不器用なんですか!?



『日向くん、今日一緒に帰ろう?』

「…おう」




私名前は、同じクラスの日向くんと付き合っています。1週間前に彼から誰もいない教室で告白をされまして、私も好きだったので返事を返しました。
本当に嬉しかったなぁ




『あ、日向くん部活って次いつあるの?』

「明日かな」

『そっか、やっぱ見に行ってもいい?』

「ダメ」

『えー、なんで?』

「ダメなもんはダメだ」

『ケチ』

「るせぇ」




しかし日向くんはバスケ部に入っており(しかもキャプテン!)毎日が忙しいのです。だからこうやってたまにしか一緒に帰れないんです…。わかっていてもなかなか寂しいもんです。
部活を見に行きたいって行っても、絶対にダメだって言われる。何がそんなにダメなんだろう…、汗臭いからとか?そんなの全然気にしないのに




『……』

「……」

『駅まで送ってくれてありがとう』

「おー」

『じゃあ日向くん、また明日ね!気をつけて帰るんだよー』

「おう、またな」




私は電車通学だから日向くんと帰る時はいつも駅の前でお別れ。歩きっていいなぁ…電車通学なんて嫌だよ。
そう思っているうちに日向くんは私に背を向けて寂しがりもせず帰って行った。


今、思うんだけど…




『日向くんって、本当に私の事好きなのかな??』




でも、好きじゃなかったら告白なんてしてこないよね?
だから、大丈夫だよ














***



『……』

「おーい監督ー!」

「何よ日向くんうるさいわね!」

「ちょっとこの問題教えてほしいんだけど…」

「はぁ、どこ?」

「ここ」




前の方で日向くんが椅子を持ってきて相田さんの隣に椅子を置いて、そこに座る光景を1番後ろからみている私。
肩と肩が触れそうなくらい近いな…羨ましい。私と帰る時あんなに近くないから。

…って相田さんに嫉妬って馬鹿みたい。前からあんな感じだったじゃん!




「おーリコー」

「今度は鉄平…何?」

「ちょっと部活の事で…て、日向とリコ近いな〜。恋人みたいだ」

「「バカ」」




確かに周りからみたら恋人だよね!日向くんの恋人は、本当は私なんだよー
ってみんなに言えたらどんなに楽か…。部活に集中したいからみんなに恋人だって事は隠そうって言われたし、あっちから告白してきたくせにさ。




「名前〜、今日こそデートしようよー」

『…しないってば』

「なになに?彼氏いんの?」

『…いないけど、』

「じゃあいいじゃん、よくね?」




こいつ、目の前でニコニコしてる奴は学校一チャラい奴みたいで、何故か目をつけられた。それから毎日デートに誘ってくる、しつこい。
彼氏いるって言えたらな…諦めてくれるかも




「あ、名前〜どこいくの?」

『トイレです。ついてこないで下さい』

「俺もいくいくー」




し・つ・こ・い!!















***



今日も一緒に帰ってるけど、私には素っ気ない日向くん。近寄ってくれない日向くん。目を合わせてくれない日向くん、自分、そんなに魅力がないんですかね?




『……』

「……」




君は、今何を思ってる?
本当は賭けの罰ゲームとか?
本当は私の事どうでもいい?
ねぇ、本当に私の事好き…?




『ひゅう…』
「あれ?日向か?」

「…木吉?と、監督…」

「あれ?…苗字さん?」

『あ…』




日向くんと俯きながら帰っていると、前から木吉くんと相田さんとバッタリ出会った。最悪だ…バレた…!




「え?なんで2人?あ、まさか付き合ってるの!?」

「日向にも、ついに彼女が!」

「ち、ちがっ…!」

「苗字さん!頑張ってね!」

『え…』

「けどね日向くん、彼女ができたからって部活で浮かれないで…」

「ちげぇって言ってんだろ!?こいつは、ただの友達だっ!!!」




…そんな大声で否定しなくてもいいじゃん




「な、なぁ?苗字…」

『う、うん!そう!ただの友達なんです』

「そうなんだ…。なんか、ごめんなさいね苗字さん…」

「勘違いして、すまん」

『いやいや、全然大丈夫ですって〜』

「……」




なに、その安心したような表情…
ムカつく、すごいムカつく…!!




『じゃあ、私電車なんで先に帰りますね!またね!みんな!』

「おう」

「またな苗字さん」

「またね〜」




日向くんなんて、もう知らない!!
















***



「ねぇ、名前〜!今日空いてるのー?」

『…しつこい』

「かーわい〜、俺さ、本当に名前が好きなんだよねー!だから、デートしよ?」




また目の前でニコニコと…




『…いいよ、一回だけね』

「本当!?やったー!名前とデート!!」

『教室で騒がないで、うるさい』




…日向くんがこっち見てる。けど、もう関係ないし。少しずつ日向くんへの気持ちを無くさなきゃ




「名前好き〜」

『ちょ、抱きつかないでよ。苦しいから…』

「もうちょっと!ぎゅー!」

「おい」

『「?」』




頭上からドスのきいた声が聞こえた。
た、助かった…




「何、お前ー」

「こいつから離れろよ」

『ひゅ、日向くん…』

「はぁ?お前に関係ないじゃん。なー名前?」

「……」

『…うん、だってただの友達だもん』

「!?」

「ほーら、あっち行けよ」




少しばかりの仕返しだもんね。
舌打ちして教室出て行ったけど、なんで舌打ちされなきゃならないの?私悪くないもん、悪いのは昨日の日向くんじゃない…








「日向くん」

「…監督か、」

「屋上なんて似合わないわね」

「るせぇ」

「ねぇ、本当は苗字さんと付き合ってるんでしょ?」

「なっ!?」

「昨日、日向くんがただの友達だって叫んだ時、彼女すごく悲しい顔してたわよ?笑顔もイマイチだったしね。なんで隠そうとするの」

「…は、恥ずかしいんだよ」

「あんたね、自分の気持ちばっかじゃない。私と日向くんが話すとき彼女の顔見たことある?本音を聞いたことある?好きだってちゃんと言ったことある?彼女の気持ち考えた事あるの?」

「……」

「彼女本当は、彼氏いるって言いたいのよ?その一言が言えれば、あのチャラい奴追い払えるのよ?恥ずかしいかなんだか知らないけど、告白したなら少しは話を聞いてあげて、守ったらどうなの?」

「…っ、」

「…もう少し周りをみたら?」

「悪い…」

「あーはいはい、その言葉は彼女にね!」














***



「どこ行く?」

『どこでも』

「じゃあホテル!」




この人バカなんじゃないの?高校生がホテルに入れるわけないじゃん。




「ねぇ、ホテルがいい〜」

『…無理』

「なんでよ」

『だって…』

「彼女だからだよ」

『「?」』




また頭上からドスのきいた声が…




「またお前かよ…」

「俺の彼女なんだよ。気安く手ェだしてんじゃねぇぞ」

「…え?」

『…えっ、』

「だからデートは無しだ」

「え?名前彼氏いないって言ったじゃん。嘘ついてたの?…マジあり得ねぇー!」

『そ、れは…』

「それは俺のせいだ、悪い」

「…どっちにしろムカつく。はぁ、損したわ」



しつこく付きまとっていた男は、私たちの前から去って行った。損したって酷すぎる…




『…どうしたの?日向くん、今日はいつもと違うね』

「…なぁ、いつもの俺ってどんな感じ?」

『…うーんと、告白してきたくせになんで隠すのかな?とか本当に私の事好きなのかな?って思うくらい態度が素っ気なかったり』

「…ごめん」

『本当にどうしたの?』

「俺、もう名前と付き合ってるの隠すのやめる!」

『え!?』

「…なんだよ」

『いや、本当に、どうしたんだろうって…何があったのかなって…』

「…泣かせて悪かった」

『な、泣いてなんかないし!』

「嘘つけ、ないてんだろーが。今」




そう言って、親指でいつの間にか出ていた涙を拭ってくれた。




『…バカ、寂しかったんだから』

「そうか、これからはたくさん構ってやるから安心しろ。寂しくねぇぞ」

『…ふふ、好き!大好き!』

「なっ!?お前!公共の場で…!!」




それでも、私の頬に触れている手を離そうとはしない日向くんを愛おしく思えた。







2015.01.14

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