黄瀬なんか…



『高尾くーん!!』

「ん?あ、名前ちゃんだ、おはよー」

『おはよー、じゃなくて!大変だよ!』

「なにが?」

『今日、黄瀬くんが秀徳に来るんだって〜』

「…へぇ」




朝学校に着いて、上履きを履いて教室に行こうとした時に、名前ちゃんが俺の名前を呼んだ。そこまでは良かった。


ただ黄瀬くんは正直どうでもいい。
だいたいモデルにキャーキャー悲鳴あげてどうすんの?恋人になれるわけじゃないし…
名前ちゃん、ホントに俺の彼女だよね?目がハートになってるよ?




『それがね、緑間くんと一緒に来るんだってー』

「へぇ、真ちゃんと…」

『もうすぐ来るらしい』

「んじゃ、来る前に一緒に教室行こっか」

『へ?…やだ。黄瀬くん見たいもん』




困ったなー。
名前ちゃんが黄瀬くんなんかに目をつけられたらと思うと…うわ、絶対に嫌だ!
モデルなんかに絶対負けらんねぇな!




『あ、緑間くーん!』

「!?」




も、もう!?
心の準備が…!




「苗字、ん?高尾もいたのか、おはよう」

「はよー」

「緑間っちー?んなっ!?この子彼女っスか!?」




げっ!!
黄瀬くんかよっ…!!
しかも真ちゃんの彼女だと思ってるし。俺の彼女だとは思わねぇの…?
名前は真ちゃんといるのがお似合いなのか…?




「は?何を言っている。俺に彼女はいないのだよ」

「マジっスかー?じゃあ俺が狙っちゃおうかなー」

『き、黄瀬くんなら…』

「マ、マジっスか!?」

「なぁ」




黄瀬くんが名前ちゃんの両手を握ってイラッときて、しまいには「狙っちゃおうかなー」って名前ちゃんに言ってブッチーン。
さらに彼女の「黄瀬くんなら」の真っ赤な顔に噴火した。




「ん?なんスか…?」

「あのさー、黄瀬くんだっけー?名前ちゃんは俺の彼女だから、手は出さないでもらえるかなー?」

『高尾くん…』

「は?」

「高尾、落ち着け」




俺は真ちゃんの言葉に冷静になれば、その場にいるのが気まずくなって、とりあえず3人を置いて走って教室に逃げた。




「なんスかアレ…」

「すまん」

「いやいや、なんで緑間っちが謝るんスか…?あ、それより彼女さん遊ぼー」

『黄瀬くん、ごめんなさい…!!』

「あぁ!」

「…フられたな」

「う、うるさいっス!」









***



「…はぁ」




やっちゃった…。
名前ちゃんと真ちゃんの前で、マジ大人気ない事した…。
今思うと黄瀬くんにも悪い事しちまったな…。

これじゃまるで、




「彼氏失格、だな…」




自分の机に顔を伏せていると、突然俺の頭に温かいモノが触れてきた。
ゆっくり顔を上げると目の前には俺の頭に手を置いてる彼女がいた…




『高尾くん』

「…名前ちゃん?」

『高尾くん可愛いね』

「それ、あんまり嬉しくないかも…」




あ、名前ちゃんは、もしかして俺を追いかけて来てくれた…?




「ごめん、マジ彼氏失格だよな…」

『…ごめんね高尾くん。こんなに傷つくとは思ってなかった』

「…どゆこと?」

『高尾くんが私を彼女だって発言してくれるかなって思って今まで演技してたの…。あまり高尾くん…、周りに言ってくれないし…』

「それは聞かれたら言うけど…」

『それじゃダメなの、…それを知らない女子が「高尾くん高尾くん」って嫉妬、しちゃうんだから』




みるみる名前ちゃんの顔が真っ赤に染まっていく。つられて俺も赤くなっていくのがわかる




「ご、ごめん!」

『ううん。でも私もごめんね…』




そうだったんだ…。
名前ちゃん、俺の知らない間に嫉妬してくれてたんだ。可愛いな

よしっ!




「名前ちゃん!俺は名前で呼んでるんだからさ、俺の事も和成くん≠チて呼んでよっ!」

『え?う、うん!今すぐ呼ぶ!ありがとう和成くん』

「後はキス≠キる?」

『え、ここで…?』

「見せつけってことで、な?」

『うん、わかった!』




俺を追いかけてきてくれてありがとな。
黄瀬くんに負けない自信ついたわ





黄瀬なんか…
(名前ちゃんって黄瀬くんが好きなんだー
(ううん、好きじゃないよ?1番好きなのは和成くんだから
(あ、ありがと…

(み、緑間っちー…
(恋人だったのか…!?
(そこからっスか!?さっき高尾くんとやらが「俺の彼女」って言ってたじゃないっスかー!



20130727

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