君の傍



『いーざや!』




今日も仕事の帰りで池袋を歩いていると、見慣れた背中を見つけた。近づいて後ろから抱きついた




「…名前か」

『ねぇ臨也ー!どこ行くの?』

「どこでもいいでしょ?どいてくれないかな?」




どうやら、臨也は私の事を嫌ってるみたいで、瞳も態度もすごく冷たい。
私は臨也を独り占めしたいし、臨也と一緒に住んでる女の人に嫉妬するくらい大好きなのに…




「本当にどいて」

『…はーい』




仕方なく臨也から距離をとると、いきなりコンビニのゴミ箱が飛んできて、臨也にヒットした




「ぐっ…!」

『い、臨也…!』

「いぃぃぃざぁぁぁあやぁぁあくんよぉお!!池袋には2度と来るなって言わなかったっけかぁ!?」

「ホント、シズちゃんはいきなり来るから、嫌だよ」




臨也はフラフラしながらも立ち上がる。
見てもいられず近づくと彼の瞳は、獲物を見つけた動物みたいに笑っていた




「俺は、お前の顔さえ見なけりゃあ今頃平和だったってーのによぉ!!!」

『臨也…!』

「来るな」




赤い瞳が私を睨んで、そう言った。
あまりにも怖くて背中に冷や汗が出たので、2人からちょっと離れたベンチに座る事にした




「シズちゃん、あたらないよー?」

「うるせぇぇぇえ!!逃げんな!」




いいなぁ、静雄さん。
臨也をあんなに楽しくさせれるなんて…私には出来ないことだから羨ましい…
あまりの羨ましさにショックを受ける




『…はぁ、』

「あ、危ない名前!」

『え?』




臨也に会ってから1度しか名前を呼ばれてなかったので嬉しくて勢いよく顔をあげると




『ぐあ゙ぁ゙っ゙!!!』

「名前っ!!」

「なっ!」




静雄さんによって投げられた電柱が、私の腹に見事命中してしまった。そのまま電柱に強い力で押され、建物に激突した




『ヴッ!……ガハッ!!』




お腹が痛い、それに背中も痛い…。
口から血が溢れ出てくる…
私、臨也に思いも告げられぬまま死ぬの…?




「名前っ!!名前大丈夫かっ!?」

『…い……ざ………ゃ…』

「喋るなっ!!救急車呼ぶから待ってな!」

「お、おい!!」

『…………ふ、ぅ…』




静雄さんは腹にあった電柱をどかしてくれた。
臨也は私に駆け寄り、上半身だけ起こしてくれた。なんだかいつもよりすごく優しい臨也が目の前にいるよ…。気のせいかな…?




「シズちゃん…、もし名前が死んだら君の事一生許さないからね…!」

「…っ!」

『ガハッ!』

「もう少しで救急車くるから!!耐えろっ!!」

『………うぅ…』




だんだん意識が遠くなってる気がするんだけど…
やだよ、臨也を置いて死にたくない…




『い、……ざ…やぁ…』




私は力をふりしぼって、臨也の頬に触れようと手を伸ばしたら、臨也が手を握ってきた




『?』

「名前、意識が遠くなってるみたいだね…。死んだりしたら絶対に許さないからな…!」

『う…、うん……』




こうして私は、臨也の言葉を胸に残し、救急車到着と同時に意識を手放したのだった










***



『んっ…』




ここは、どこだろう…
目をあけると見慣れない天井が目の前に見える。これはきっとアレだ…
病院だ




『……いたっ、!』




体を起こそうとした時に、腹に激痛が走った。けど…別になんか、重い…?




「……スゥ…」

『い、ざや…?』

「………ンッ…」




臨也が私のお腹辺りで寝ている。
寝顔が可愛いな、なんて言ったら今度こそ確実に天国か地獄に行かされるよね




『臨也、起きて…』




私は彼の体を優しく揺らす




「…名前?」

『おはよう』

「よかった…」

『え?』

「このまま名前が死んだらどうしようって、ずっと思ってたから…」




初めて見た…
臨也の悲しそうな顔を。




『…死なないよ、死んだら臨也に恨まれちゃう』

「名前…ごめん。君をシズちゃんから守る為にあんな冷たい態度をとった」

『ううん、もう別に平気。私には臨也が傍にいれば大丈夫』

「それは俺もだよ…」

『なんで?』

「だって、俺も名前が好きで傍にいてほしいから」






20130228

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