離れていった水色



「名前さん、僕は貴方と同じ高校に行くの辞めます…」

『…そっか』

「本当は離れたくないんです。でも、キセキのみんなを正しくしたいと思っています」

『いいんじゃないかな?頑張りなよ?』

「…はい!ありがとうございます!頑張ります!」




これは中学三年生の頃の話。
テツヤは本当に私と同じ高校には入らなかった。確か誠凛高校とか言ってたかも。なんでも新設校だとか

高校に入学してから4ヶ月経った今、テツヤからの連絡は1度もない。きっと部活とかで忙しいんだろうな…。でも彼女には一言くらいあってもいいと思うんだけどね。




『好きじゃなくなった、とか?』




まさか、そんなことあり得ない!別れたい時はちゃんと言ってくれる人だと私は思ってる。




『誠凛、行ってみようかな…』




こうして、私は次の日学校が終わったら誠凛に行こうと決意した。連絡なんてしない、無許可で行く!











***



…と来たものの、何処に体育館あるの?というか周りの人達が見てくる。違う高校の人がいたら当たり前なんだろうけど。あ、体育館ってあそこかな?




「おい火神!少し足に負担かけ過ぎだ!」

「す、すいませんっす!キャプテン!」




おぉ…これが男バスか!じゃなくて、テツヤ探しに来たんだよ、私は。
えぇっと、テツヤは…あ!いた!




「君、こんなところで何してんの??」

『!?』

「あ、そんなに驚かないで!俺は2年の小金井慎二!君は、ここの学校じゃないみたいだね。誰か探してるとか?」

『(優しい人なのかな…?)私は苗字名前です。その、黒子テツヤに会いに来ました…』

「そっか!ちょっと待ってて〜」




小金井さんは、体育館に入ると大声でテツヤを呼んでくれた。テツヤがバスケの練習を中断し小金井さんに近寄ると、久しぶりにそのクリクリとした瞳で私を見てくれた。




「名前さん…!?」

『久しぶりだね、テツヤ』

「どうして、ここに…?」

『だって、テツヤってば高校に入学してから1度も連絡くれないんだもん』

「…すみません」

『元気にやってるならいいよ、じゃあまたね』

「え?もう帰るんですか…?」

『うん、テツヤ見たかっただけだから』




嘘です。本当はテツヤとずっと一緒にいたい。彼はバスケで忙しい、なのに更に高校が別々だとなると、なかなか会えない。そんなの寂しいじゃん
でも、我が儘は言ってられないもんね…




「せ、せっかくなので!…見ていきません、か?」

『え?いいの…?』

「はい」

『じゃあ、お言葉に甘えて…』




こちらです。なんていいながら私をエスコートしてくれるテツヤ。本当に久しぶりで少し緊張するな…。
体育館に入ると、他の部員さんがこちらに目を向けてくる




『テ、テツヤ…』

「大丈夫です。みんな僕の仲間で優しい人ばかりですから」




微笑んでそう言ったテツヤは、中学で青峰と仲良くなった頃のような微笑みだった。
テツヤにとって大切な仲間なんだろうな




「黒子、少し練習に付き合ってくれねぇか?」

「僕弱いですよ?」

「関係ねーよ!早くしろって」

「じゃあ名前さん、ベンチで見てて下さい。少し練習してきます」

『うん、頑張って!』




あの赤髪の男の子、少し青峰くんに似てるな…。眉毛変だったけど…

久しぶりに見たテツヤの姿はそれはそれはもうかっこよかった。勇気出して来て良かったな




「名前っちー」

『うわぁぁぁぁあ!!』

「久しぶりっス!」

『き、きせぇ…?』




ベンチに座ってテツヤの姿を見ていたら、背後からスッと手が出てきて強く抱きしめられた。驚いた私は女性として可愛くない悲鳴が出てしまった。くそ、黄瀬のヤツ…!




「黄瀬くん…」

「黒子っちー!」

『いたたたた、黄瀬痛い!腕離して!ついでに周りの視線もいたいっ!』

「可愛いっすね!」

「黄瀬くん、名前さんから離れてください」

「黒子っちったら束縛っすか?」




束縛じゃなくても、彼氏なら普通怒ると思いますが?




『もー離してよ、テツヤ怒ったら怖いんだから!黄瀬はその相手してくれるの?』

「嫌っす」

『はい、離す』

「っす」




黄瀬がいなくなり背中がスッと軽くなった。
と思ったら今度はテツヤが前から抱きついてきた。
あ、あの…顔、テツヤの腹にあたってるんだけど、少しゴツゴツしてらっしゃいます…




「黄瀬くん、ふざけるのはやめてください」

「ほ、ほんの冗談じゃないっすかー!」

「おい黒子!そろそろ練習始めるぞ!」

「はい!それじゃあ名前さん、黄瀬くんに気をつけて見ていてくださいね」

『うん!』

「俺変質者扱いっすか〜?」












***



『それはもうテツヤったら優しくて、時に野生になるといいますか〜』

「へぇ〜!黒子くんがねぇ〜」

「ちょっ、名前さん監督、その話もう、やめてくださ…」

「悪いな黒子、練習の時試合で負けた罰だ。火神!黒子をホールドしておけ!」

「うっす!キャプテン!」

「か、火神くん…!!」




さっきの練習試合で、テツヤ率いる1年チームが負けてしまった。その罰ゲームなのか、体育館でみんなと輪になってテツヤの意外な話を聞かせているところです。私も少し恥ずかしいですが…




『それでテツヤは少し嫉妬深くて、ヤキモチ妬くんです』

「そりゃさっき見たわ」

『それから…』




あれ?思ったらあまりテツヤの事よく知らないかも…あとテツヤの意外なところってどこかな?




『ごめんなさい、もうわからないです』

「…火神くん、もう離してもらえますか?」

「あ、あぁ…」




なんか気まずい雰囲気になっちゃったかな?
でも、あんまり適当な事言ってテツヤの評判落としちゃったら悪いしね?




「名前さん、外に出ませんか?」

『うん?いいよー』

「では、みなさん。ついてこないでくださいね?絶対ですよ?」

『どうしたのテツヤー』




2人で体育館を出たあと、近くにあったベンチへと座った。
なんだかテツヤの隣に座るの久しぶりだな〜。とか思ってたらテツヤに強く抱きしめられた




『テ、テテテテテツヤ!?な、なに…!?』

「名前さん、すみません!…寂しい思いをさせましたよね?」

『うん。でも数ヶ月だけだったし、今こうしてテツヤと一緒にいるからもう大丈夫だよ』

「…名前さん、明日僕とデートしてくれませんか?」

『い、いいよ!』

「今までほったらかしにしてきた分、きっちりとお返します!」

『…うん!』









【離れていった水色】
(テツヤー私あのアイス食べたいな
(…買ってきます
(テツヤ、はいバニラシェイク
(…え?
(テツヤの好きなもの、これくらいしかわからなかったから…ごめんね?
(…ありがとうございます。大切に飲みますね!
(いや、早めに飲んでね?


20140330

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