暗闇のどこからか苗字の声が聞こえる…。
これは夢か…?
なんだか体が揺れてる気がする。





『先生ー、遅刻ですよー』

「……ンッ…」




目を開けると、カーテンからかすかに太陽の日が射し、その隣には苗字の姿が見えた。




「……ん?」

『だから、遅刻ですよ?』

「はぁ!?遅刻!?」




慌てて時計を見ると、7時半。
俺が家を出ないといけないのは6時。
つまりもう1時間半も遅れている




「……別にいいや」

『いいんですか(笑』

「一緒に行くか?どうせ目的場所は同じだし…」

『は、はい!』




苗字は笑顔で支度しに部屋へ戻った。
俺はどうやら夜中にテーブルで仕事をしてたら、いつの間にか眠ってたらしい…


寝坊すると遅刻とかどうでもいいと思ってくる。人間のアレだな。
慌ててもしょうがねぇからゆっくり身支度をし、苗字と一緒に家を出た。





「げげっ…。この時間めっちゃ駅混んでるな…」

『先生たちは朝早いから知らないんだ…。毎日こんなですよ?』

「マジか、毎日おつかれ…」




毎日頑張ってるんだなと思って苗字の頭に手を置く。
学生とサラリーマンはこんなのに乗ってんだな…。俺には無理だから素直にスゲーわ




『は、早く!あれに乗らないとち、遅刻ですよ!』

「はいはい」




苗字が俺の手を掴んで、到着した電車の中へと入って行った。





――――プシュュュュ




隅には行けたものの、背中からものすごい力で押される。
苗字が潰れちまうだろーが!




「っ、きっつ…!(ってか、なんでか胸がドキドキ言ってるんだけど…?)」

『先生、大丈夫?』

「あ、あぁ、お前は?」

『だ、大丈夫…』

「そうか」




なるべく苗字がきつくならないように片手でカバーはしているので自然と向かい合う感じになっている。


さっきから胸がドキドキすんな…
こんなに近い事ないから慣れない。




『(あ、後で、さっちゃんに自慢しよう!)』

「(学校行ったら月詠先生に相談しよう!)」







――――ガタンッ



「うわっ!」

『!』




電車が大きく揺れ、さらに苗字との距離が近くなる




『――…っ!』

「わりぃ…、平気か?」

『は、はい…』




なぜか俺の顔を見ずに俯いて返事をする苗字




『(ドキドキが…!腰に先生の手がっ!)』

「…苗字は、痴漢とかにあってたか?」

『え?…ううん、あってないです』

「そっか…、よかったな」




よくこんな電車を毎日乗れるよな…。幸い痴漢にも遭ってないみたいだし。
ここは一つ提案をするかな




「お前、これからこの電車に乗るのやめろっ…」

『え?』

「こんなの毎日はキツいだろ…、俺と一緒に行くぞ」

『え?い、いいんですか…?』

「あぁ…、痴漢が心配いで心配いで仕方ねぇや」

『あ、…はい!』









***



「はぁ〜!疲れたっ!電車乗っただけで疲れた。もう二度と満員電車には乗りたくねぇ!!」

『そーですね…』

「ふぅー、さて…歩くか」




学校までの道のりを苗字と楽しく話しながら歩いていた。途中、時間があまりない事に気づき、2人で息が切れるくらい本気で走った。


学校に着き、苗字と下駄箱辺りで別れ、俺は職員室へとまっすぐに向かって行った








***



『先生と、学校来ちゃった…』




るんるん気分で教室の扉を開けると、飛んできたマヨネーズが私の顔面にあたった




『――〜っ!』

「わ、わりぃ!総悟に当てようと思ったんだが…」




しゃがんだ私に駆け寄ってきたのは、土方十四郎。私の友達です




『い、いたい…』

「だ、大丈夫か?」

『大丈夫だよ、気にしないでね!』

「苗字…ありがとよ」

『うん!』




笑みを見せると、土方くんはホッと安心したような顔をしていた




「ちょっと、名前」

『さっちゃん!』




私の親友の猿飛あやめ。
彼女も先生が好きで、ライバルでもあり、何でも言える親友でもある。

先生と何かあったらいちいち報告しあうのが、私達のモットーです




「銀八先生と学校来たってどーゆーこと!?羨ましすぎるのよ!」

『ふふっ』

「なっ!!笑ってんじゃないわよ!」






――――ガラガラ



「はよーさん。遅刻して悪ぃな、お前ら」

「先生ぇ!名前と登校するのずるいです!!私とも登校してぇ!」

「猿飛、向こう行け」

「いやです!」

「…苗字」

『ん?』




隣の席にいる土方くんがボソッと私の耳元で呟く




「…お前もしかして銀八が好きなのか?」

『なっ!!』

「…先生と生徒だぜ?」

『知ってるよ…。でも、好きなの』

「…そーかよ」




それから土方くんは前を向いたまま、私に話しかけてくる事はなかった




『………』








***



『神楽ちゃん、お昼だね』

「そうアルな」

『今日は何?』

「アイツの弁当と私のでかい弁当ネ!」




神楽ちゃんのいつも見る大きな弁当の隣には、普通の大きさの弁当が置いてあった。
足りないのかな…?




『アイツ…?』

「テンめぇ!チャイナ娘!俺の弁当盗んでんじゃねぇやィ!!」

「ウルセーヨ!」

『喧嘩はダメだよ』




私の話を聞かず喧嘩し始めた神楽ちゃんと総悟くん。呆れていると、教室の外から私を呼ぶ声がした





『…!…せ、先生!』

「お〜い名前ちゃ〜ん?」

『な、なまえ…!?』

「俺さ…たぶんテーブルの上に弁当忘れてきちゃったんだよねぇ…。半分ちょーだいよ」

『全然いいよ!』

「じゃあ、弁当持ってこい、屋上に行くぞー」

『うん!』




自分の席に行き、弁当を持って銀八先生の元へと向かった




「なぁ、名前が先生を好きなのは知ってたけど…、先生は名前の事が好きアルか?」

「さァな、けど…仲はいいんじゃないですかィ?なんか俺達に隠し事してるんじゃねぇですかねィ…」

「きっと一緒に暮らしてるアルヨ!!」

「はっ、あり得ねぇな」

「最近先生、名前ばっかり構うのよ!!」

「さっちゃん、それはドンマイネ」







***



‐屋上‐




『今日お弁当大きめに作ってきてよかったです』

「マジでいいの?」

『うん!足りなかったら夜多く作りますし!』

「そーだな。よし、いただきまーす!」




大好きな先生と屋上で2人きり。でも、一緒に住んでから3日経つけど、だいぶ慣れてきたかも




「…そーいえば、両親どうよ」

『3日経ちますけど…相変わらず喧嘩してるみたいです。離婚したらどっちか片方なんて選べない…』




先生は箸に玉子焼きをぶっ刺し、口に運んでいる。




「ほーか、大変だな…」

『1週間なんて言ったけど、すぐ出ていくかもしれないです』

「………」

『本当、迷惑かけます!』

「全然迷惑なんて思ってねぇし、むしろ感謝してるくらいだね」

『先生…』

「心配すんな」




先生は私の頭をポンポンしてくれる
大きくて、温かい手にドキドキする。両親が離婚するのに不謹慎だよね…




「ま、それまでの間は俺と楽しもーや」

『そうですね!』





3日目
(なにあれ…付き合ってるアルか?
(…のかもねィ
(わ、私の銀さんよ!?
(うるさいわよ?猿飛さん
(……苗字



20130203


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