2週間ぶりの君



最近、この私が言ってもいいのかって思うほど素敵な彼氏の黄瀬くんが、相手にしてくれない。
いや、モデルですから学校では構ってもらえないのは知ってますよ?その代わりプライベートでは構ってくれましたし。

でも最近、プライベートでも構ってくれなくなりました…。
私の事、嫌いになった…とか…?




「あ、あの、黄瀬くん?」

「ん?…あぁーなんすか?」

「最近、冷たいね…?」

「そーっすかね?普通じゃない?」

「…そうかも」




黄瀬くんが1人で席にいたから勇気出して話しかけたんだけど、二言だけ返事をするとクラスの女の子に話かけに行ってしまった。


やっぱり冷たい。
だって前は、もっと話してくれてたのに…。
何か悪い事でもしたのかな?うえ、全然わからない




「思い出したら謝ろう」




うーんと、1週間前のデートで遅刻した事を怒ってるのかな?
いや、あれは謝ったよ。うん、ちゃんと許してくれたし。




『寝坊でもしたんすかー?』
『いーよ、名前だから許してあげるっす』




じ、実はめちゃくちゃ怒ってた!?
あの笑顔の裏には怒りが潜んでたのか…




「もう一回謝ろう…」









***



「あ、黄瀬くん!」

「?…またアンタっすか?」




ア、アンタって言われたの初めてかも。
一通り学校が終わってみんなが家に帰る準備をしている中、1番に教室から出て行った黄瀬くんを鞄を持って追いかけた。




「何?」

「あの、さ、実は謝りたい事があって…ちょっとこっちに来てくれない…?」

「あ、黄瀬くんはっけーん!」

「っ!?離せっ…!」

「!?」




私がひと気のない方へと黄瀬くんを連れて行こうとして、腕を掴んだら思いっきり振り払われた。
何があったのかわからず自分の手を見つめたまま茫然としていたら、後ろから美人な女子が来て、黄瀬くんと腕を組み、一緒に去って行った。

え?…何これ。
腕を掴んだだけなのにあんな拒否られるの?私だから?
美人は腕組んでるのに振り払わなくていいの?あれ?




「な、んで…?」



やっぱり、嫌われたのか…
何か、したのかな、嫌われる様な事、言ったのかな?
全然わかんないや…









***



「……」




家に帰り、ソファーに横になって自分の手を見つめる。
一人暮らしは寂しいと思ってた。けど今日は黄瀬くんに拒否られたから余計寂しい。




「…あ、そういえば食器の洗剤きれてたから買いに行かなきゃ。ついでにお菓子も買おう」




着替えるのめんどくさかったので、スカートの下に長いジャージだけ履いてサイフを持って家を出た。




「どの洗剤が安いかなー」

「あはは、なんすかそれー」

「私もよくわかんなかったの!」

「!?」




なんか聞いたことあるような声がしたと思ったら黄瀬くんと美人さんだった。


さ・い・あ・く


神様の意地悪ー!!!
なんで!?なんでなんで!?

と、とにかく隠れなきゃ!って、コンビニに隠れる場所なんてあるわけねぇだろ!!
トイレ、は使用中ー!!!!?
もうわかった、後ろ振り向きません。




「(ど、どの洗剤にしようかなー)」

「…あれ?あの制服私達と一緒じゃない?制服にジャージって、あり得ないくらいダサいんだけどー」

「(声、めっちゃ聞こえてます…)」

「…名前?」

「!?」




もうこの洗剤でいいや!お菓子ももうこの際いらん!店員さん急いでるんです!早くレジ通してー!!あ、お釣りいただきます…




「名前っ!!」

「っ、」




ごめんなさい黄瀬くん!
今貴方の顔みたら泣きそうだから!!さらばっ!!!




「はぁ、はぁ…っ、」



なんか、このまま一生顔見れないかも









***



黄瀬くんに拒否されてから1週間。
変わった事は何もない。あるとすれば、自然消滅ってやつぐらいですかね。
悲しいなぁ…




「苗字さん、ちょっと来てくれない?」

「?うん」




教室のドア付近で私の名前が呼ばれた。
呼んだのは男子って事もあるのか、クラスのみんなが見てきた。まぁ、あの人、黄瀬くんの次にモテモテですもんね。


…えぇ!?




「あ、あの?」

「ごめん、こっちまで来てほしいんだ」



美男くんは、私の腕を掴むとひと気のない場所まで連れてきてくれた。




「突然すまない、実は、僕苗字さんが好きなんだ」

「え?」

「君を初めて見た時からずっと…」




嬉しい。
でも、今は誰とも付き合いたくないんだ。一応傷心中ですから




「嬉しいけど、ごめんなさい!今、誰とも付き合う気はなくて…」

「そっか…、分かった、ありがとう」

「私の方こそありがとう!」




笑顔で別れ、教室に帰るとクラスの女子に囲まれて何の話だったのか聞かれた。
これ、言ったらダメだと思ってたいした事ではなかったよ、と言っておいた。




「苗字さん、ちょっとおいで?」

「き、黄瀬くん?」




突然腕を掴まれて、教室を出た。
この前拒否られた腕を掴まれてる。な、何が起きるのだろう

ひと気のない廊下に着くと、黄瀬くんに両手首を掴まれた




「あのさ、あいつに告白されたでしょ?」

「な、なんで言わないとダメなの?」

「それは彼氏だから」

「…黄瀬くんは、もう彼氏じゃないよ」

「え?」

「自然消滅、したじゃん」

「してない」

「した」

「なんで?」

「だって、この2週間、今までの優しい黄瀬くん見てないもん…」

「優しくなきゃ別れるような子なの?名前は」

「違うよ!!…少なくとも、私の心はボロボロだよ」

「…なんで?」

「だって、黄瀬くんが私を拒否したから」

「え?」

「自覚してなかったんだ…。あの時謝りたい事があるって腕掴んだ時だよ」

「あ、あれは!」

「言い訳なんて聞きたくない!いやだ!」

「お願い聞いて!」

「……」




なんで嫌いな人に泣きそうな顔するんだろう…?
腕に力がなくなったのか、だらんと重力に従った。




「あの時、俺はついて行こうとしたっす!けど、女の子が名前の後ろから現れて見つかったら危ないと思ってつい…」

「何が危ないの?私と付き合ってる事がバレたら恥ずかしいって?」

「違う!!名前が、俺のファンの子に傷つかれないようにって意味!」

「…え?」

「あの時は本当にごめん…!ちゃんと謝ろうとしたんすよ?でも、名前呼んでも無視したから…」

「コンビニの…?」

「そうっす…。それに、この1週間だってずっと謝る機会を狙ってた。俺はヘタレなのか、いざ謝ろうとしても足が動かなくて、別れたいって、言われたら、どうしようって、ずっと後悔してた…!」

「黄瀬くん、泣かないで…」




私は黄瀬くんの頬に流れている涙を拭ってあげようと、片方の手で頬を触る。




「俺が、名前を、傷つけた…っ、」

「私も、無視してごめんなさい。嫌われたかと思ったから…」

「そんな事、ないっすよぉ…!」

「うん、ごめんね」

「…あいつの、告白、OKしたんすか…?」

「してません。私は黄瀬くんだけだよ」

「えへへ、嬉しいっす」




涙でぐちゃぐちゃな笑顔、可愛いな。
これは、仲直りって事ですよね…?







【2週間ぶりの君】
(黄瀬くん、デートの日の後冷たくなったのって私が遅刻したからなんだよね?本当にごめんなさい
(え?あぁー!いや、違うっす!…その、冷たくしたら、俺の事もっといっぱい考えてくれるかなって…
(え?…そうなの?
(ごめんなさい…。でも、ちゃんと名前のこと愛してるっすよ!?
(うん、私も愛してるよ黄瀬くん!



20140216

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