優勝してね?



『…凛が好き』

「…悪い名前、今はそれには、答えられねぇ…」

『ん、知ってる。オリンピックを目指してる凛の邪魔にはなりたくないからね。ただ言いたかっただけだから』




昔、凛と兄の間には少しすれ違いがあった。それから日が経って兄達は高校2年になり、いろいろあって兄達は凛とまた仲良くなった。
私は昔に抱いてた凛への想いが再び溢れてきて、今その想いを告げた。が、凛には届かなかった。オリンピック目指してる彼からすれば当たり前なんだけどね




『…ほら、兄さんあっちで泳いでるから行きなよ』

「あ?あ、あぁ…」

『ばいばい』




凛に背を向けて、歩いた。
後で江に文句言ってやる。うんざりする程聞いてもらうんだから

放課後の教室に戻ると、まだ日誌を書いてる江を見つけた。




『江!』

「?どうしたの名前」

『うっ…、ふぇっ…』

「え、えぇ!?なに!?なんで泣いてるの!?」

『フら、フられたぁ…!』

「え、お、お兄ちゃんに…?」




泣きながら江に抱きつく。
よしよしと頭を撫でられながらも話を続ける。江は凛の妹だから、なんかちょっと複雑なんだよな…




『フられると、やっぱり…悲しい』

「名前…ずっと昔からお兄ちゃんの事見てたもんね」

『うん…、江、私と付き合ってよ』

「無理だよ」

『兄妹にフられる私なんて…!なんて惨めなんだろう!』




ちょっと冗談を交じりながらも江から離れる。
やっと心も落ち着き、彼女の向かいに座る




「…名前なら上手くいくと思ったんだけどな…」

『…オリンピック目指してるから仕方ないよね』

「まぁ…そうなんだけどさ、これはこれ、それはそれ…じゃない?」

「おい、名前」

「『!?』」




教室の入り口から聞き慣れた声がしたので振り向くと、そこにいたのは…




『に、兄さん!?』

「は、遙先輩!?」

『お、泳いでたんじゃ…?』

「…凛が名前が泣いてるって言ってたから急いで来た」




た、確かにさっきまで泣いてたけどさ…。
凛が来てくれた方が嬉しかった。もちろん兄さんでも嬉しいけど!




「…名前、涙の跡がある。何があった、言え」

『いや、えっと…』

「(遙先輩って実はシスコンだよね…?)」

「誰だ、誰に泣かされた」

『そ、その…り、凛に告白したらフられたから…泣いてたの』




その言葉を聞いた兄さんは、目を丸くした。
と思ったら、今度は鋭い目つきになった。昔からこういう所は表情がコロコロ変わる人だ…




「凛が…名前をフった?…名前を…?」

「あれ?なんかまずいよ?」

『兄さん、凛を責めないでね?』

「なぜ俺じゃない…」

『兄さん、兄妹で付き合えるわけないじゃんバカなの?』

「なっ!俺がバカだと…?」

『うん、わりと昔から』




江にも同意を求めると、苦笑いで返された。
するとまた教室の入り口から聞きなれた声が江を呼んだ




「おい、江!帰るぞ」

「え、お兄ちゃん!?いや、帰るぞって言われても日誌終わってないし…それにお兄ちゃん寮でしょ?帰るところ違うよ?」

「…送ってやるって言ってんだよ」




凛は私達に目もくれず、江だけを見ていた。
それはそれはすごく切ないわけで、胸がぎゅうううっと締め付けられる




「それなら名前を送ってよ」

「『!?』」

「はぁ?名前にはハルがいるだろ?」

「いいから!お兄ちゃんは名前を送ってね!私は遙先輩に送ってもらうから!」

「名前は俺が…」

「遙先輩、名前がまた泣いても良いんですか?」

「…」




な、なんて良い友達を持ったのだろう!いや親友と呼ぶべきだ!ありがとう江!
凛は私をチラッと見ると、不機嫌な顔をする。なによ、別にそんな顔することないじゃん




『…いい、1人で帰る』

「えぇ!?名前!?せっかくのチャンスが…」

『ありがとね、江。でももういい!そんな不機嫌な顔されるとこっちも気分悪くなる!!』




なによ!凛が好きって告白しただけじゃん!!こんな人好きにならなきゃよかった!失礼にも程があるでしょうよ!
椅子から立ち上がり、凛の横を素通りしようと思ったけど、腕を掴まれて無理だった




「ま、まて名前!」

『…なに?腕離してよ凛』

「お前、勘違いすんなよ」

『…勘違い?』

「俺は今は答えられないって言ったけど、名前の気持ちはとっくの昔に貰ってたつもりだ!」




へ?とっくの昔っていつの話?え?貰ってたつもりって?え、昔から私の気持ち知ってたの?え?なんで?




「…あ、俺が昔凛に言った」

『おいクソ兄貴…!』

「本当は、オリンピックで優勝したら告白するつもりだったんだ」

『おい、それは一体いつになるつもりだ』

「俺だって名前が好きだ!だから、さっき告白されてすげぇ嬉しかったっていうか…」




不器用にも程がある…




『…ねぇ、凛』

「あ?」

『…オリンピックで優勝したら“告白”じゃなくて“結婚”にしない…?』

「「「なっ!?」」」




自分で言ってて恥ずかしくなってきた…。
なんか返事欲しいんだけど、こんな沈黙いらないんだけど…
あれ?まさかその沈黙は嫌だとか!?




『あ、あの…』

「ちょっ…お前さ、ほんと…可愛すぎんだろ…」

「け、結婚は認めない!!」

「名前が家族になるの!?なにそれ素敵!だから遙先輩は黙っててください!」

「おっし、名前の提案にのる。って事で、…俺と付き合ってください」

『はい!喜んで!!』




オリンピックで優勝できるといいね!
いや、絶対に優勝してもらうから!!!






2014.09.18

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