「ハル、ボーっと歩いてたら電柱にぶつかっちゃうよ?」 「…あぁ」 「考えごと…、凛の事で考えてたりする?」 「…よくわかるな」 「まぁね」 「あ、ハルちゃーん!まこちゃーん!名前ちゃーん!おはよー!!」 『「「おはよう」」』 「遙先輩!真琴先輩!名前先輩!おはようございます!」 『「「おはよう」」』 毎朝同じ道を通って学校に通う。私は無口だったけど。 いつも校門で後輩の渚と怜に会う。男の子ってみんな仲良しだよね。 「…ねぇ、まこちゃん」 「どうしたの?渚」 「…んー、あのさ、高校生にもなって男女が手を繋ぐのはどうかと思うんだけど。恋人じゃないのに」 私と真琴以外の人達は、目線を私達の間にある手に向けた。 確かに朝から繋いでるよ?でもね、これ小学生の頃からか毎日してて、日常になってるんだ。今更言われても…みたいな? それに、私は真琴が好きだからいい 「え、そ、そうかな…?」 「おかしいよ!ぜーったいにおかしい!!」 「そっか…」 『…え?』 今まで周りに何を言われても「仲良い印だよ」って言って離さなかった真琴が、渚に言われただけで私の手を離した。 …なんで離すの? 「名前は恥ずかしかった…?」 『…別に』 「そーだよ!やっぱ恋人じゃないのに繋ぐなんて僕はおかしいと思うんだよね。ねぇ、怜ちゃん!」 「え?あ、はい」 「…俺も、思った」 『…じゃあ、もう繋がない』 みんなにあーだこーだ言われ、ムカっときた私は真琴と手を繋がないことを宣言した。誰にも聞こえない小さい声で。 ふと真琴の顔を見たら、悲しそうな顔をしていた。 …なんで真琴がそんな顔するの? 『真琴、遙、おはよう』 「あ、名前おはよう」 「…おはよう」 玄関を出るとすでに真琴と遙は待ってくれていた。いつものこと。 私は無意識に手を繋ごうとしたけど、真琴がサッと手を離した。あ、そっか、私昨日宣言したんだっけ。忘れてた。 だからってそんなあからさまに避けてます!みたいな行動する? 『ごめん、忘れてた』 「あ、俺も、ごめん…」 もしかして真琴は…私と手を繋いでいた事が恥ずかしかったのかもしれない。仲良い印ってのは嘘だったのかも。 気にしないで普通に行こうって思ってたんだけど、真琴と遙の歩くスピードがいつもより速い気がする。このままだと学校に着く頃には息が上がってるかも。 いいや、自分のスピードで歩こう。ちょうど私に気づいてないみたいだし。 …たぶん今まで手を繋いでいたから私の歩くスピードに合わせてくれてたのかな?遙も真琴のスピードに合わせてるし。 どんどん距離が広まっていく…。 真琴達を見れなくて地面を見つめながら歩く。どうして何もかも歪んで見えるの?…鼻の奥が熱い。 真琴と手を繋いでないまま登校なんて初めてかも。手を繋いでないだけでこんなになるなんて… 『…っ、』 「っ名前!?」 『!?』 声を殺して泣いていると、真琴が私の名前を大声で呼んだ。驚いて肩が揺れる。 でも上なんて向けない、こんなんでいちいち泣いてるってバレるの嫌だ… 「先に行ってごめんね…!」 『…べ、つに』 「…顔、上げてよ」 『…いやだ』 「…ねぇ、もしかして泣いてる?名前は昔から泣き虫だもんね」 『な、泣き虫なんかじゃない!!』 「ほら、泣いてる」 『…あ』 まんまと罠にはまった…。 顔を上げた私が悪いんだけどさ 「ごめんね、ワザとじゃないんだ。…名前の温もりがなくなって、歩幅が合わなかったんだ…。ごめん」 『真琴…』 「ん?」 『手、繋いでよ…』 「…いいの?俺で」 『今までもこれからも全部……真琴がいい。真琴じゃなきゃ、嫌だ』 「う、うん!俺も名前じゃなきゃ嫌だ!」 『…声、大きい』 「あ、ご、ごめんっ!」 真琴は優しく笑うと、私の右手をとって指を絡めてきた。 こ、これって恋人繋ぎじゃ… 「…ちゃんとした告白は、俺からさせてね?」 『…ヘヘッ』 「…名前の笑顔久しぶりに見た!」 そんなことないと思うんだけどな…。 そして私達はいつも通り手を繋いで学校へと向かったのだった。 真琴からちゃんとした告白をされるのは少し先の話… 20140306 [prev] | [next] |