綺麗な鳥かご



「私は、こひな様の為にやって参りました!」

『お帰りください』

「…なんです?この汚らわしい雌豚は」

『貴方こそ誰ですか?汚らわしいストーカーさん』




初めて会った時から最悪だった。
こいつだけは受け入れられないと、心の底から思った。本当に底から
この、変態ストーカーめっ!!




『こひなさんに、近づかないでくれますか??』

「ふむ、それはとても難しいお願いですね。というか、無理でございます」

『本当に変態ストーカーね』

「そんな、あなたもストーカーでごさいます」

『そ、そんな事ないです!!』

「その証拠はありますか?ストーカーではないという証拠が」

『ありますよ!こひなさんの背後にぴったりとくっついてお供してますもん!!』

「それはストーカーというより、背後霊ですね」




こひなさん以外全て嫌いらしく、こひなさんが現れるとガラッと態度が変わる。




「嗚呼、こひな様!!私をぜひお嫁にもらってください…!!」

「気持ち悪いのです」

『…男が嫁とかキモッ』

「名前殿、地味に傷つきます」




そんな私は今日、こひなさんの代わりに狗神さんとお散歩です。
正直歩きにくいです、なんで私の時は人間の姿なの!?歩きにくい!!




「安心してくださいませ、貴方の他に狐殿にもこの姿でお散歩しています」

『嫌がらせの何ものでもないですね』

「こひな様以外どうでもいいので」

『ふーん、…あっ!何あれ!素敵な鳥かご!!』

「うがっ!名前殿っ…!!苦しいです!!」




とあるお店に、可愛らしい鳥かごが置いてあった。狗神さんに繋がれている首輪の紐を引っ張ってガラス越しに店内を見た。
いいなぁ…あんな素敵な鳥かごにすんでみたかったよ




「…貴方は、物の怪ですか?」

『はい!生前は空を自由に飛んでいました!!』

「…なるほど」

『…あれは、いくらするんでしょうか』

「わかりかねます」

『…でも、あんなのあっても邪魔ですよね。諦めましょう!さて、お散歩の続きしますよ』

「…苦しい」




その後は何も話さず家に帰った。









***



『ぎゃぁぁぁぁぁあ!!!』

「どうした名前!!」

『コックリさんっ!ゴキ○リが!!!!』

「っ!!?!?」

「…何事ですか、うるさいですね」




突然のゴキ○リ出現にびっくりした。
コックリさんが来てくれると、後ろに回って慌てて抱きついた。
少しして狗神さんも来てくれた。




『ゴ、ゴキ○リ…!!』

「…そんな事ですか?」

「ちょっと俺、アレ取ってくる!アレ!」




そう言ってコックリさんは台所から去って行った。逃げたな薄情者!!白髪おじいちゃんめっ!!
この際、狗神さんに助けを求めよう!




『い、狗神さんっ!!!』

「…触らないでください汚らわしい」

『そ、そう言わずに…!』

「汚らわしいです」

『…っ』




なんだか、いつもと様子が違うような…。
どうしたんでしょうか…。
あ、狗神さんもゴキ○リ嫌いとか!?仲間がいてくれましたね!!




「…汚らわしい貴方に、あの様な綺麗な鳥かごは似合いませんね」

『え…?』

「貴方はゴキ○リと同レベル…いや、以下でございます」

『…ひっ、』




あんなモノと一緒にされるなんて…しかも以下って…
あんな、死ぬ間際に目の前に現れたモノと一緒にされるなんて…!!!




『っ、ひどいです!!!!…い、狗神さんなんて大っ嫌いっ!!!!』

「…ふん」




ひどいひどいひどい!
いくらこひなさん以外どうでもいいからと言って、限度ってものがあると思う!!
嫌い!大っ嫌い!!!

家を飛びたし、ある場所へ向かった。




『…あの鳥かごは、』

((綺麗な鳥かごは似合いませんね))

『…んなのわかってるし!!』




店内を見ると、まだ鳥かごはあった。
アレを見てるととても心地がよく、心が綺麗になる様な感覚になる。
このままずっと見ていたい




『あ、鳥かごが…』




たった今購入されたのか、あの素敵な鳥かごが別の人に渡される。購入した人はその鳥かごを手にお店から出て行った…。

いいんだ。どうせ、こんな私に似合う鳥かごなんてありはしないんだから。
これでいいんだ。




『ひっぐ…』




でも、似合わないって言われたのは悔しい。どうしてそんな事まで言われなきゃいけないの?そんなの私の勝手じゃないの?




『うぅ…!な、くもんかっ…!』

「私はこひな様以外どうでもいいです」

『!?』




後ろを振り返ると、狗神さんが立っていた




『い、ぬがみ…さん?』

「故に貴方も嫌いです」

『……』

「…貴方のその泣き顔も嫌いです。その涙も」

『?』

「…貴方には、笑顔が一番似合います」

『!?』



狗神さんが言いにくそうにそう言った。
間違いなく、あの狗神さんが!慰めに来てくれたのかな??
え?酷いこと言ったのに慰めるってどういうこと?




「私は、優しさを知りません」

『はぁ…』

「今回のように貴方を傷つけてしまうかもしれません」

『……』

「まぁ、今回は狐殿に抱きついた貴方にはムカついたので仕方がないですね」

『え…』

「…そんな、私でも貴方は受け入れてくれますか?」

『……』




え、なにこれ…
もしかしてこれって告白??
嘘、こひなさんだけが好きな狗神さんが?




『…私でいいのなら、お願いします』

「…ふふ、では、成立ですね」

『……』




なに、このただのイケメン。







20150201

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