悪童と呼ばれる男



今日は真ちゃんがお見舞いに来てくれる日だ!ワクワクするなぁ
そんな気持ちで窓の外を見つめていると病室のドアが開いた。




「よう、調子はどうだ?」

『あ、真ちゃん!調子は全然いい方だよ!』

「そうか、ならよかったな」

『いつもいつもお見舞いに来てくれてありがとね!』

「別に名前に会いたいしな、全部俺の気持ちで動いてんだ」

『真ちゃん…!』




私と真ちゃんは小さい頃からずっと一緒で、彼の偽りの姿も本当の姿も知っている。それでも私は真ちゃんが大好き!
なのに、一緒に学校に行ったのは片手で数えられる程。病院が家と言ってもいいくらいずっと病院にいる。
高校での真ちゃんを1度もみたことがない。




『あ、高校で部活入ったんでしょ?大会とか行ったの?勝った?』

「…あたりめぇだろ」

『すごい!真ちゃんカッコいいね!』




バスケの話をしたのは間違いだったかもしれない。真ちゃんの顔がみるみる歪んでいく




「……来んなよ、大会」

『…え、なんで?』

「いいから、来るな」

『…うん』




見たかったな、真ちゃんのプレイ




「…もう帰るわ」

『え?もう?』

「あぁ、またな、名前」

『あ、真ちゃん!』




真ちゃんは私の言葉を無視して病室から出て行った。
しばらくドアを見つめていると、また開いた。入って来たのは真ちゃんと同じ制服を着た男の人が3人…
な、なに?




『え、あの…』

「君は花宮真の友人?」

「うひょ!可愛いじゃん」

「俺らさ、ちょっと花宮を気に入ってなくてね〜恨みもあるんだよ。だから君で晴らさして?」

『え、』




鋭い目をした人が近づいてくると思いきや、両腕を後ろで拘束されて、口を手で塞がれた。なに、怖い、、真ちゃん!




『うぅー!』

「そんじゃあ?いただきまーす!」

『ん、んーー!!』




頭の悪そうな活発な人が、ベッドに乗って跨ってきて服を脱ぎ始めた。やばい、さすがにやばい!手は動かせないし、足ももう一人に掴まれて動かせない…!
真ちゃん真ちゃん真ちゃん真ちゃん…!!




「うっし、じゃあ俺脱いだことだし、君も脱がせちゃうね〜」

『んー!!んんー!!!』

「はい、抵抗しない抵抗しない」




一つ一つボタンが外されていく




「うわ、最高〜」

『ふぅ、ひっく…』

「あれ、泣いてんの?まぁいいや、胸デカくね?何カップ?Eくらい?F?」

『んー!んんん!んー!』




なんで私がこんな目に…!病人に手を出すとかこの人達頭おかしいよ!




「おい」

「あ?…うがっ!!!!」

「……」




ボタンを外していた人が急に視界から消えた。歪んだ視界で見えたのは、先ほどそこにいた真ちゃんだった。でもすごく怒ってる




「てめぇら、何してやがる」

「…これは、お前の恨みを晴らす為に…」

「ふはっ!…おもしれぇ事言うなぁ、だったら俺に晴らしに来いよ。そんな度胸もねぇくせに晴らすとか言ってんじゃねぇ」




決して私には見せた事がない、真ちゃんの怒った顔、声が今初めて見れた。
怖さで体が動かせない。真ちゃんはそれに気がついたのか男の人達を無視して、私の方へと歩み寄って来てくれた




「…悪い、もっと早く来ていれば」

『ひっく、真ちゃん…』

「ボタン、つけるから待ってろ」

『あ、りがと…』

「おら、てめぇら、さっさと帰れ。…明日は覚えとけよ」

「ひぃ…!!」




病室には、真ちゃんと私の2人きり。




「ごめんな、怖かったよな…」

『ひっぐ、こ、わかった…!』

「…だよな」

『でも、ま、ことちゃんが、来てくれて、嬉しかった…』




優しく抱きしめてくれる真ちゃん。私も震えながら彼の背中に腕を回す。




「…ごめんな」

『真ちゃんが、謝る必要っ、ない…』

「………」

『まこ、とちゃん…?』

「俺…本当は、お前が思うほど優しくない」

『…私の知ってる真ちゃんは優しいよ…?』

「そうじゃない、そうじゃ、ねぇんだ…」

『どういうこと?』

「大会に来てほしくないってのは、俺…ラフプレーばっかだし、悪童って言われてるし…。だから恨まれるっていうか、さっきみたいに、晴らしに来る奴がいるっていうか…」




私の知らない真ちゃんは、大会で相手選手に暴力を振るってるらしい。
いつもスラスラ言葉を放つ真ちゃんは、珍しく歯切れの悪い感じだ。




「…だから、その…俺の事は、忘れろ」

『忘れない!!』

「!?」

『なんで昔から大好きな真ちゃんを今更忘れなきゃいけないの!?今まで真ちゃんが傍に居てくれたから病院での生活もそんなに悪くなかったのに!!なのに忘れることなんて出来ない!!どんな真ちゃんでも、私は受け止める!!だって本当は優しい真ちゃんを私は知ってるから!!』

「っ、…名前、」

『だから、忘れろなんて、言わないでっ…』

「…悪い、ごめんな。」




腕に力が入る。
真ちゃんと離れたくない、その一心で。




「…何かあったらすぐ俺を呼べ」

『うん』

「すぐ駆けつけるから」

『うん!大好き真ちゃん!』

「俺もだ、名前」







2015.01.18

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