喧嘩人形と子供



『今日はー、池袋でお買い物〜』




久しぶりの買い物で、池袋をルンルン気分で歩いています。
すると突然、目の前にコンビニのゴミ箱が飛んできた。こんなこと出来るのは奴しかいないよ?




「名前ちゃぁぁあん!どこ行くのかなぁぁあ!?」

『げっ、やっぱり静雄』

「今日こそ殺すっ!!」

『そういいながら殺されてないんだけどー』

「お前が臨也みたいにちょこまか逃げるからだろーがぁぁぁあ!!」

『だって死にたくないもーん』

「死ねぇえ!!!」




静雄は近くにあるガードレールを引き抜き、私に向かって投げてきた。
それを私はヒラリとかわす




『あたってないよー!こっちだよーだ!!』




静雄をずっと見ていたから、そこに人がいたと気づかずに誰かにぶつかってしまった




『すいません!』

「…いたいよ」

『こ、子ども!?』




5歳くらいの男の子が尻もちをついていた
あっ、あの子なんだか…




「うらぁぁぁぁああ!!」




何?アイツついに壊れた?
ってかゴミ箱投げてくる!




『静雄待って!!!』




子どもがいるんだけど…!うん、私のズボンをギュッと握ってるから逃げられないね!これ!




「待てるかぁぁぁあ!!」




テメェ!!少しぐらいこっち見ろよぉぉ!
…っつか投げてきた!?
嘘でしょ!?どうしようどうしようどうしようどうしよう…!!




『し、静雄!マジでバカァァア!!!』

「なに…?(怒」

『危ないからこうしてようね?』

「うん」




私はその場に膝をつき、子供を抱き寄せる。
この子だけは守らなければ




「あ、あぁ?…こ、子どもっ!?」

『気付くの遅いっ!!』

「耳いたいよ」

『あ、ごめん、うるさかったね』

「おい、名前!!逃げろっ!!!」




は?何言ってんだアイツ…
“死ね”とか“逃げろ”とかややこしい。
そう思っていると、ゴミ箱が近くまで来ていた




『あぁ、これぐらい可愛い子どもが欲しかったな…』




そうぽつりと呟いた瞬間、ゴミ箱が頭に運悪く当たった。目の前がだんだんと真っ暗になる。
子供から手を離し、体に力が入らないので地面に倒れた。




「名前!!」




静雄……お前死ね…

静雄が駆け寄ってきたところで、私は完全に意識を手放した





















それから記憶がナイ。
目が覚めた私は、見知っている天井が目の前に見えていた




『あ…れ…?新羅とセルティの家じゃね?』

「やぁ、起きた?」

『し、新羅!?なんで私ここにいるの…?』

「静雄が連れてきたから」

『…静雄だとぉ?』

「静雄すごかったよ?あっ、良い意味でね!」

『はぁ?』

「息荒かったし、あんなに仲悪いのに名前をお姫様抱っこしてたし、しまいには自分を責めだすし」

『し、静雄が?』




まさか、そんな…。
いや、ないないない…、静雄が自分を責める?
臨也並に嫌ってる私を怪我させて自分を責める?
ナイナイナイナイ!!




「君達は本当に素直じゃないよね」

『え?』

「名前は、子どもを守ったみたいだけど」

『うん』

「なんで?」

『なんでって…』

「不思議なんだよね、いつも他人なんか見捨てる名前が“子ども”を助けるなんてね」

『……』

「その子ども、誰かに似てたんじゃない?」

『へ?』




新羅は、何を企んでるの?
そんなのどうでもよくない…?




「…静雄とか」




…たしかに私は他人を見捨てる人だ。なのに何故子どもを?
…静雄に似てた!確かに似てたけど!!そんなの、理由にはならないよね…?




『……』

「名前は昔から静雄の事好きだよね」

『はぁ!?どこが!?』

「なんだかんだ言って、静雄の近くにいる」

『そ、そんなこと…!』

「それに静雄だって、君を本当に殺そうとはしない」

『嘘だ…』

「残念ながら嘘じゃないんだよ?よくよく考えれば、静雄は君が好きなんじゃないのかな?今日の行動をよく思い出すといいよ。あ、静雄似の子どもに『こんな可愛い子どもが欲しかった』って言ったのはどこのどいつ?君でしょ?」




ペラペラと話す新羅は、まるで探偵さんの様に見えた




『私だけど…、静雄のは嘘でしょ…?』

「…認めなよ」

『……』




やっぱり、昔からコイツにだけは適わない…。
何でもお見通しってわけだ





『…そーだよ、私は静雄が昔から好きなの』

「ほらね」

『でも会っただけで喧嘩ばかりだからさ、ちゃんと話した事ないしね。静雄は私の事を“殺す”って言ってるし…まず成立しない』

「それはどうかな?」

『おかしな事を言うね君は…成立しないんだよ』

「絶対に成立するぜ?」

『!?』




し、しず…お?
いつから部屋にいたのか知らないが、そこにいたのは静雄だった。
出入口付近に立ち、壁を背もたれにしながらこちらを見ている




「後は2人で話し合いなよ?良かったね名前、これでちゃんと話せるよ」




私にそう言ってから、新羅は部屋から出ていった。
おいおい、男前過ぎるだろ新羅くんよ…。ちょっとキュンときた




『静雄…、今だったら死にます』

「はぁ?ばかかテメェ。殺すわけねぇだろ」

『いつもと違う!!』




静雄は出入口から離れ、私の近くにあった椅子へと座った。




「…お前、俺が好きだったのか?」

『ななな何い、言ってんのっ!?』

「おい、テンパり過ぎなんだけど…」

『ご、ごめん…』

「いや、俺の方がごめん。頭痛くないか?悪かった」




静雄が優しい…。
だって普段では考えられないもん、静雄に頭撫でられるって…




『今日は…、静雄すっごく優しい』

「…子ども」

『ん?』

「子どもは、名前のおかげで怪我とか無かった。ありがとな」

『ぜ、全然大丈夫!!』

「……」

『……』

「……」

『……』





沈黙。


新羅くん、やっぱりなんで2人にしたのかな?沈黙になるのは当たり前なのよ!
喧嘩しかしてこなかったからさ…、何話していいかワカラナインダケド!何話せばいいの?ねぇ!




「…俺も、名前が好きだ」

『え?』

「名前が好きだ。だから昔から殺す気はなかったし、今日だって当てるつもりは全然なかった」

『静雄…』




すると静雄が椅子から立ち上がり、ベッドに座っている私をいつも喧嘩してる時は考えられないほど宝物のように優しく抱きしめてくれた。




「その、俺と付き合って、くれますか?」

『―っ!も、もちろんです!!』

「あぁー!緊張すんなーちくしょっ!!」













‐ドアの前‐



《よかったな、新羅。うまくいったみたいだぞ》

「うん、僕とセルティみたいだ!」

《!?》







喧嘩人形と子供
(好きだよ静雄…
(俺も好きだ
(やっと伝わった


end.

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