言われてみたい



「俺が…俺が守ってやるよ!」

「…刀外す!」




目の前で繰り広げられている、最近付き合ったカップルのやりとりを見守る私達。
無表情な顔で見ているのが多々。だけど、羨ましいと見つめるのが私とまひるちゃんだった。




「いいな〜…」

『羨ましいな〜…』

「2人とも、気を落とさないで…!これから言われるわよ!きっと!」

『いいな〜八千代さん…』

「はぁ〜…」

「え、え?」




八千代さんと私とまひるちゃんと休憩室で男性達が終わるのを待っていた。
そこで、思い出すのはさっき目に焼き付けた八千代さんと佐藤さんのやりとり。
正直羨ましすぎる…
だって相馬さんはそんな事絶対に言ってくれない。
「好き」や「愛してる」も言ってくれない、だから言ってもらえる八千代さんがとても羨ましい




「小鳥遊くんも言ってくれますかね…?」

『相馬さんも言ってくれると思いますか…?』

「い、言ってくれると思うわよ!」

「だといいですけど…」




八千代さんには悪いけど、やっぱり気が晴れない…
本当は相馬さん、私の事好きじゃないのかも。付き合うように言ったのは私で無理矢理だったし…




「おい、八千代終わったぞ」

「あ、はーい!」

「伊波さん、帰りますよ」

「う、うん!」

「名前、行くよ」

『…はーい』




店の戸締りが出来ているかちゃんと確認してから、挨拶をして帰宅路についた。




「やっぱまだ寒いね」

『…そうですね』

「どうしたの?元気ないね」

『…そんな事、ないです』

「うーそ。そんなみえみえな嘘、俺には通用しないよ?」




なんでこういう時だけ鋭いんですか…。




「話してくれないの?」

『だって…絶対笑われますもん、もしくは飽きられますもん』

「そんなの聞いてみないとわからないでしょ?」

『……』




相馬さんが歩くのをやめて、正面から向き合ってくれた。
好きだなとか、離れたくないなとか、別れるって言われるんじゃないかとか頭の中はごちゃごちゃしてる。




「言ってごらん?」

『….相馬さんは、嫌いですか?私の事…』

「…は?」




何言ってんだコイツ的な表情をしていた。怖い、私から離れていかないでください…




『…っ、やっぱり何でもないです!』

「違うよね?名前が言いたいのはそれじゃないよね?」

『っ、』

「大丈夫、ちゃんと聞くから、怖がらないで?」




真剣な表情で、真剣な瞳で見つめてくる。
何もかもお見通しなの?…すごいや、相馬さんって




『…相馬さん、私は貴方に無理矢理付き合ってもらいました。相馬さんは、私の事好きですか…?』

「…そうだね、最初は無理矢理で名前をどう懲らしめてやろうかと思ってたけど、今は違う。真面目だし、冗談にも笑ってくれるし、本当に俺の事が大好きなんだなって思ったら可愛く見えてきちゃってさ…。いつの間にか好きになってたんだよね」

『う、そ…』




相馬さんが一歩近づいて私の手に絡みついてきた。そして私の手の甲にキスを落とした。
あ、頭がついていかない…!




「俺も名前が好きだよ」

『っ、!…そ、相馬さんは、わたしの、事…守ってくれ、ますか…!?』

「あはは、それ俺に言われたいだけでしょ?」

『…は、い』




頭を縦に振ると、腰を掴まれ引き寄せられた。相馬さんとの距離が一気に縮まって体が密着する。熱い。当たってるところがだんだん熱くなってくる。
見上げると、相馬さんが色気のある表情をしていた




『(やば、い…)』

「いいよ、これからは俺が、名前を守ってあげる」

『し、ぬ…』

「名前!?ちょっ…!」




相馬さんが素敵すぎて意識をなくした私を家まで運んでくれて、起きるまでずっと看病してくれた相馬さん。
目を覚ますと、笑顔で名前を呼んでくれた。それだけで嬉しい。


私にその笑顔を守らせてくださいね








20150404

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