『………』




朝からメールが来ていて、仕方なく携帯を確認するとお母さんからだった。


すごく嫌な予感がする…







from:お母さん
本題:結論


結論、出たから
離婚する事に決めました。

お父さんかお母さん
どっちについていくか早めに決めてね








朝からこんなメールが来た。

本当に離婚…するんだ
どっちにするって言われたって、私に決められるわけないじゃん。どっちも好きなのに…




『……はぁ、』







――――コンコン



「おーい、名前ちゃーん!俺もう学校行きたいんだけどぉ」

『あ、はい!ちょっと待っててください!』




帰ってきてから考えよう。

昨日、先生から「一緒に学校に行こう」って言われたばかりで、ワクワクしながら早起きして準備はもうバッチリだった。







***



「なぁ、何かあったか?」

『え?』




朝早いと駅も電車も空いていて、いつも学校に行く時間帯よりもだいぶ楽だった。

座席に2人で座っていると、先生が私にそう質問してきた。驚いて先生の方を向くと目が合い、その瞳に吸い込まれてしまいそうになる。




「なんか、元気なくねぇか?」

『……先生…』

「やっぱり親に何か言われたのか?」




先生にはなんでもお見通しってわけですね…。やっぱり先生は素敵です





『…親が、離婚する事になって、どっちについていくか決めろって…』

「…ほーか」

『すいません、こんな暗い話なんて気にしないでください!』

「………」




先生は顎に手をあてて、何かを考えている素振りをみせる




『先生?』

「あ、なんでもねぇよ」




先生とこんな風に学校へ行くのも最後になるんだ…。
きっと私の想いが伝わらないまま…




「…ったく、苗字は顔に出すぎだぞ。そんなんじゃクラスのみんなが心配する」

『…はい』

「サボるか」

『え?』

「学校サボるんだよ。ホラッ!行くぜ!」

『わわっ!ま、待って!』




先生は私の手をとり、目的の駅より一つ手前の駅で降りる事になった。




『ど、どこに行くの…?ってゆーかいいんですか!?先生が学校サボって!!』

「生徒を助けるのが先生の役目だからなぁ」

『…それって理由になるの?』

「うるせぇな!ったく…最近の若い奴は気遣いってのが出来ねぇのか」




痛いところをつかれ、ブツブツと文句をたれる先生。
だけど先生が一緒だしなんか楽しくなってきた!




『先生の奢りですか?』

「バカヤロー、こういう時は割り勘です」

『えぇー!!ケチ!大人のくせに!弁当だって毎日作ってるのに!』

「そ、それを言われると俺が反論出来ねぇじゃねーか!!」

『ふふっ』

「はは、やっと笑ったな」

『え?』

「悩みすぎだ。先生というなの俺が近くにいるじゃねーか」




先生は手を私に伸ばそうとしていたが、途中で引っ込めた




『先生?』

「……ん?」

『さっちゃんが…』

「え!?」

『嘘です』

「お前、先生騙すとはいい度胸だなぁ…!」

『先生!痛い!すれ違う人みんな見てますから!』

「このガキんちょめ!」




悔しかった。
先生に触られたいのに手を引っ込まれたから、咄嗟に嘘をついた。

バレて頭をグリグリされたけど…。これはこれでいいかな?




『先生…』

「ん?」

『明後日には出て行こうかなぁって思ってます…』

「…そうか」

『先生には大変感謝してます。ありがとうございました』

「どーいたしまして」

『やっぱり、私はお母さんと暮らします。お父さんとも暮らしたいけど、産んでくれたのはお母さんだし…。お父さんには会いに行けばいいかなって…』

「…そーかい、決まったならよかったな」

『本当にありがとうございます』




今日と明日で先生のお家からお別れなんだよね…。嫌だな…




「じゃあ、明日はお別れパーチーでも開くか?」

『うん!』




本当は嫌だ!
先生と離れたくない!
ずっとこのままでいたい!!!

でも、それは私の我が儘だからそんな事絶対に言わない。言えない。
先生を困らせたくないから








***



「苗字、ポテト貰うねー」

『あ、ちょっと!』

「いーじゃねぇか一本くらい!」

『一本じゃないですよ!何本も取ってたじゃないですか!』

「なんだ…見てたのかよ」

『はい』

「ケチだな」

『割り勘って言った先生の方がケチです』




先生はポテトを口にくわえて上下に揺らしている
まるで煙草みたい。

…あれ?私、先生が家で煙草吸ってるの見てない




「俺もそろそろ決めよ」

『なんの?』

「いろいろとー」

『?』

「…今はいいから。後で教えてやるからよ」

『はい…』

「お、もう学校終わったんじゃね?」

『あ、ほんとだ』




お店の外は私と同じ制服を着た子達がたくさん歩いている。
今日は本当に楽しかった。ゲーセン行って映画を観て、お買い物にも行って…。
先生と生徒の関係を忘れるくらい楽しかった。




「さて、そろ帰るか…」

『はい』




最寄り駅についた時、先生が一回学校に寄る用事があったそうで「先に帰ってて」と言われ、一人で先生の家まで帰ってきた。







***



「なぁ、月詠先生…」

「銀八!今までどこに行ってた!!」

「苗字とちょっと…」

「苗字さんと…!?」

「あのよ、聞きたい事があんだけど」

「な、なんじゃ?」




俺は月詠先生に疑問つーか、俺がこれからする事が間違っていないか聞いてほしかった。




「先生と生徒の関係ってありだと思うか?」

「ぬし、それは苗字さんが好きと?」

「…いいから答えろよ」

「わっちはありだと思うぞ。好きっていう感情に先生と生徒は関係ありんす。まぁ世間的にはそういう風に思わない人もいる事も確かじゃ」

「…だよな、ありがとよ」

「あぁ。わっちは応援するぞ。苗字さんを泣かしたら許さんぞ…」

「あたりめぇだろ」








***



先生が家に帰って来たのは0時をまわった時だった。




『おそいね…』

「説教受けてたからなぁ」

『ふーん、大変だね』

「疲れたぁ!」

『お疲れさま』

「………」




銀八先生が何故か私をじーっと見てくる…
いつもは死んだ魚の目をしているはずなのに、今はすごく真剣な眼差し。

私は、その眼差しから目が離せなかった




『せ、先生…?』

「名前…」

『!?』

「って呼んでいいか?」

『い、いいですよ…』

「名前さ…、この家に、俺の傍にいたい?」




それはまるで、告白というかプロポーズのようだった




『…い、いたいです!出来れば…ずっと…』

「よし!了解」

『?』

「まぁ、待ってな。そのうち答えが出るからよ」




銀八先生は、そう言うと私を優しく抱き締めてくれた




『先生っ!?』

「いつの間に、こんな大切に想うようになったんだろーね。前まではただの生徒だったのによぉ…」

『私は、ずっと…』

「はは、ここは男が言うもんだろーが。女は黙っておけばいいの」

『………』




先生は真剣な表情で、私を見つめた





「俺は、名前が好きだ。生徒とかじゃなく、ちゃんと一人の女としてな。ご飯はうめーし笑うと可愛いし」

『わ、私、ずっと前から先生がすごく大好きです!!』

「それ聞くと、俺まだ4日しか経ってねー…」

『え…?先生も本当に私が好きなんですか!?』

「当たり前だろ、嘘ついてどーすんだよ」

『う、嬉しい…!!』




先生に好きって言ってもらえるなんて、まるで夢のようだ…。
これも、さっちゃんに報告しよう…





4日目
(せ、先生…
(ん?
(ち、チューは…?
(――っ!?
(……
(あ、後でな



20130203


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