お母さんの仕事



黒羽と際刃がこの世からいなくなって、天邪狐空率いる連中と共に過ごすこととなった。それで烏頭目が元気になれば良かったんだけど、私はどうも連中と溶け込めない…。

俗に言う人見知りなんだ

1人寂しく縁側で座ってる…。




「…あれ?名前、どうした?元気ないな」

『医者さん…』

「薬馬でいいぞ…」

『…別に、元気は有り余ってるんですけど…なんていうか…』

「こじゅー!名前はなー、人見知りなんだよー」




薬馬と縁側で話をしてたら、隣から烏頭目が現れた。たぶん走って来たのだろう、勢いがありすぎて私とぶつかった。
というか、近い。顔が近い!




『烏頭目…っ、』

「そうか、人見知りなんだな。まぁそのうち慣れると思うぞ?」

「だって!良かったね名前!」




その一言だけ言うと、烏頭目は何処かへ行ってしまった。え、それだけ話に来たの?
隣にいる薬馬が、ニヤニヤしながらこっちを見ていた。




『な、なんですか…?』

「いや、名前って烏頭目の事が好きなんだなって思ってさ」

『なっ!?す、好きとか!そ、そんなんじゃ…!!』

「顔によく出てる」




私って実は顔に出やすいタイプなのかも。
そんなにわかりやすいの?結構ポーカーフェイスだと思ってたのに!?
だって烏頭目には全然気づかれてないし!




「…それは、烏頭目は鈍いから」

『……』

「俺は応援してやるからな!」

『あ、ありがと』




なんだか薬馬と馴染めてきた気がする。ついでに烏頭目の事で相談できる相手にもなった…。薬馬って、面倒見のいいお母さんみたい

そしてその日の夕飯時、料理をしていた薬馬と閨ちゃんと姫さんが私達のいる部屋に顔を覗かせてきた




「烏頭目と名前!ちょっとおつかいを頼む!」

「うーん?いいよー何買うの?」

「オカズ!」

『オカズって?好きなもの買っていいの?』

「いや、好きなもの一つくらいならいいけど…、これメモに書いてある物を買ってきてくれないか?」




薬馬はメモ用紙を烏頭目に渡す。




「…なんだ、これ…」

「それを買ってきてくれ」

「え、漢字読めなっ!」

「…名前にでも読んでもらえ。じゃあ頼んだぞ」

「『はーい』」




2人で寝床を出る。
正直、烏頭目と2人きりになるのは緊張する。こんな状態は初めてだ。今まで蝶左もみなもも黒羽も際刃もいたから…




「つうかさ、外もう暗いな!」

『そ、そうだね!』

「夜は危ねえから、色々と気をつけろよ?名前は女の子なんだから!」

『っ!?き、気をつけるよ…』




い、今女の子って言ってくれた!!
女の子として見てくれてるって意味だよね!?うわ、なにそれ嬉しい…




「まぁ、いざとなったらまた守ってやるし、大丈夫か…」

『え、ありがと…』

「…俺さー、今こんな事言って名前に迷惑かけないか悩んでるんだよね」

『言っても平気だけど…?』

「そう?じゃあ言う!…なんかさ、ずっと前から名前の事考えると1日中考えてるっていうか…頭から離れないっていうの?」

『う、ずめ…?』




真剣な顔した烏頭目が私の目を見て言った




「たぶん、これってずっと前から名前の事好きなんだよ」




と…




『え、ずっとって?えぇ!?いつから!?』

「いつからかな?たぶん名前と出会ってから?だと思うけど」

『何その曖昧な…』

「それよりさ!…名前からの返事くれよーう」

『っ、私は…私も、烏頭目が好き!』




やっとの想いで吐き出したその言葉と同時に烏頭目が優しく抱きしめてきた。
突然の事に思考回路は停止する。




『…ん、えぇ?』

「大好きだよ名前ー」

『え、あ、うん私も…』




そんな甘々ムードを数分後に終わらせて、薬馬に頼まれていた買い物を済ませ、帰り道は烏頭目と手を繋いで寝床へと戻った。
帰って来た時、みんなからは「おめでとう」の一言が…

ありがとう、薬馬







20140913

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