オムライス



『蘭丸ー!』

「ウザイ」

『ら、らんまる…?』

「しつこい、迷惑あっち行けよ」




ひ、酷い言われようだな!
私ってそんなに嫌われてるの!?…知らなかった…、ショック




『で、でも、私を蘭丸の家に呼んでくれるから嫌いではないでしょ?』

「嫌いだボケッ!」

『えぇっ!?』

「俺がお前を呼ぶのは、餌を与える為だ。つまりは猫と同じ扱いな」

『ま、まじか…』




なんと恐ろしい!
私は猫扱いなのですか!!別にいいけど、傍にいれるんだったらねっ!!!




「ほら、餌だ」

『わーい!オムライスだー!』

「……」




蘭丸のオムライスは、すっごく大好きなのです!!卵がふわふわしてて、私の大好きな具がいっぱい入ってて…
何より蘭丸の愛がある!




「ねぇーよ」




私が食べている間、ずっと蘭丸に見られてた気がするけど…、お腹空いてたから気にしないで食べ続けた




『ふぅー!ごちそうさまですっ!』

「少し休憩したら帰れよ」

『送…』

「らねーよバカ」

『お、女の子に一人で帰れと…?』

「女の子…?あぁ?どこにいんだ?」

『私はどうしても猫なのねっ!!!』

「ったりめーだろ」

『…むぅー』




仕方ない。一人で帰ろう。オムライス作ってくれたしねっ!私だって文句は言わないもん!!
本当は送ってもらいたかったけど…、一緒にいたいじゃん?




『それじゃ、私は帰るね!オムライスありがとう!』

「…おう」

『また明日ねー』

「おう」




蘭丸に冷たくされても、後で優しくしてくれるから大好き。
思ったよ、私は相当なドMなんですね…。
でも、相手はアイドルだから『大好き』なんて言えないよな…









***


‐次の日‐




『らーんまーるちゃーん!』




また蘭丸の家に来た私。
いやー、私もなかなかめげないよねぇ…。
でも「また明日ね」って言ったら「おう」って言ってたし、いいか!




「うるせぇなお前!!猫の分際でっ!!」

『へへっ』




扉が荒々しく開けられる。目の前には蘭丸の怖い顔




『また、オムライスを…』

「あ」

「ん、黒崎さん?」

『お?』




…なんと、いつも私が座っている所には、蘭丸には似合わないふわふわした可愛い女の子がいた。




『…ん?』

「あ、のな…」

「え…?黒崎さん、この人は…?」

「あぁー、…妹」

『え?』




妹…って、まぁ無理はないけど…
私ってこれ喜んでいいのかな?悲しめばいいのかな…?




「ふふ、可愛らしい妹さんですね」

「まぁな」

『…オムライス』

「あ?…あぁ、すまん。アレで卵きれた」




蘭丸が指をさす先には、たぶん先ほどから食べてたのだろう…、食べかけのオムライスが女の子の前に置いてあった




『……』




そーかいそーかい。私はやっぱり猫扱いと…。
あれ、待てよ?蘭丸はあの女の子が好きなのか?じゃあ、今までの私の行為は迷惑だったんだ!!
…あれ?もしかしなくてもずっと迷惑だったのかも?迷惑って言ってたけど…
冗談だと思ってたのにな…これは、私でもすごい傷ついた!これは喜べない!!




『蘭丸兄さん』

「あ、あぁ?」

『もう来ないよ。迷惑かけちゃってごめんね』

「え?」

『じゃあ…、あの、蘭丸兄さんをよろしくお願いしますね』

「え…?」




私は女の子にも一言言ってから、蘭丸の家を出た。




『…やけ酒だな』




私…、こう見えて二十歳だから飲めるもん




『忘れなきゃ、蘭丸の事』




好きなのになぁ…
なんか、もう会えなくなると寂しいよ…










***



『…ん?もう、朝か』




やけ酒したけど、なーんか何もやる気しない。モヤモヤする。当たり前か、ふられたんだもん…。




『さーて、仕事するか…』




実は…私の仕事は作詞家です。作曲もたまにします。
本当の事を言うと、蘭丸の作詞・作曲をしてるんです。蘭丸には内緒にしてたけど…
だから、蘭丸が知ってる事は私の下の名前と年齢とオムライスが好きって事だけ




『蘭丸ぅ…』




そうだっ!!この想いを歌詞にのせよう!そして…、忘れよう




『…未練がましいっ!』



















‐3時間後‐


『できた』




歌詞が完成したと同時に、私の携帯電話が鳴った




『はいはーい』




相手はシャイニング事務所の早乙女さん。
内容は今から打ち合わせをするから、今すぐ来いとの事だった




『だけど、作曲は誰がするんだろ…』




とりあえず出かける準備をしてから、歌詞が書いてあるノートを持って家を出た









***



『失礼しまーす』




事務所の扉を開けると、中にいたのは…
早乙女さんと月宮さんと日向さんと…



蘭丸の想い人…




「…あ、」

「名前ちゃん、おはやっぷー!あ、彼女は作曲家の七海春歌ちゃんよ!」

『…ん、どーも。作曲よろしくねー』

「あ、は、はい!」




私は、さっき出来上がったばかりの歌詞ノートを彼女に渡す。
ここでは仕事…。私情は入れずに厳しくしないと…




「じゃあ春ちゃん!早めによろしくね!」

「期待してるぜ?」

「はい!わかりました!」

『……』




な、なんて可愛いんだ…
こりゃ私とは違うわけだよ…。蘭丸が好きになる顔って羨ましいな…







――――プルルルル



突然事務所に春歌ちゃんの携帯の着信音が響いた。
春歌ちゃんは私達に一言謝ると携帯を手に取り、耳にあてた




「は、はい!…わかりました。すぐに向かいますね」

『どうした?』

「仕事の事で呼ばれたんです、お兄さんに」

『へぇ、お兄さん…』

「はい!名前さんのです。この頂いた歌詞も見せてきますね!」




そう言った春ちゃんは事務所を走って出て行った。
え?私に兄はいないぞ…




『あ、そーゆー事か…』

「「?」」




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