朝食の時間。私の向かいには恋人のジャンが座っている。 会話中たまにジャンの反応がなくなる時がある。それは、ミカサが移動している時だ。 『ジャン』 「………」 『聞いてる?』 「………」 『っ、ジャン聞いてる!?』 「え!?…あぁ、すまねぇ。全然聞いてなかった」 『そうだろうね。ずっとミカサ見てたし』 「み、見てねぇよ…」 『嘘つき。ジャンの彼女は私なのに…』 「俺はナマエだけだ」 いつもなら嬉しいセリフでも、今この時だけは嘘のように聞こえる。 『嘘だ』 「嘘じゃねぇ!」 『すぐ大声出すところとか怪しいよね』 「っ、俺が信じらんねぇのか!?」 『そんな事言われたって…』 「なんだよ!」 『…ミカサを、』 「…はぁ、わかった。まったくお前と飯食うと不味くなるわ」 席を立ち、おぼんを持ってどこかに行こうとする。ヤバい。頭の中ではわかっていてもモヤモヤした気持ちが抑えられない。 『に、逃げるの?』 「あ?うるせぇな。俺に話かけんな」 『…っ、』 違う…、ジャンを傷つけようとしたわけじゃない。 ただ、ミカサじゃなくて自分を見てほしかっただけ。私の我が儘な嫉妬 「…ナマエ大丈夫?」 『マルコ…』 「今のはジャンが悪いからあまり気にしないで」 『うん、ありがとう』 喧嘩したその日から、ジャンとあまり話さなくなった。信じられなかった事に対して彼に一言謝ろうと近寄ると、避けられるか無視されるかの2択だ。 もしかして私、嫌われた?確かに信じられなかった私も悪いけど、ミカサを見てたジャンも悪くない?なんで私だけ…? またモヤモヤな気持ちがのしかかる。 『ね、ねぇジャン、今日の格闘術一緒に…』 「コニー、一緒にペア組もうぜ。…って事だから無理だな」 『…っ、わかった。マルコ一緒にペア組もう?』 「…うん、いいよ」 『ありがとう』 「チッ、行くぞコニー」 「お、おう…」 ジャン…、私、そんなに心が強くないの知ってるでしょ?信じなかった私も悪いけど、そろそろ心が折れそうだよ。仲直りしたいよ。 私は去っていくジャンの背中を見つめた 『ミカサなんて見るから…』 「…ナマエ、僕の胸貸すよ?」 『…っ、ふぅ!マ、ルコぉ!』 「よしよし」 頭を撫でてくれるマルコの手はとても温かくて、最近寝不足の私はマルコの腕の中であっという間に夢の中へと入っていった。 *** 『……ん、』 まだ頭を撫でられてる。マルコ…にしては手が少し冷たい気がする。それに少し雑…でも、この感触覚えてる ジャンだ…。 『ジャン…?』 「うおっ!…びっくりさせんなよ」 『ここはどこ…?』 「…医務室だ。お腹空いてねぇか?」 『空いてる…』 上半身を起こしながら答えると、ジャンに温かいスープとパンをトレーごと渡された。 『ありがとう、いただきます…』 スープを一口すすると、体全体が温かくなってきた気がした…。 「…俺がコニーと組んだ後、マルコの腕の中で寝たんだってな」 『うん、寝不足で』 「…なんで、マルコなんだよ。なんでマルコにだけ甘えるんだよっ!!」 『え、だ、だって…』 「だってもクソもあるか!!彼氏でもねぇ奴に甘えやがって!最低女!!」 『さいっ…!?ジャンだってミカサばっかり見てる!!!』 「見てねぇつってんだろーが!!」 『知らないと思うけど見てるんだよ!!なんで見てないって言いきれるの!?私なんか眼中にないくせに…!!!ジャンのこと、信じ、たいのに…』 「ナマエ…」 私ってこんなに我が儘だったっけ?素直に「私だけを見て」って言えばいいのに…。いや、ジャンの前だと素直になれないんだろうな。自分でもわかるくらいめんどくさい女だ 『ミカサしか眼中にないくせに…!!』 「…ナマエ」 『だから私に冷たくしたり無視したり出来るんだ…!!』 「ナマエ!!」 『っ!?』 突然ジャンに両肩を掴まれた。結構強い力で、指が肩に食い込みそう… 『ジャン、痛っ…!』 「悪いが、お前から離れる気はさらさらねぇ。俺はいつだってナマエを見てる。いつだってお前のこと考えてんだよ!!」 『え…、』 「なのに信じてくれねぇバカがいるしな!俺達ってその程度だったのか!?それに、やっぱりお前マルコと近すぎなんだよバァーカ!!」 『なっ…!バ、バカって2回言わなくたっていいじゃん!…だって、ミカサの事ずっと見てたら誰だって好きなんだなって思うでしょ!?』 「俺はナマエだけなのわかるだろ!?」 『言ってくれなきゃわからない!!』 「前に言ったっつーの!!」 まずい、またあの時みたいな喧嘩をしてると仲が悪くなる一方だ…。 両肩を離してくれたと思ったらため息なんかついて、呆れてるのかな…? 「…悪かったよ」 『…え?』 「無視したりして」 『ジャン…』 「ナマエが信じてくれねぇから、ちょっとムカついただけだ…」 『うぅ…!ジャンっ、ごめんね、私ちゃんと信じるよ。信じる…』 「だから悪かったって…。泣くなよ」 『だ、だって!!…ジャンが、怖かった、から…!!』 「…よしよし」 ジャンが私の背中に腕を回し、片方の手で頭を撫でてくれている。 これは、さっきマルコが私にしてくれてた行動だ…。 『ごめ、んね…!』 「あぁ、もう平気だ」 (あぁ!ちょっとまたミカサ見てる!) (はぁ?見てねぇよ) (嘘だ!今のは絶対に見てた!!) (…はぁ、それ以上にナマエを見ればいいんだろ) (んなっ!?) 20140109 [prev] | [next] |