嫌いなんて言わないで



「おい、さつき」




この声は確か青峰くんだったよね。桃井さんに話でもあるのかな?
まぁ、それより職員室…




「さつき!」




さっきよりも大きな声…。
無視されてるの?何か怒らせるような事を桃井さんに言ったんだ…




「無視すんじゃねぇよさつき!!」

『…え?』




突然肩を掴まれて、グイッと引っ張られた。
青峰くんと目が合う…




『………』

「…悪ぃ、人違いだった」

『!?』




か、可愛い…!!
人違いして照れてる青峰くんすごく可愛い!!
ギャップ萌えというものですね!


でも、私は桃井さんに似てないですよ…。




「後ろ姿がソックリだったから…」

『あ、いえ!気にしないでください!』

「ん、じゃあ」

『…今度は間違えないでくださいね』

「間違えるかっ!」




私の一言にツッコんでくれた後、ニヒヒと合う笑顔を向けられた。
心臓がドキンッと大きく跳ねた




『…?』




なんだろう、この気持ち…
ドキドキがとまりません










***



「お、さつきに似た奴ー」

『?』




移動教室の為、廊下を歩いていると、後ろから青峰くんの声がした。
あきらかに私を呼んでいる


あ、心臓がドキドキしだした…




『わ、私にはちゃんと名前があるんですけど…』

「ん?だってお前の名前知らねぇもん」

『…苗字名前です』

「ふ〜ん、…じゃあ名前なっ!」

『は、はい!』




青峰くんに名前を呼び捨てにされました!
なんでかな、すごく嬉しい…!




「名前友達は?1人で移動すんの?」

『友達はいないです。私、大人しい方で、友達をつくるチャンスを逃してしまいました』




でも寂しくはない。
1人は好きだし、落ち着くから




「友達できたじゃん」

『…え?』

「俺」

『………』




青峰くんと、私が友達…。
彼は優しいんですね。
私さっきから嬉しくて嬉しくてたまりません!




「だから、一緒に移動してやるよ」

『ありがとうございます』




青峰くんが笑顔でそう言ったので、私も笑顔でお礼を言った。
教室に着くと、青峰くんは「またな」と言って自分のクラスへと帰って行った。


私は昨日と今日で、青峰くんと友達になりました。
授業中ずっとニヤけていたかもしれないです…。









***



昼休み、図書室に行こうと廊下を歩いていたら、青峰くんと眼鏡をかけた糸目さんと桃井さんが階段の所で話をしていました。
そのまま素通りしようと思ったのですが、何やら私の名前が出た気がしたので、彼らから死角になる所から立ち聞きをしてしまいました…。




「あ?名前がなんだよ」

「昨日から仲ええな」

「それ思いました!どうして!?私気になるの!」

「…別によくねぇ?」

「はぁー、まさか青峰その子が好きなんや!」

「つ、ついに大ちゃんにも…!!」




あわわわ、私…これ聞いちゃ悪い話ですよね!?




「はぁ!?ち、ちげぇ!!…嫌いだ、あんなさつきに似た奴」







――――ズキンッ!



「えぇー!それ酷くなーい?…ってかその子私に似てるの?」

「まぁ」

「あちゃー、恋やないんか…」

「それに嫌いなのに仲良くするとか大ちゃん酷い!」




無意識にその場から去っていた。




『ハァ、ハァ…』




青峰くんは私が嫌い。
私は青峰くんの事、…好きになってた。
けど、それは私の勘違い




『ハァ…、わっ!いった…!』




私は、その勘違いに浮かれてただけ…。
「友達」という言葉も嘘だった…。
ニヒヒと笑った笑顔も嘘だった……。
昨日と今日の出来事も嘘だった………!




『うっく、…ふぇ…』




一瞬で地獄に叩きつけられた気分だ。
恋って恐ろしいモノですね…























「さつき!また無視か!」

『…青峰、くん』

「…やべ、また間違えた」




教室に帰ろうと、廊下を歩いていた。


人違いにまた照れてる青峰くん。
昨日のあの話を聞いてない私なら「青峰くんすごく可愛い」とか思うんだろうな




『…次からは、気をつけてね』

「…どうした?足の傷」

『え、別にたいした事じゃないので…』




それだけ言って立ち去る。
だって、嫌いって言ってたのに、一昨日とか昨日みたいには接する事できないよ…!!

けど、立ち去る事はできなかった




「…なぁ」

『なんですか?』

「…なんで悲しく笑ってんの?」




私、笑顔だけしてるつもりだったのに…。
なんで悲しくとかわかるの…?




『か、悲しくなんか…』

「言ってみろ」

『そんなのないですよ』

「言え」

『…あ、青峰くんが…』

「………」

『わ、私の事嫌いって言ってたから…!』

「…聞いてたのか?」

『ごめなさいっ…!1人で、浮かれてました!あ、青峰くんに笑顔を向けられて…、と、友達って、言ってくれた事に…』

「…悪い」




すると、青峰くんがギュッと強く抱き締めてきた。




『あ、青峰、くん…?』

「名前の事、嫌いじゃねぇから。ただ、…後ろ姿がさつきみてぇだから、そこが嫌いって意味だった…」




そうだったの…?
青峰くん、少し言葉が足らないよ…




『私の、勘違い…?』

「あぁ、超勘違い」

『よかった…』




私も青峰くんの背中に腕を回した。




「…可愛い、このまま抱き締めてていいか?」

『あ、青峰くんが、いいのなら…!!』

「ん」





嫌いなんて言わないで
(青峰くん、桃井さん嫌いなの?
(好きでもないし嫌いでもない
(そっか。…あ、み、みんな見てる…!!
(はは、今更かよ
(あ、こ、告白してませんね…!
(恥ずかしいからヤダ
(私、青峰くんから聞きたいです…
(…チッ、じゃあ俺が言ったら言えよ!
(はい!



20131028

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