お揃いの服



『おい涼太、買い物に付き合えー』

「いいっスよ!…ところで何を買うんスか?姉ちゃん」

『服だよ。涼太モデルでしょ?服に詳しいし、それに涼太がいると男に声かけられないと思って』

「それなら絶対に行くっス!!つれてって!!」

『だからついて来いって言ってんの…』




ここは黄瀬家。
どうしても欲しい服がある為、買い物に出かけたかった。
そこで、いろいろと服に詳しい弟の涼太をつれて行くことにした。



はずだけど…




『…ねぇ』

「なんスか?」

『なんか、近くない?』

「いつもの事っスよ」




一緒に来てくれた事には感謝しているが、ここは電車の中、人が混んでいるわけでもないのに距離が近すぎる。私は出入口のドアを背もたれにしているのだけど、目の前には涼太の胸板。近くね?揺れるたびにアクセサリーが顔にあたるんですけど。

顔を少し上げると、外の景色を見ている弟の顔が見える




『……』




弟は私より背が高くて、顔は整ってるし、服のセンスがカッコいい。
コイツ本当に私の弟か?って疑うくらい。




『…涼太は何か買う?』

「そっスね…、姉ちゃんとお揃いの服が欲しいっス!!」

『へいへい。付き合ってくれたお礼に買ってやる』

「マジっスか!?ありがとー姉ちゃんっ!」




うん、なかなか可愛い笑顔だ。でもね、一応電車の中なわけで、涼太が大きな声で喋ったから周りのみんなが私達を見てくるんですよ。




『涼太、これはバレた』

「へ?」

『絶対みんな、涼太の事に気づいたよ』

「え?」









***



『はぁー、可愛い服が欲しいな…』

「姉ちゃん可愛いから何でも似合うと思う」

『おちょくってんの?』

「?おちょくってないっス」




私達はあの後急いで電車を降り、息を整えてからお店へと来た。
ちなみに今いる所はレディースの場所。正直涼太を置いて行きたかったんだけど、どうしても行くって言う事聞かなかったから仕方なくつれてきた…。




『まぁいいや…。ねぇ、何の服お揃いがいいの?』

「え?俺が選んでいいんスか!?」

『うん。私より涼太の方がセンスいいから』

「了解っ!!」




そういうと、涼太は元気よく去って行った。
その間に欲しい服選んでおこう




『…バレないかしら?』









***



「姉ちゃんっ!!」

『あ、涼太』

「これなんかどうっスか!?」

『わぁ!すごい可愛い!』

「でしょ?姉ちゃんなら喜んでくれるかなって!もちろん、お揃いっスよ」




涼太の手には、私の好みの服が色違いで2着あった。




『ん、じゃあ買ってくる』

「半分出すっスよ?」

『大丈夫だよ。ありがとね涼太』

「!?…えへへ」




マジこいつ仔犬みたいだ。可愛いぞ、私の弟のくせに私より可愛いぞ。
とりあえず買いにいこう。




『これお願いします』

「こちら3着で 8,358円になります」

『あ、ちょっと足りないかも…』




お金をおろしてくるの忘れてた…どうしよう。
涼太出入口にいるけど、携帯いじっててこっち見てないし、名前を呼ぼうにも大きな声で名前呼んだらバレるよね…。
あぁ、もうどうしよう…!




「あの…」

『あの、ちょっと待っててくださ…』

「どーしたんスか!!」




…あれ?
さっきまであっちで携帯いじってなかった?
来るの速くね?ってかよく気づいたね




『あ、ごめん…、ちょっとお金が足りなくて…』

「なるほど、そういう事っスか…。あ、お姉さん!足らない分俺が出します」




だらしないお姉さんでごめんね…









***



『………』

「どうしたんスかっ?」

『…ごめん』

「あはは、気にしてないっスよ!俺の姉ちゃんだからね」

『…ありがと。私、涼太とのお揃い部屋着にする』

「なんで?」

『ずっと着てたいから。…ダメかな?』

「…っ!じ、じゃあ俺も部屋着にするっス!」

『うん、お揃いだね』

「そうっスね!」





お揃いの服
(あ、そこのお姉さんモデルは興味ありません…か?
(え?
(俺の姉に、なんか用でも?
(あ、いえ…
(よーし、帰るっスよー!
(え、でも…
(いいからいいから!

(…今の、黄瀬涼太…?



20130504

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