろうと最初は思っていたが、なんか違う気がしてきた。誰かに見せつけてる様な感じ。 『…ジャンは私のだもん!』 「会話になってねぇよ。つか、さらっと恥ずい事言うなバカ!!」 『ジャンはこの世で1番可愛いね』 「…いや、そんな笑顔で言ってもこちとら全然嬉しくない」 『ど、どうして…?』 「どうしてって、男が可愛いなんて言われて嬉しいわけねぇだろ。むしろカッコいいって言われた方が俺は嬉しいね」 『なら大丈夫だ!可愛いもそうだけど、ジャンはこの世で1番カッコいいから!』 「そ、そうか?」 『うん!だから私ジャンがだーい好き!』 そうか、俺も昔からナマエの事が……って危ねぇ!その可愛い笑顔に流されるところだった!あのなぁ…だからと言って、腕を一方的に組むのはどうかと思うぜ? 「…誰か気にいらない奴でもいんのか?」 『え?』 「ナマエは昔から問題起こすと俺を巻き込むからな。これもそうなのかと思ってよ」 『うーん、まぁ当たってるかな』 「どんな奴だ?俺が懲らしめてやろうか?」 『そ、そんな事したら相手が喜んじゃうからダメ!!』 相手は余程のドMなのか…。 ドMの野郎なんて相手した事ねぇからやめとく 「次は座学だけど、俺マルコと…」 『嫌っ!私もジャンと座る!』 「…わーかったよ」 そうだ、そういえばコイツ昔から我が儘な奴だったわ。 俺がナマエを置いて遊ぼうとした時もわーわー、わーわー泣き出して大変だったぜ。 「…そんなに俺が好きか?」 『なんか言った?』 「いや、別に。…早く行くぞ!」 『うん!』 *** 「…って事だから悪いなマルコ」 「僕は全然大丈夫だけど、1度ナマエに強く言ってみたら?」 「そうしたいのは、やまやまなんだ」 「じゃあ言いなよ」 「…いいかマルコ。お前は知らないと思うけどな、1回は言った事あんだよ」 「どうなったの?」 「…すんごい怖い顔で睨まれた。あの時のナマエの目は、今でも忘れられない…」 「た、大変だったね、ジャン…」 大変どころじゃねぇ! 普段は笑顔で可愛い奴に対して俺が「鬱陶しい」と言うと性格と顔が180度変わる。殺気に包まれたオーラ…、ぱっちくりした大きい目とは考えられない鋭い目付き。あれだ!リヴァイ兵長が殺気のオーラを出した時に似てるな、うん…。 「本当に、大変だったな…」 「…おぅ、」 あれ?思い出したら涙が… 目を擦っていたら、左隣のナマエがキョロキョロしていた。 『もう、大丈夫かな…?』 「なにしてんだ?」 『…ジャンに近寄る害虫をちょっと…』 「は?ふざけんなよ、虫ごときにギャーギャー騒ぐか。女じゃねーんだから」 「…ジャン、虫の事じゃないと思う」 「は?他に何があんだよ…」 『もう!虫以外の害虫は女しかいないでしょう!?』 「…え?」 まさかコイツがずっとくっついていた理由はその害虫(女の子)から俺を守る為だったのか?…つか、そもそも俺はそんなに人気がないから害虫と呼べる人いねぇ… 『対人格闘の時、女の子とペアになって(デレデレして)るジャンを見たの』 「小声聞こえてんぞ」 『ずっと見てたら、女の子が頬を染めてたから私、ジャンが取られないか心配で心配で…!』 「ナマエ、ジャンはモノじゃないよ」 『そんなのわかってる!だけど、ジャンは誰にも渡したくない…』 その言葉と同時に、俺の腕が圧迫された。 ぎゅぅぅうと絡みつかれるのは良いとして、お前、腕に胸が当たってんだよ!! 「だってよジャン。男として答え出してやりな」 「…はぁ」 『…?』 「ナマエ、昔に約束した事知ってるか?」 『…知らない。約束したの?』 「…まぁ、俺が一方的に」 『え!?なになに?』 マルコに聞こえると恥ずかしいから、ナマエの耳元に寄って小声で話した。 「大きくなっても一緒にいようって約束した。…あとキスもした」 『へ!?いつ!?全然覚えてないんだけど…!ジャンとの思い出なら全部覚えてるのに…!!』 「覚えてるはずねぇだろ。ナマエ寝てたんだから」 『そ、そっか…』 「おう」 『そっかそっか』 「…なにニヤニヤしてんだよ気持ち悪い」 『だって、私とやる事一緒だなと思って!』 「……は?」 『私も昔、寝てるジャンにキスした事あるから!』 「…んなっ!!」 「…ちょっと、2人共うるさい」 (僕の隣で…、恥を知れよ) (わ、悪い…) (ごめんなさい…) (反省してるのか?) ((マルコが冷たい目で見てくる…)) 20140113 [prev] | [next] |