プールサイドから、泳いでるハルちゃんの名前を呼ぶと、目の前で止まって不機嫌に返事が返ってきた 『ハルちゃん』 「ハルちゃんじゃない遙だ」 『ハールーちゃーん』 「…いい加減にしろ」 どうもハルちゃんはこの呼び方をされるのが嫌いらしい。 幼馴染の私と真琴でも…。 昔から呼んでたし、定着してるっていうか 「名前せんぱ〜い!これ少し重いので手伝ってくれませんかー?」 『ほーい!』 倉庫から江ちゃんの助けを求める声が聞こえた。私はプールから離れ、江ちゃんの元へと駆け寄った。確かに重そうな物が目の前に… 『江ちゃんそっち持ってね?絶対離さないでね?』 「大丈夫です、離しません!」 『よいしょっと…どこに持ってくの??』 「一応部室に置く予定なので、部室でお願いします」 「…俺が持つ」 いつの間にか江ちゃんの隣にハルちゃんが立っていた。さっきまでプールに入ってたから髪も体も濡れている 「遙先輩!?」 『ハルちゃん?』 「…江は別の事をしろ」 「は、はい!」 ハルちゃんと交代した江ちゃんは、倉庫へと戻って行った。 部室へ向かう途中何も話すことはなく、ただただ沈黙が続いた。しかし部室に着いて荷物を置いた時、ハルちゃんがその沈黙を破った 「…名前、ハルちゃんはやめろ」 『…なんで?』 「お前に呼ばれたくない」 『…それって、苗字で…?』 「お前にはちゃんと名前で呼んでほしい」 『えっ?』 ハルちゃんがじっと私の目を見てくる。 え?なに?なんでそんな見てくるの? 「遙って呼べ」 『ハ、ハルちゃん!?』 「違う遙だ」 『…っ、ハルちゃ…』 だんだんと迫ってくるハルちゃんに耐えられなくて、ギュッと目を閉じると、右耳のすぐ近くでハルちゃんの呼吸が聞こえる。 近いんだ…すぐ横にいるんだ…! ゆっくり目を開けると、ハルちゃんの綺麗な鎖骨が目の前にあった。これって、肘ドンってやつだよ、ね? うわ、ドキドキ、する…!いい匂いが、するよ…!! 「遙だ」 『ハ、ハルちゃ…っ』 「…呼べないのか?」 『は、はる、かっ…!』 「名前、やればできるな」 『〜っ!』 「その調子でこれからも頼む」 『は、はい…』 そう言いながら口角を上げて離れていく貴方はすごく綺麗でかっこよかった。 なんて、言えないけどね、恥ずかしくて。 『ハルちゃん、帰ろ…』 「…またさっきの、やられたいのか?」 『う、うぐっ!』 「え?え?さっきのってー!?」 20140528 [prev] | [next] |