遠くから想う



嘘だ。誰か嘘だと言ってくれ。
こんなの、絶対信じない…
でも今の貴方は、私の知ってる白子さんじゃ、ない…




「…すまないね、名前」

『なんで、白子さん…?宙太郎は…?な、なんで牡丹さんが怪我して倒れてるの…?』

「それは俺がやったからだよ」




宙太郎が心配で、内緒で白子さんと牡丹さんの後を追ってきたら、突然白子さんが牡丹さんの胸にクナイを刺した。
その光景を見た私は、頭の中が混乱している。いつもの笑い方じゃない。私の知ってる白子さんは、どこに行ってしまったの…?




「…名前様っ!ここは、一度立ち去りましょう!」

『う、そだ…、白子さ、ん…!』

「名前様っ!!」




呆然としている私を牡丹さんが抱きかかえ、走って逃げる。
まだ頭がついていけない。白子さんをここに置いておきたくない!!




「一緒に死ね」

『しら、す…』




あの時交わした言葉も嘘なのか…。
あの時私に、好きだと言ってくれた言葉も嘘なのか…?
あの時、優しく微笑んで包み込んでくれたのも嘘なの…?
全部全部偽りの行動だったの…!?




『…っ、それでも、私は…!曇名前はっ!…貴方が、金城白子がっ、す、好きなんですっ…!!』

「…名前様っ、」

「……」




言葉を聞き流しているのか、構わず大量のクナイを投げてくる。




「…っ!」

『いや…、白子さっ…!』




ぎゅっと目を閉じて次に来る痛みを待っていたが、なかなか来ない。
ゆっくりと目を開けると、目の前には比良裏さんがいた。




『もう、生きて、いけないっ…』

「名前様!しっかりしてください!!」

「とりあえず、行くぞ」




比良裏さんは牡丹さんと私を抱きかかえると、その場を離れた。
あぁ、白子さんが離れていく…。
こんな終わり方、嫌だ




「必ず殺せ……、名前以外を…」




貴方は偽りでも、私は本気で好きでした。
きっとこれからもこの先、貴方しか愛せないでしょう。
想うだけなら、許してくれますか?




「俺だって、本気で好きだった…」




頭を撫でると眉を下げ、とても嬉しそうに笑う貴方が好きだった。
いつも隣で笑って話しかけてくれるその姿が好きだった。

曇を裏切るということは、貴方の気持ちも裏切る事になる。
俺は今、大蛇様の方がとても大事だ。名前と一緒にいる将来はとても見えそうにない。

だったら、せめて、遠くから名前の幸せを願っていてもいいだろうか?




「すまない、許してくれ…」








20150208

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