――――ピピピピピ



「…ん、もぅ朝か…」




朝5時に目覚ましのアラームがなり、なんとか眠たく重たい瞼を無理矢理上にこじ開ける。

教師の朝は生徒よりも早く、いつもはコーヒーを入れて朝食を作り、新聞を読みながら食べて学校へ行っていた。


しかし、苗字がいるとそんなメンドーな事はしなくてもいいらしい。
ソファーから起きた俺は近くにあるテーブルに目を向けた。そこには苗字が作ったらしきサンドイッチとその隣にコーヒーとお弁当が置いてあったのだ。




「いつの間に作ったんだ…?こんなに」




俺より早起きして作ってくれたのだろうか。
昨日は爆睡しちまったから全然気づかなかったわ…




「…さて、支度するか」




俺の為に作ってくれたサンドイッチを食べてからコーヒーを飲み干して、私服に着替える。
苗字が作ってくれたお弁当をカバンの中にしまった。

家を出る前に苗字が寝ている部屋へと静かに入った




「(礼は言わないとな…)」




苗字は気持ちよさそうに寝ている。まるで子どものようだ




「あ、でも俺から見りゃ子どもか。…お弁当と朝食ありがとよ」




頭を撫で、お礼を言ってから部屋を出た。




「…いってきまーす」




なるべく小声で“行ってきます”の挨拶をする。
…誰かに対して言ったのは何十年ぶりだろうか。
そして俺は学校へと向かった








***



「はぁ〜、やっと昼飯だぁー!!!」

「うるさいぞ、銀八先生」

「月詠先生見ますぅ?俺の愛妻弁当(笑」

「…ぬし嫁いないだろ」

「………」




久しぶりの弁当で、はしゃいでただけなのに月詠先生が痛いところをついてきた。




「ったく、せっかくテンション上がってたっつーのによ…」

「まぁ、ぬしが弁当とは珍しいな…」

「だろ?じゃ〜ん!!」




フタを開けて、中身を月詠先生の方に見せる。




「…美味そうだな、わっちも食べてみたでありんす」

「っざけんな、テメェはそのコンビニ弁当があんだろーが、これは俺の」

「見せつけといて、それはないでありんす。1つくれ…!」

「いーやだよっ!……ちょっ…やめっ!おい!…うわっ!玉子焼きとんな!」

「モグモク……」

「………チッ」

「う、うまい!」




まぁ、だろうな。俺じゃなくて苗字が作ってるんだもんよ…




「全部くれっ!!」

「はぁ!?っざけんなよっ!!」

「いーから!だったらわっちのコンビニ弁当をやるぞ!!」

「いらねーよ!!」







――――ガラガラ



『失礼します』

「モグモグ、苗字さん?」

『月詠先生………それ…』

「銀八先生の弁当でありんす」

「お、おい!」

『!?』

「ものすごく美味いんじゃ。銀八先生がくれた」

「おいっ!月詠先生!!」




何を言ってんだよコイツ!誰もあげるなんて言ってねーだろーが!!




『よかったですね。…銀八先生は、コンビニ弁当がお好きなんですか』

「ちが…!」

『なんで焦ってるんですか?』




お前はまたそうやって無理して笑うのか?
怒りたいなら、素直に表に出して怒ればいいのに




「そうだぞ?わっちのコンビニ弁当がいいって言ったから交換したでありんす」

「テメェ!!いい加減に…!!」

『…失礼しました』

「苗字!」




呼び止めたが、無視され職員室から出ていった。
(いま職員室には俺と月詠先生しかいない)

ありゃ相当怒ってるわ。
当たり前か…。俺の為に朝早起きして弁当作ったのに他人に食われたら誰だって怒るわ。俺も怒るもん




「(しかも、コイツのせいで俺が苗字の手作り弁当食べたくないから月詠先生と交換したー、みたいになってんじゃねぇか…!)」

「苗字さん、怒ってた」




苗字が怒っているのに驚いたらしく、目が点になっていた。
つか元凶はお前のせいだからな!!




「なんでわかった?」

「わっちは苗字さんをいつも見てるんじゃ!だからわかる。ちょっといじめすぎた…」

「…え?ストーカー?」

「違うわ!!見ててほっとけないんじゃ!ボケッ!ってかお前は鈍すぎじゃ!」

「な、なんだよ。…まぁ、ちょっと追いかけに行くわ!」

「あぁ」

「間に合わなかったら授業ヨロシクー」

「なんでわっちが!!」

「バイビー」








***



「おい!苗字!」

『!』




あれ?意外と歩くの速いな…
中庭の方に歩いているのを見つけて、駆け寄った。




『なんですか…?』

「言っとくけど、あれ全部月詠先生の嘘だから心配すんな。俺は食べたかったんだぞ?お前の手作り弁当」

『え…?』

「なのに、全部取りやがってアイツ…!」

『先生は、コンビニ弁当が好きなんだと思ってた…』

「あんなモンより手作り弁当の方が全然良いよ。だからよ、今日は全部取られちまったが、また俺に弁当作ってくれ」

『は、はい!』




そう言うと、苗字は笑顔で応えてけれた。
ちとなんか照れくさくなってきたな…

何を言えば苗字は喜ぶか考えていて、思いついた言葉をつなげたら…こんな感じに。

あれ?これ告白みたいになってね?


つか笑顔可愛いな…ちくしょー。










***



「おーい苗字、風呂上がったから入ってこい」

『はーい!』




うーん…てゆーかさ、女子高生がおじさんの後でいいのか?
気持ち悪く思われないかしら?銀さん心配だわ…




「…苗字、本当にいいのか?…その、風呂が…俺の後で」




俺の質問にきょとんとしていたが、満面の笑みでちょっと胸が弾む




『全然大丈夫!全く気にしないから!』

「えっ!?気にしないって何を!?」






2日目
(ふんふん〜銀八先生の後の風呂に入れるなんて…
(気にしないって…なんも風呂に残してねぇよな…
(あっ!髪の毛発見!
(あ!?何!?ちぢれ毛!?
(髪の毛ー!…ってかなんでそこにいるの?
(あ…あの、そーゆー目的ではなく…なんも残してないか気になってだな…
(大丈夫、今のところ髪の毛だけだよ!
(ひぇぇえ!お願いだから探さないでね!?



20130202


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