今日も彼は、教室で女の子を口説いている。 「いや〜、しえみちゃん!そのカチューシャかわえぇな〜」 「そ、そうかな?」 「めっちゃ似おうてる!」 『カチューシャぐらいで大袈裟な…』 私は祓魔塾で仲良くなった出雲の隣に座って頬杖をつきながら志摩廉造という変態を見ていた。 ボソッとつぶやくと、出雲がくるっとこちらを向いた。何事だ!? 「私、ああいう奴嫌い」 『そう?結構出雲とお似合いじゃない?』 「は、はぁ!?ちょっと名前!!そういう冗談やめてよ!殺るよ!?」 『え!?出雲の口から“殺る”って出ると怖いよ!!』 どうやら、出雲は本気で志摩が嫌いらしい。ただの照れ隠しかもしれないが…。 出雲から志摩へと視線を変えると、彼と目が合ってしまった。するとこちらへ向かってくる。なぜだ? 「出雲ちゃん今日もかわえぇな〜」 「うざい」 「うわ、その言葉きついわ」 「……」 出雲は完璧無視を決め込んだ! そーとーうざいのか…、ただの照れ隠しか…気持ちは本人にしかわからない事もあるからね! 「名前」 『ん?』 「お前、出雲ちゃんと並んだらブスやな」 『…はぁ!?』 「あーあ、せっしょーな〜」 な、なにこいつ…!! めっちゃ腹立つんですけどぉ…!?いきなりブスっておかしくない!?確かに出雲よりはブスだけどさ、こいつこんなキャラだったの!?!? 『ムカつく…!』 「怒ると更にブスなやっちゃな〜」 「ちょっとアンタ!」 「出雲ちゃん、君は宇宙一ですわ!」 『坊!!こいつ連れて行けや!』 坊はやれやれといった表情で志摩の襟を持って引きずって行った。 私は志摩と坊と子猫丸と一緒で、京都に住んでたの。仲良くしてたよ?昔ね、本当昔、小さい頃の話だから! その後、私東京に行ったしだから標準語なのだ!! 『…はぁ、なんでこうなった…』 「なに?名前はあいつが好きなの?」 『………うん、』 「へぇ、だと思った」 『うん、…うん?だと思ったってなに!?』 「アンタ見てて分かりやすいのよ」 表情が、と一言。 ちょっと待て待て、私はお笑い芸人じゃないぞ?そんな表情変わるの?嫌だ、知らなかったわぁ… 「…私は、逆にアンタ達の方がお似合いだと思うけど」 『う、え!?本当!?本当に言ってる!?それマジ!?』 「うるさい」 『はい…』 やった、お似合いって言われた! 志摩とお似合いって言われた!嬉しい!!ずっと片思いしてきた私を誰か褒めて!? 『ふんふ〜ん』 「鼻歌する程良い事でもなんぞおしたんか?」 『…志摩、』 「言うてみ?言うてみ?」 何こいつちゃっかり戻って来てんの? ギロリと坊を睨むと、すぐに逸らされた。なんだあいつは… 『アンタには言いたくありませーん』 「ほぉ、ブスの分際で」 『さっきからブスブスうっさい!』 「まぁ、ホンマの事やから堪忍なぁ」 『むっかつく…!!』 ツンデレなのね、ボソッとそんな声が隣から聞こえた。いやね、そんな事いってる出雲もねツンデレなのですよ?? 「ムカつく?この俺にですか?どのへんがムカつくんですかねぇ?」 『その態度がいちいちイライラさせるんですぅ!』 「へぇ、知らんかったですわ」 『わざとだろ…!!』 「「志摩!!/名前!!」」 出雲と坊が私と志摩の名前を呼ぶ。 「お前、好きな子に対しての態度をもう一度よく考えてみい!!」 「いい加減ツンデレやめたらどうなの!?見てるこっちがイライラするのよ!!」 「『…はい』」 坊が志摩に出雲が私にお説教をする。 怒らせたらこの人達はものすごく怖いんだって事を初めて知りました。怖いです 「…名前、その、…」 『その、ご、ごめんなさい…』 「いや、俺も悪かったし…」 「はい次、告白やな」 「えぇ!?ちょっ!坊!?さすがにそれはアカンて…!!!」 「アカンくない。やれ」 命令口調の坊には志摩は勝てないようで…。泣きそうな顔で私の目を見る彼。なんだか可哀想になってきたな… 「その、名前…」 『な、なんでございましょう…』 「あんな、最近好きやって気づいたんですわ…」 『そうなの?私は昔から志摩が好きなのに…』 「そうなんか…え?昔から?えぇ!?」 うるさいと坊に頭を叩かれていたけど、そんなのお構いなしかのように、私に抱きついて来た 『!?!?!?』 「ホンマやな!?ホンマなんやな!?アカンめっちゃ嬉しいわ!!」 『しししし、しま…?』 「ほな俺と付き合うてくれますか!?」 『つ、付き合う、付き合います』 「よっしゃ!」 その後冷静になった志摩は、教室で公開告白をしていたことに気づき、真っ赤な顔をして教室を出て行ってしまった。 取り残された私は、坊に偉いなと頭を撫でられ、出雲におめでとうと言われた。 なんだか、取り残された私の方が恥ずかしい…嬉し恥ずかしってやつだよね… 2014.09.13 [prev] | [next] |