味方でも敵でも



『いってぇ…!』




蝶左と買い物に来ていたら、突然猫みたいな顔をした奴に襲われかけ、猫爪みたいなやつで肩を損傷した。蝶左によるとアイツは糸目とかっていう黒羽の敵の仲間だという。
しかし、そいつらの顔は知らないし俺の顔も知られてないはず。なのに何故…?

あれ?蝶左が隣にいたからじゃね?つか蝶左いねぇ!!逃げてる途中にはぐれたか…!?




『ちょっと、しばらく…動けねぇわ…』

「どこだここ…。まったく、空のやつまた蹴りやがって…」

『!?誰だっ!!!』

「え?あ、いやそんな怪しいもんじゃな…君、怪我してるのか?今すぐ手当てしてやる!」




森の中に潜んで少し様子を見ていようと、居座ろうとしたところ、草むらから男がブツブツ言いながら現れた。
俺に近寄ろうとする男にその辺にあった小石を投げつけた。




『お、俺に近づくんじゃ、…ねぇーよ!!』

「いっ…!!」

『余計な事するな、次は…殺すぞ』

「…そんな事言われてもな、俺は医者だ。怪我人をほっとく事は出来ない」

『やめっ、近づくなって…っ!?』

「だいぶ酷いな」




俺の言葉に聞く耳を持たず、ズカズカと近づいてきて、隣に座ると肩の様子を見た。
な、なんなんだよコイツ、俺が怖くねぇのかよ!




『お、お前…、俺がお前にとって敵かもしれねぇんだぞ!?』

「関係ないな」

『っ…、』




それ以上は何も言えず、男のされるがままに従った。
蝶左は何してんだよ、早く来いよ…




「…よし、これで安静にしていれば大丈夫だろう。絶対安静だぞ?」

『わ、わかったよ!安静にするっつーの!』

「いい子だ」




なでなでと、まるで子供のような扱いを受けた。久しぶりだな、頭を撫でられるのは…って!




『俺を子供扱いするんじゃねぇよ!!』

「その言葉使いなんとかならないのか?」

『昔からなんだよ!なるわけねぇだろバカが!!』

「そうか。よし、そろそろ行くけど君はここで1人で大丈夫か?」

『だから子供扱いするなって!大丈夫に決まってんだろ!!』

「ははは、じゃあまたな」

『…またな、ありがとよ…』

「なんだ?ツンデレか?」

『ツ、ツンデレじゃねぇ!!さっさと行けバカ!!!』




男は笑顔でその場を去って行った。
まだ話していたかった。…なんて思うわけがない!この沈黙が少し寂しい。…なんて思うわけがない!!名前を聞いておけばよかったなんて思うわけがないんだ!!!




「名前!無事か!?」

『…蝶左の馬鹿野郎、もっと早く来やがれってんだ』

「なんだその傷、誰かにやられたのか?」

『肩は猫みたいな顔した奴にやられて、治療はさっきここを通った医者に手当てしてもらった。絶対安静だって』

「…医者?」

『あぁ、よくわかんねぇ男だった』




なぁ、医者。
俺がお前にとって敵だった場合…さっきの笑顔はもう見れなかったりするのかな?
女としては見てくれないのか?子供扱いでもいい、お前のあの笑顔がもう一度見たいんだ…





2014.09.14

- back -


[prev] | [next]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -